久留島喜内 『将棋妙案』第15番
三代伊藤宗看・伊藤看寿の『将棋無双』『将棋図巧』は門脇版『詰むや詰まざるや』のお陰で全貌を知ることができる。同じ時代の久留島喜内の作品は『将棋妙案』『橘仙貼璧』という作品集の名前は知っていてもその内容はなかなか知ることができなかった。
マイナビの『図式全集 将棋妙案 橘仙貼壁』の発行は非常にありがたい。
さて4月でもあることだし、新しい読者–それもどちらかというと指将棋を上達する目的でこのテキストを読んでいるかもしれない方を意識して今日は書いてみよう。
よく「実戦では40枚の駒が錯綜している。詰将棋のような部分図で考える練習をしても役に立たない」という趣旨の発言をする方がいる。まったくの妄言である。
例えば本図で玉を詰める鍵となるのか、まずをそれを見極めることが重要だ。不要な齣を外してどの駒が最も重要かを見極める訓練。これが実戦に役だたないわけがあろうか。詰の場面に限らず「この駒を働かせるには」という思考は序中終のどの場面でも重要になってくるものだ。
さて入門講座であるからあっさりと正解をご覧に入れよう。次図である。
初形から6枚の駒をオミットした。これで13手詰だ。考えてみられたい。
王手は4つしかないから簡単だっただろう。
初手はまず飛車を捨てる。
同桂成の1手に今度は桂馬を成捨てる。
あとは香が成って追いかけていけば終了だ。
キャプションの「86香成」は「86成香」が正しい。図面作成ソフトのバグだが、もう直してくれない古いソフトなので諦めて欲しい。
さて以上を踏まえてもう一度初形図を見直してみよう。
97飛と捨てるためには2枚の角が邪魔になっている。これを動かさなければいけないとわかる。
しかも詰将棋は王手義務があるから王手としながら動かすことになる。
そう考えてみると97角は簡単に「王手!」とできそうだが、77角を動かすには(王手をする必要があるから)55飛車が邪魔になっていることに気づく。
つまり55飛車も動かす必要があるのだ。王手で。
ということは61銀も動かす必要があるとわかる。
さて、以上のヒントがあれば正解に辿り着くことは難しくないだろう。
詰将棋は余詰といって別の手順による詰め筋があってはいけないことになっている。だから作者は捨てる順番も必ず1通りになるように工夫を凝らしているはずだ。(多少は例外もある)
明日の晩に正解を発表するので、それまでに解き明かしていただきたい。
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