\(x^2+2x-15\)を因数分解しなさい。
ただし公式Iは使わないこと。
金さん これはやけに簡単。
かけて\(-15\),たして\(+2\)になるのは\(-3\)と\(+5\)だから
\((x-3)(x+5)\)
銀さん 問題をよく読まないと。公式Iは使っちゃ駄目と書いてあるよ。
金さん えっ、でもこれは公式を使って解く問題でしょ。
銀さん うーん。確かに。
玉さん ヒントをあげましょう。そもそも公式を使うとはどういうことなのでしょう。
展開公式で考えてみたらどうでしょうか。
公式I \((x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\)
銀さん そうか、もしかしたらこういうことかな。
\(\begin{eqnarray}
&&(x-3)(x+5)\\
&=&x^2+5x-3x-15\\
&=&x^2+2x-15
\end{eqnarray}\)
この2行目をとばして1行目から3行目に進めてしまうのが「公式Iを使う」ということね。
因数分解の「公式Iを使う」とは逆に3行目から1行目に進めること。
だから2行目に当る途中式を書けばいいのよ。
金さん やってみよう。
\(\begin{eqnarray}
&&x^2+2x-15\\
&=&x^2+5x-3x-15
\end{eqnarray}\)
これからどうするんだ?
銀さん
4項を2項ずつ組合わせればいいパターンね。
\(\begin{eqnarray}
&&x^2+2x-15\\
&=&x^2+5x-3x-15\\
&=&x(x+5)-3(x+5)\\
&=&(x-3)(x+5)
\end{eqnarray}\)
これでできたみたいね。
玉さん さすがですね。正解です。
他の方法はありませんか。
公式Iは禁止ですが、他の公式は使っても良いのですよ。
公式II・III \((x\pm a)^2=x^2\pm 2ax+a^2\)
公式IV \((x+a)(x-a)=x^2-a^2\)
金さん なんかできたみたい。
\(\begin{eqnarray}
&&x^2+2x-15\\
&=&x^2+2x+1-16\\
&=&(x+1)^2-4^2\\
&=&(x+1-4)(x+1+4)\\
&=&(x-3)(x+5)
\end{eqnarray}\)
銀さん 1行目から2行目への変形はどうやったの?
金さん \(x^2+2x\)を2乗の形にするには\(+1\)が必要でしょう。
だから\(x^2+2x\)には\(+1\)してその代わりに\(-15\)には\(-1\)したわけ。
玉さん みごとです。公式IIと公式IVで因数分解できていますね。
金さん えへん。
玉さん 金さんの方法は公式Iを使おうとしてもかけて\(ab\)になる2数が見つからない場合に、有効です。
例えば次のような問題です。
次の式を因数分解してください。
\(x^2+120x+3599\)
金さん ひぇ~、これ僕の担当なのね。
やってみよう。
\(\begin{eqnarray}
&&x^2+120x+3599\\
&=&x^2+120x+3600-3600+3599\\
&=&x^2+120x+3600-1\\
&=&(x+60)^2-1^2\\
&=&(x+60-1)(x+60+1)\\
&=&(x+59)(x+61)
\end{eqnarray}\)
本当だ、できた!
銀さん 私が最初にやった方法にはどんな意味があるんですか。
玉さん かけて\(-15\),たして\(+2\)になる2数を見つける本質的な意味を理解できたと思います。
ですからその考え方はそのまま高校レベルの因数分解にも応用できます。
次の式を因数分解してください。
\(12x^2+11x-15\)
銀さん これは難しいですね。
玉さん 難しい問題に当ったときは?
銀さん 易しい問題で練習する、でした。
因数分解された1次式の\(x\)の係数が1でない場合ということですよね。
先に展開からやってみます。適当に問題を作ってみよう。
\(\begin{eqnarray}
&&(2x+1)(3x+2)\\
&=&6x^2+4x+3x+2\\
&=&6x^2+7x+2
\end{eqnarray}\)
これを因数分解の問題に直すと
\(\begin{eqnarray}
&&6x^2+7x+2\\
&=&6x^2+4x+3x+2\\
&=&(2x+1)(3x+2)
\end{eqnarray}\)
ということは\(7x\)を\(3x\)と\(4x\)にわけることがポイントなのかな。
この\(3\)と\(4\)はどんな数なのか。
「たして\(7\)」はわかるけど「かけたら\(12\)」だよね。\(12\)って?もしかして\(6\times2\)なのか!
それなら\(12x^2+11x-15\)を因数分解するには「たして\(11\)」「かけたら\(12\times(-15)=-180\)」になる数を探せばいいんだ。\(\ldots\) あった。「\(-9\)と\(20\)」だわ。
\(\begin{eqnarray}
&&12x^2+11x-15\\
&=&12x^2-9x+20x-15\\
&=&3x(4x-3)+5(4x-3)\\
&=&(3x+5)(4x-3)
\end{eqnarray}\)
できました。
玉さん この方法、高校で習う因数分解で有効なので覚えておいてね。それでは宿題です。
宿題
- 金さんの方法が\((x+a)(x+b)\)の形に因数分解できる問題だったら、必ず有効であることを証明しなさい。
- 銀さんの方法でなぜ「たして\(11\)」「かけて\(12\times(-15)=-180\)」の2数を見つければ良いのかを証明しなさい。