近藤孝「土柱」近代将棋1974.12
垂直に並んでいると金。
これは飛車による連取り作品と予想できる。
右下に駒が沢山あるが、71飛車からの攻めが相当厳しいので左上で詰んでしまいそうに見える。
71飛、52玉、72飛成、
これで66歩があるから歩合ができないのが痛い。
角・桂は63龍以下5手詰だし、金合も同龍で7手詰。
となると残るは飛・香だが…。
62香、
仮に香合としてみると
同龍、同玉、64香、
【変化図】
これで詰んでいる。51玉に52歩、同玉、63馬で押し潰せる。
これは進退窮まったように見える。
ところが受け手は残っているのだ。
62飛、
これは香合と同様に攻めてよさそうだ。
同龍、同玉、64飛、
ここで51玉なら52歩で詰み。
ところが巧い手がある。
63桂、
63桂の捨合。
狙いは同飛成、51玉で打歩詰にもちこもうというのだ。
同飛不成、51玉、52歩、同玉、64桂、51玉、
61飛成、同玉、72馬、51玉、73馬、62金、
【失敗図】
そこで同飛不成と工夫しても結局ダメ。
【再掲図】
飛車と香では飛車の方が単純に利きが強い。
62合は直ぐに取られる揮発性の間駒だから弱い駒を渡したいと考える。
そこで強い飛車を間駒するのだからこれは玉方の飛先飛香–不利合駒と呼ばれる高級手筋だ。
同龍、同玉、63歩、51玉、71飛、
そこで同龍、同玉、72飛と攻めたいのだが、現状では63玉で飛車を縦に引けない。
そこで73歩を消去するために、一旦63歩と打つ。
71飛で合駒を訊くが銀は品切れなので角しかない。
61角、同飛成、同玉、72角、52玉、
62歩成、同玉、63角成、51玉、73馬、
魔法のように73歩の消去が実現した。
62飛、同馬、同玉、
この62飛も香合が可能なのだから不利合駒に数えるべきだろう。
ここから飛車の開き王手によると金の連取りが始まる。
72飛、63玉、75飛成、
これで1歩持駒が増えた。
52玉、72龍、62飛、
そして再び62飛合。同じ理由による不利合駒だ。
同龍、同玉、72飛、63玉、76飛不成、
ここで単純な繰り返しになりがちな連取り趣向に目が覚めるような飛の不成が登場する。
成ると74玉で打歩詰の逃れとは驚きだ。
52玉、72飛成、62飛、
4度目の不利合駒。
同龍、同玉、72飛、63玉、
今度は成。64玉は65歩、同玉、66龍、74玉、63馬まで。
不成だと詰まないようだ。
77飛成、52玉、72龍、62飛、
5度目の不利合駒。
同龍、同玉、72飛、63玉、78飛成、
これも成限定になっていることは注目するべきだ。
64玉なら65歩、同玉、76銀、74玉、75銀、65玉、66銀引、64玉、75龍、同金、同銀以下。
この変化が銀を品切れにすると同時に、龍でなければいけない理由になっている。
52玉、72龍、62飛、
6度目の不利合駒。
同龍、同玉、72飛、63玉、79飛成、
これでと金の柱をすべて持駒に取り込んだ。
成限定なのも同じだ。
52玉、72龍、62飛、
7度目の不利合駒。
同龍、同玉、64飛、
収束にはやはり64飛からはいる。
63桂、同飛不成、51玉、52歩、同玉、
64桂、51玉、53飛成、
持駒が豊富—といっても歩ばかりだが—なので、桂馬を動かし右辺に追う。
同桂、52歩、41玉、42歩、31玉、
32歩、21玉、22歩、11玉、12歩、同玉、
45馬、
大駒を消す教科書通りの収束。
同桂、23銀、13玉、25桂、同歩、
14歩、24玉、34とまで91手詰
タイトルの「土柱」は阿波の土柱という天然記念物を表しているのだろう。
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