長編詰将棋の世界(38) 全応手玉移動500手台

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

選題の言葉(2011.6)(抄)

摩利支天さんから特別に易しい超長篇の作品を提供して頂きました。「あなたも500手台の長篇が解ける!」です。作者は「traveling」を改良し、全応手玉移動および受方同Xなしの最長手数記録を更に大幅に更新しました。500手越えです。ですが前作を参考に挑戦すればいつも大学院を敬遠しているあなたにもきっと解けるはずです。

さらに解答方法も簡略化します。
(1)攻方が取る駒を順に答える。
(2)最終手
(3)手数
これだけでOKとします。

摩利支天「traveling II」 詰パラ2011.6


{62飛成(龍)、74玉、73龍、85玉、84龍、76玉、
86龍、67玉、77龍、58玉、68龍、49玉}=
59龍、
{38玉、39龍、27玉、28龍、36玉、25龍、37玉、
26龍、38玉、28龍、49玉、39龍、58玉、
59龍、67玉、68龍、76玉、77龍、85玉}=
{86龍、74玉、84龍、63玉}=
73龍、52玉、62龍、41玉、
51龍、
{32玉、31龍、23玉、22龍、34玉、
25龍、33玉、34歩、32玉、22龍、41玉、
31龍、52玉、51龍、63玉}=
、59龍、
73龍、52玉、62龍、41玉、71龍、
、59龍、
73龍、52玉、72龍、41玉、81龍、
、59龍、
73龍、52玉、82龍、41玉、71龍、
、59龍、
83龍、52玉、92龍、41玉、81龍、
、59龍、
93龍、52玉、82龍、41玉、71龍、
、59龍、、88龍、A75玉、
73龍、52玉、62龍、41玉、51龍、
、79龍、
73龍、52玉、62龍、41玉、51龍、
62龍、74玉、73龍、85玉、84龍、76玉、
86龍、67玉、97龍、58玉、88龍、49玉、
89龍、、73龍、52玉、62龍、41玉、
51龍、、62角成、74玉、71龍、X85玉、
97桂、96玉、88桂、87玉、79桂、97玉、77龍迄517手詰

X 73歩合は同龍、85玉、97桂、96玉、88桂、97玉、89桂、87玉、
77龍迄519手詰歩余

☆解答は51歩71歩81歩82桂92歩93桂88と79と97桂…77龍まで517手でOKでした。

☆全応手玉移動、受方同Xなしの記録更新作。

☆まずは1周追い回してみるとわかるが、右下での折り返しは駒を消費しないで可能。右上での折り返しには、34歩と打つために、1歩必要だ。ということは回転しているだけで持駒は減っていくので、何か別の利を求めることが必要。それが82桂、93桂、97桂の3枚だ。この3枚を入手できたら収束で、ばしばしと3桂を連打して終わる。

☆解の一意性はどのように保障されているか。左上は利きの連鎖の関係で一目瞭然だ。左下も剥がす順番は88と、79と、97桂でないとうまく行かないことはわかる。では、左上と左下の順序はどうやって限定しているのだろう。

☆作者は明快な論理を用意している。88とを剥がすには85玉に対し88龍とするよりないが、ここで95玉と角を喰う変化だ。以下86龍、94玉。93桂がまだ存在する場合はこれで打歩詰。93桂がなければ(当然81歩もないので)95歩、93玉、82龍まで。これで93桂を剥がした後でなければ、88とを剥がせないことがわかった。

☆あとは考えるのは収束だけ。もっともここで苦労した方もいるだろう。正解は62角成から71龍で左辺に寄せる。あとで邪魔にならないよう97桂と打てば並べ詰だ。

須川卓二 こんな簡単な書き方だと500手越えを解いた感じがしないなあ(笑)

☆長編は解けても解答を書くのが大変。そこで今回は画期的な解答方法を試みたつもりだった。しかし、「あまり簡単ではない」という意見もあった。手数を数えるには結局全手順書くことになるからと言う意見だ。確かにそうかもしれない。KIFUなどのソフトで並べれば手順はコンピュータが数えてくれると思ったが、それだったら全手順答えるのも同じように簡単だ。長編作品に解答を寄せて貰うのはなかなか難しい。

☆実際、517手という正解のほかに515手、519手という解答も届いた。519手は数え間違えだろう。515手はAで75玉と粘るのをうっかりして2手短く詰めた可能性もある。しかし、数え間違えの可能性もある。大学院では手数の数え間違いは正解としてきた。そこで、今回の解答方式では判断不能なので全部正解とさせていただいた。ご了解願いたい。

☆今回の企画に作品提供してくださった摩利支天さんに感謝します。

名越健将 「STARSHIPTROOPER」で苦しんだ紛れ62角成が今度は作意だった。
宮本慎一 3桂あれば詰まぬことなし。トドメは龍引き。
岡橋憲司 KifuforWondowsを駆使して解く事が出来た。正直嬉しい。
鈴木彊 最長記録更新おめでとうございます。素晴らしい詰将棋に出会えて幸せです。更なる記録を目指してください。
加賀孝志 収束も安定しており楽しめる。長篇入門とも云える作。行ったり来たり目が回る。
小林徹 総手数を知る為には全手順を書かねばならず、略記も余り楽になっていないのではありませんか。
小林直義 詰上がり図が左下に「K」の字が浮かぶのは見事です。はじめから竜を大きく動き回るのは、これもビックリ仰天です。
掛水伸一 手数を数えるのが、大変でした。合っているかどうか自信がありません。
原田清実 途中でよろめく落し穴が…。置き駒消去だけでここまで伸ばせるとはねぇ。
水谷一 やさしい手順を成立させる実に巧妙な仕組みはすばらしい。
凡骨生 例題が大きなヒントになり初めて500手越えの作品が解けました。
永島勝利 例題付の出題面白い試みです。お陰様で楽しめました。でもこの解答方式は却って間違えそうですね。なお、最終手は非限定?
中瀬俊昭 例題を参考にしてやっていったら解けました。
池田俊哉 左上を片付けないと左下に手が着けられないと言う構成はうまい。桂3枚のベタ打ちはなんともユーモラス
竹中健一 最後、75玉と一回横に逃げるのをうっかりしそうでした。解答を書いていて気付きました…分かりやすく、趣向が楽しめました!
今川健一 私なら表題は、「恋のフーガ」ですね。名曲は名局に通じるか。追いかけて追いかけて、縋り付きたい。
河村謙吾 収束の場所が右上か左辺かでかなり考えました。505手目▲6二角成を発見したとき嬉しかったです。
占魚亭 単純な手順で500手超えとは凄い。駒を取る順番も見当がつけやすいのもいいです。

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