長編詰将棋の世界(27) 角合に罠あり

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

選題の言葉(2011.1)

 あけましておめでとうございます。
 今年もたのしく遊びましょう。
 年頭なので撰題基準を申し上げます。私が「面白い」と思った作品を採用いたします。あまり難しすぎるのは苦手です。でもやはり考える所も欲しい。新人の方は類作を恐れずにどしどし投稿お願いします。
 昨年は(10月までで)Aを343票、Bを68票、Cを4票頂きました。平均点で2.84です。この高得点はもちろん作家の皆様の努力の賜です。拍手を!一方で私の「面白い」感覚が独善ではなかったものと喜んでいます。今年も作家の皆様、解答者の皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
 今月も楽しい作品が揃っています。たくさんの解答をお待ちしています。

堀切良太 詰パラ2011.1

棋譜ファイル

14飛、24歩、64飛、45玉、15飛、25角、
同飛、同歩、67角、56角、同角、同香、
23角、34角、同角成、同歩、46歩、55玉、
33角、44角、同角成、同歩、65飛、54玉、
32角、43角、同角成、同桂、64飛、55玉、
77角、66角、同角、同桂、65飛、54玉、
55飛、同桂、43角、63玉、52角成、54玉、
43馬、63玉、65香、64歩、同香、同玉、
65馬、63玉、73香成、同玉、83馬、63玉、
64歩、同玉、65銀、75玉、74馬迄59手詰

24角は同飛以下作意と同様で2手短い。
56香は同角、55玉、65飛、44玉、45歩以下

☆角打角合趣向。作家なら一度は手がけてみたいテーマだ。趣向と言ってもいわゆる繰り返し趣向作ではない。角以外の駒をどうやって入手するかなど、謎解きと絡ませつつ、角合のリズムに解答者を酔わせることができる。

☆初手64飛では45玉で後続手がないので、初手14飛はこの一手。対する応手が最初の考え所。そして実は最大の考え所でもあった。

☆直感は24角合なので逆に玉に近い所から考えてみよう。44角合は64飛、45玉、44飛左、同歩、46歩、54玉、45角迄。34角合は65飛、45玉、15飛、25角打、同飛、同角、67角で角以外の駒がもらえるので詰む。ああやはり24角合で正解だと読みを打ち切った人は、作者の仕掛けた罠に落ちた。

☆2手目は24歩と移動中合するのが正解だ。同飛と取ると今度こそ34角合で今度は先ほどと違い、64飛、45玉でこれは詰まない。そこで先に64飛と追い、15飛で25角を入手するのが正解だ。作意に還元する受けの妙手は気付きにくい上、23から並んだ3枚の歩が一つずつ動くという形式美も作意と確信させる要素になり多数の誤解者を生んだ。

☆45玉持駒角歩の局面が次の考え所。角を打つしかないが23と67とどちらが先か。いずれも角合で応じてくれば同じ形になるが、作者がこんな所で手順前後を許すはずがない。

☆正解は67角が先。66香という移動捨合の手が鍵だ。先に67角なら同角以下並べ詰みだが、先に23角とすると、33に穴が空き、そこから逃げ出される。ここでの誤解者はいなかった。さすがはパラ解答陣だ。

☆ここからは易しい。55玉の局面では6筋に歩合があるので33角しかないからだ。歩合に備えて43桂の形にしてようやく77角と打つ事が出来る。

☆77角に最後の角合。この形で飛車が邪魔駒になっていると気付けば、ほぼ解決だ。55飛と綺麗に捨てれば、あとはなだらかな収束。

作者 角打角合の趣向に2手目24歩突のワナ(?)を仕掛けてみた。手順はまずまずと思うが、もう少し角合終了後の収束を短くしたかった。

☆短評も2手目に関するものが集まった。

池田俊哉 角打ち角合の連続で玉の周囲を埋めていく2手目24歩が2手伸ばしの軽いアクセント
須川 卓二 これだけ徹底して繰り返して頂けると私も満足です。2手目がポイントですね。
竹中健一 2手目のワナ…解答書くときまで誤解しそうだった。。。
増田智彬 2手目を24角合とした人は手を挙げて!

☆14名でした。

小川悦勇 「面白い」等と楽しんでいると、“チクリ”と蜂に刺されて痛い目に遭う。2手目の24歩の突き出しが「面白い」、最後に86歩の意味が鮮明になる。新年にお年玉を戴いた気分になりました。

☆2手目を無事に越せば、正月向きの楽しい作品といって間違いないはず。

武田静山 序盤の変化を乗り越えれば楽しい手順が待っている。
斎藤博久 前に効く駒の入手を防ぐ角との戦い。
今川 健一 堀切さん得意の合駒作品、流石に巧みな出来映えです。創られている。
賀登屋 合駒を入れる為のカラクリの面白さに解答を書きたくなりました。

☆解答を書きたくなる作品。これは素晴らしい褒め言葉です。

原雅彦 これを50手以上に仕上げるのが凄い。

☆慥かに素材は飛車の上下と桂馬を跳ねさせる辺りでしょうか。

野口賢治 飛を角に換える序が洒落ている。桂2枚を吊り上げる目的の趣向の簡明さが人を惹き付けるのだ。

☆易しく楽しい趣向はあくまで易しく楽しく演出したい。簡明な趣向にやたら難解な序をつけた作品を見る事があるが私には理解出来ない感性だ。本作の序は主役の角の入手という自然な展開であり見事に調和している。

☆謎解きと楽しさが絡み合い心に響いたようで高得点を獲得した。

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