高木秀次『千早城』に登る(21)


※この連載は風みどりが1題ずつ高木秀次作品集『千早城』(1993)を読んでいくものです。

第21番 風ぐるま1954.6改

持駒は歩しかないし、手は限られているので易しそうに見えたが、かなり手こずった。

47飛と38角を活用させる必要があるのは明らかだ。
41香と97香は質駒に違いない。
片方は作意で、もう片方は変化で取ることになるのだろう。
そのためには61銀・94桂・96桂は邪魔駒だ。

38角を働かせるには56香を動かす必要がある。
54銀もおそらく邪魔駒だろう。

66桂の意味がよく分らない。

……と予想はこれくらいにして、最初の一手を考えよう。
92歩か81歩成しかない。
持駒に歩が豊富なのでこれは93歩を置いておく手だろう。

92歩、同玉、93歩、91玉、

これでいつでも92歩成、同玉と9筋に玉を呼び込む用意ができた。

次に考えたのは61銀を73歩に打ち換えられないかということだ。
73歩と打つには74桂、同歩とする必要がある。
66桂の存在意味はこれではないのだろうか。

81歩成、同玉、82桂成、同玉、74桂、

これで同歩なら72銀成、同玉、73歩で調子が良さそうだと考えたわけだ。
しかしこれは浅はかだった。
結局同歩でも詰まないのだが

   91玉、

こう逃げられると97香を取る筋しか残っていない。

92歩成、同玉、84桂、同歩、97飛、同と、
95香、83玉、

74から逃げられてしまう。
66桂の意味は74の逃走路を塞ぐことだったのだ。
考えてみれば74桂、同歩としてしまったら、38角で王手する可能性が消えてしまうからはじめから考えるのは時間の無駄だった。

気を取り直して74桂の前まで戻して考える。

右辺の銀も気になるが、まずは左辺から攻めてみよう。

92歩成、同玉、84桂、同歩、97飛、同と、
95香、81玉、82歩、同玉、93桂成、81玉、
92成桂、71玉、

打歩詰だ。
途中で55香と角で王手することもできるが、56香が55に動いたところで何の意味もない。
次に右辺の銀をどう捌けるのか調べてみる。
6手目の局面に戻す。

82桂成でなければ残る手は……

72銀成、同玉、63銀上成、同香、61銀不成、

62玉と捻くれるのは52香成~72歩と追えるので、先程の攻めで詰む。
まずは同玉を詰ます必要がありそうだ。

   同玉、41飛成、72玉、52龍、

72玉で困るようだが52龍と踏み込んでみるとこれで詰んでいる。
間駒したら73桂成、同玉、74香、64玉、55龍までだ。
桂合されたら?と不安になったが、よくみると盤上に桂馬が4枚。
これは作意に近づいているという確信が持てる。

というわけで61銀不成はとれない。

   81玉、

ここまでは時間がかかったが(もっと色々無駄な考えを繰り返している)、ここからはすんなり作意に入ることができた。

82桂成、同玉、92歩成、同玉、84桂、同玉、
97飛、同と、

さて角を活用するとしたら、この局面しかない。
56香をどこに開くかという問題だ。
これはまずこうやるところだろう。

51香成、

先程の72歩を打歩詰にしない、でも61銀に紐をつけたい。
これは作意だろう。

   38歩成、94香、81玉、82歩、同玉、
93桂成、81玉、92成桂、71玉、72歩、62玉、
52成香まで

あとは2箇所チェックして完了。

一つ目は飛車を素直に取るのかという所。

97飛に81玉、92飛成、同玉という手が入るかどうかだ。
これは持駒があるので82歩、同玉、83香で早い。
ということで97飛には同とで正解。

次は角。

51香成に81玉とした局面。
これは早い手はなさそうだ。
ということは

92角成、

81玉、92角成、の2手を追加する必要がある。
結局35手詰だ。

さて、以上を作意に設定して答合わせをして正解と確認。
柿木将棋で余詰検索しても非限定しか出てこなかったのでこれで終了……ではなかった。

詰上図でちょっと気になることがあったのだ。
初形をコピーしてあらたに柿木将棋を立ち上げ、解かせてみた。
するといつまでたっても作意順を出してこない。

気になっていたのは次の手だ。

(51香成に対して)65香、

つまり後で63に逃げ出そうというわけ。
同角で香がもう1枚入るし81玉には54角もあるので簡単に詰みそうだが、以下83銀合をされると94香、81玉、54角に72桂合がある。
どうもこの作品、65香で不詰のようだ。

折角なので修正できないか考えてみた。

まず考えたのは38角を38馬にする案。
これは収束73桂不成とする手がありダメ。

次に考えたのは62香を62歩にする案。(次図)

これを柿木将棋にかけてみたところ……詰んだ。
ただし47手詰。

どういうことかというと、やはり51香成に対する応手だが83銀合があった。

83への間駒は94香、81玉、82歩、同玉、83角成があるから無効と思っていたが、先程も出た72に利かせる銀合があった。

これ、原図でも割り切れていない。
つまり原図は65香で不詰。83銀で誤作意ということだ。

83銀合を割り切るのはオイラの手には余るので62歩案を仮の修正案としておく。
詰上がりは次のようになる。

作意が変わってしまっているので心苦しいが、強腕の氏の登場までの仮の図と云うことでお許しを。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください