三代伊藤宗看『将棋無双』第93番 1734.8
変化も易しく、邪魔駒消去テクニックのオンパレードを楽しめる作品。
99龍と85角がよく利いている。55馬は46金の質駒を取るより活躍の道は無さそうだ。
守備駒に乏しい玉とはいえ平凡な初手78金では…
78金、48玉、49龍、同玉、39金、59玉、
【失敗図】
もう王手が存在しない。
そこで初手は…
68金、
48玉なら先程の【失敗図】の後、59金までの詰みとなる。
同玉、
この局面をよく見ると後方に邪魔駒が2枚ある。
1枚はすぐわかるだろう57歩だ。
なければ46馬と金を手にして簡単に詰む。
もう一つはもう少し手を進めなければわからないが、88銀だ。
無双第76番(詰将棋入門183)の47銀と同じような役割。持駒に桂馬があるが、のちの局面で88桂と打つのに邪魔になっている。
79銀、59玉、68銀、同玉、
というわけで4手で88銀が原型消去された。
これがいわゆる直接消去だ。邪魔駒が自ら自爆する形で消えていく。
69龍、57玉、68龍、
続いて57歩の消去。
これは玉に取られる形で実現する。いわゆる間接消去だ。
同玉は46馬で簡単なので、邪魔駒消去の結果は作意表面には現れず、別の展開をしていくことになる。
同銀成、46馬、
同銀成でもかまわず46馬と金を喰う。
67銀が移動したので同玉は56金の一発なのだ。
67玉、56馬、76玉、88桂、
そして88銀を前もって消去しておいた伏線の効果がこの88桂ということになる。
あとは収束だ。
85玉、96金、94玉、95歩、93玉、
83歩も邪魔駒といえば邪魔駒だ。
なければ95歩の所で61角成で早い。
いわば余詰防ぎのような配置ではある。
しかし、宗看が収束にも本局のテーマである邪魔駒消去を小さく組み入れた遊び心が見えるような気がする。
すなわちこの局面に至っても83歩は邪魔駒なのだ。なければ83金で詰む。
そして実際に作意上でも83金を実現させるのだ。
94金、92玉、82歩成、同玉、83金、
いよいよ終局も近い。
シンプルな仕掛で馬を綺麗に消しているのは見事だ。
同玉、61角成、92玉、73香成、91玉、92馬、
それにしても駒の効率の良さがすばらしい。
同玉、83馬、81玉、82成香まで35手詰
余談になるが、先程比較した第76番と本局はどちらを先に創作したのだろう。
第76番を先に創作したが、あちらは大駒を切る手はあるが中心は小駒の捨駒。やはり宗看らしくメインの部分は大駒の捌き捨てで決めたいと本局を創ったという妄想も可能だ。
逆に本局を先に創ったが、88銀がいかにも役になっていない邪魔駒。この銀を作意でも役立たせ、消去にもっと不利感を乗せて創り直したのが第76番という妄想も可能だ。
どうでもいいことだし、本人に訊くしか真相を明らかにする方法はないのだが、ちょっと気になったりするのだ。
Tweet