Judge:新ヶ江幸弘
諸説あるとは思うが、田舎曲詰のキーワードは「意外性」と「必然性」の2つではないだろうか。
①意外性:
曲詰になること自体に意外性がある。盤の中央には駒が配置されてなく、一見して曲詰とは推察できない初形から、あぶり出される展開。例えば、実戦型から詰めると「一」が現れる、柏川作が有名。
※詰将棋情報と手順は末尾に
②必然性:
田舎でしか実現できない手順。中央では実現しない(例えば辺や可成位置から離れていると成立しない)手順の曲詰。田舎の例ではないが、利波作の金銀図式の「✕」の収束は、都玉では成立しないので、詰上りを中央から一段上にずらして成立させている。
これらは「作ってみる」場合に意識した方が良いポイントであり、「作ってみた」ものを評価する場合の視点にもなります。
最優秀作
第10問 武田裕貴
詰上り「~」。46銀を5回動かして、最後には消えてしまうというテーマを織り込んだ手順は、意外性及び田舎での手順の実現性とも十分に満たしている。不動駒もなく、今回の最優秀作。
佳作
第8問 ミーナ
詰上り最小駒数の「/」。田舎にすることで、最終形が完全限定されているのがスッキリしていて良い。手順も、入玉型で金がなく生角1枚と銀の組合せは詰めにくい味がある。佳作
講評
第1問 RINTARO
「7」→「タ」で、ひょっとして「七夕」!?深読みしなくても形の意味がわかるように作れれば、手順にかかわらず一定の評価は得られるかも。
第2問 マンダリンピエロ
詰上り左右対象。九段目以上に玉が動けないことを変化で利用しているタイプ。駒が多いので、普通に出題すると曲詰とは気付きにくいかもしれない。
第3問 RINTARO
ひらがなの「う」。65金~54との感触が主張。ただ、詰上りが「都玉」でしかも字形も盤の中央なので「田舎」ではない気がする。
第4問 不透明人間「隅エフ」
最小の「F」。有名な手筋と曲詰を組み合わせたということでしょうね。
第5問 negitarou「1筋2筋で大渋滞!」
33へ逃げられた時の変化が見えにくい序盤、邪魔な桂を捌いて実現する14飛は気持ちが良く、詰上りも縦「1」が現れるが、53銀の意味(形)がわからない。
第6問 はせがわ ゆ
53金の軽手と馬の翻弄を織り込んだ手順はいい流れ。詰上りは「〃」?少しわかりにくいかな。
第7問 不透明人間
詰上りは「旗」かな。持駒は多いが、吊るし桂まで、既成ながらも捨て駒が多く、流れるような気持ちのいい手順。
第9問 negitarou
詰上り「1」。34馬からばらしに行く手順はともかく、意外性はある。最後に小駒だけになるのにチャレンジしたということですね。
第11問 RINTARO
詰上り「パ」、玉は21で詰むが、字形は盤のほぼ中央なので、あまり「田舎」という感じはしない。「ハ」の部分を構成する駒の必然性を意識すると、別な世界が開けるかも。