三代伊藤宗看・伊藤看寿の『将棋無双』『将棋図巧』は門脇版『詰むや詰まざるや』のお陰で全貌を知ることができる。同じ時代の久留島喜内の作品は『将棋妙案』『橘仙貼璧』という作品集の名前は知っていてもその内容はなかなか知ることができなかった。
マイナビの『図式全集 将棋妙案 橘仙貼壁』の発行は非常にありがたい。
久留島喜内『将棋妙案』第24番
30手台ですが、とても易しい作品だ。
考えるのは5手目ぐらい。
10手以上は長手数と感じる方でも、是非盤に並べて考えてもらえれば解ける!
銀を打って攻めていく以外はすぐに切れる。
12銀、32玉、41銀不成、同玉、
さてここが唯一紛れる局面だ。
第一感は42歩成と攻めてみたい。
42歩成、同玉、44香、51玉、24角成、同龍、
【失敗図】
香を離し打ちした後、51玉と下がられて困ってしまうのだ。
もう一枚、一段目に勢力を及ぼしておく必要がある。
33桂不成、
それが33桂生だ。
頼りなさげだが、これで手が続く。
52玉、42歩成、同玉、44香、
今度は51玉なら41桂成があるので一段目に下がれなくなっている。
52玉、43香成、51玉、
さて、ここで次の方針を立てよう。
活用できる駒がないかと盤面を広く眺めてみると……84角が75香の質駒を喰える形になっていることに気づく。しかし王手のラインを64金が塞いでいる。
ということはこの金を動かしておいて、75角と香を入手すればよさそうだ。
63桂不成、同金、41桂成、同玉、31角成、同玉、
75角、
この辺りが本局のクライマックス。
同龍、33香、
33香と入手した香を打って、あとは収束だ。
22玉、32香成、13玉、23銀成、同玉、
33成香寄、13玉、12金、同玉、22成香寄、13玉、
23成香まで33手詰
初手に打った銀を23銀成と活用していくのが、妙に気持ちが良い。
詰上り攻方2枚(清涼詰)になるのも、ピッタリ詰んだ感を盛り上げてくれる。
現代では33手詰は中編作と分類される。詰パラでは「大学」枠だ。
しかし、この作品を詰パラの大学に投稿してもおそらく採用はされないだろう。
中編の手数を支えるに足る妙手も、新しいアイデアも見当たらないからだ。
でも、このような手触りの中編作があっても良いと思う。詰将棋の楽しさの大事な一面であると思うのだ。
詰パラだったらデパートなのかなぁ。でも最近のデパートは高級品ばかり目白押しだからな。
スマホのスマホ詰パラや、ネットの詰将棋メーカーがこのような作品の受け入れ先になっているのが現状だろうか。
つみき書店でも「易しい中編」の発表の場を作ろうかな。(「詰将棋つくってみた」が終わったら)
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