三代伊藤宗看『将棋無双』第57番 1734.8
歩の頭に3枚も捨てる。しかもどれも同歩と取れない。
しかし、攻方もその歩を取れないという不思議な世界が展開する。
初手は49龍を喰って持駒を増強するしかないようだ。
49馬、84玉、75銀、
2手目同龍は86金以下簡単。(58香成は後述)
84玉で周りにはすべて玉方の歩か桂が守っている。
75銀が最初の捨駒で同歩とは取れない。
同玉、76馬、84玉、75金、
同歩なら74飛で3手詰。
同玉に馬を近づけて再度75金。
73玉、64金、同香、
これも同歩とは取れないので73玉だが、74金とは取れない。
82玉で手が続かないのだ。
そこで64金が好手。
82玉なら74桂で詰む訳だ。
同玉なら65飛から63飛成なので同香だが、63が空いたので手が続く。
63飛、84玉、75馬、
今度は馬で75から攻める。
同歩も同玉も64飛成で決まる。
95玉、86馬、84玉、
73飛成、同玉、
しかし、95玉で手駒に歩1枚でもあれば96歩、同玉、86馬までなのだが、持駒は既にない。
86馬、84玉と戻しては何をしていたのかわからないようだが、これで正解なのである。
さらに73飛成、同玉で10手目の局面に戻してしまうようだが、よく見比べると馬の位置だけが変わっている。
持駒に飛車を消費して76馬を86馬に変えた結果になっている。
この狙いは……
64馬、
75金から64金、そして64馬と実は74ではなく64の地点を攻めていたのだ。
64馬、同玉、74馬までの詰形を目指して。
あとは収束である。
72玉、63馬引、71玉、72香、同龍、
同馬、同玉、92飛、71玉、82飛成まで29手詰
74歩が取れない・取られないという面白い作品だった。
まるで74歩が「石」(先手にも後手にも相互作用しない)のように見えたのではないだろうか。
さて確認しておくべき変化が一つある。
64馬、同玉、74馬までの詰形には55香の存在が不可欠だ。
それならば2手目にこの香を捨ててしまったらどうなるのか。
下図は2手目58香成と移動中合した局面。
同馬、84玉、75銀、同玉、76馬、84玉、
同じ様に攻める。しかしここから64を攻めても55からすっぽ抜ける。
75金、73玉、74金、83玉、83金、同玉、
65馬、
82玉を恐れずに74金から83金と攻める。
そして妙手65馬だ。
同香、84香、同玉、74馬、95玉、96飛まで
入手した香が決め手となって早く詰む。
いつもながら変化にも妙手ありだ。
しかし本図には残念ながら余詰がある。
3手目94馬という手があった。
同玉、95歩、同玉、86金、84玉、94飛、
94飛が決め手で、これは余詰成立だ。
94飛は変化にも出てくる手なので修正は難しそうだ。
解説したばかりの変化の妙手は消えてしまうが、現在は今田政一氏の次の修正案が伝わっている。
【今田政一案】
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無双の58番ではなく57番では?
ご指摘ありがとうございます!
修正しました。