課題33:攻方駒のスイッチバックを含む詰将棋を作ってください。
スイッチバックはチェスプロブレムから輸入された概念です。
ある駒が別の位置に移動して、後に同じルートを通って元の位置に戻ることをいいます。
詰将棋では駒が成って戻ってくる場合とか帰りは同じルートでも途中下車する場合などもスイッチバックと呼んでいるようです。
一体スイッチバックのどこが面白いのか?
これを探るために厳しい条件(その駒はA→B→A以外に動かないとか成っては駄目とか途中下車は駄目とか)をつけようかとも思いましたが、この企画の趣旨はあくまで創作のきっかけを提供することですのでやめました。
唯一残したのが「攻方駒の」という条件です。
なぜこの条件をつけたかというと詰パラでの発表作をみる限り、圧倒的に守備駒のスイッチバックが多いからです。
ところが詰将棋において守備駒のスイッチバックは往々にして翻弄物に発展していってしまいます。
まぁ、話すと長くなるので気が向いたら詰将棋雑談で。
- 手数制限はありません。
- 未発表作に限ります。
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- 締切は9月29日(金)
- Judgeはspringsさんです
例題を見ていきましょう。
例題1 妻木貴雄 将棋世界2002.6
11銀成、33玉、22馬、24玉、13馬、33玉、
43金、同龍、24龍、32玉、31馬、同玉、
21龍まで13手詰
21龍→24龍→21龍がスイッチバックです。
31馬→22馬→13馬→31馬は行きと帰りでコースは同じですが帰りは22をショートカットしています。
しかし詰将棋ではこちらもスイッチバックということでOKです。
例題2 若島正『盤上のファンタジア』第6番 近将1995.2
38馬、15玉、45龍、35桂、16歩、26玉、
36龍、同玉、37馬まで9手詰
37馬→38馬→37馬のスイッチバックと、
36龍→45龍→36龍のスイッチバックが見事に表現されています。
例題3 若島正『盤上のファンタジア』第8番 京都民報1985.6
42銀不成、32玉、24角不成、21玉、31龍、12玉、
13歩、23玉、34龍、同玉、33角成まで11手詰
34龍→31龍→34龍がスイッチバック。
33角→24角生→33角成は最後駒種が変わってしまっていますが、詰将棋ではこれもスイッチバックでOKです。
例題4 山田康平 詰パラ2010.5
34銀、\(\begin{cases}
46玉、68角、55玉、25飛、64玉、86角まで7手詰\\
35玉、25飛、46玉、68角、37玉、27飛まで7手詰
\end{cases}\)
チェスプロブレムですと攻方・玉方すべての着手がスイッチバックで統一されて美しい仕上がりにすることができるのですが、詰将棋は王手義務があるし奇数手なので実現は難しいようです。
この攻方駒のスイッチバックを発表しているのはそのほとんどは山田康平さんです。
まずは変同利用のツインでの表現。
86角→68角→86角と27飛→25飛→27飛のスイッチバックが表現されています。
例題5 山田康平 詰パラ2010.12
46角、45玉、67角、36玉、34龍、27玉、
49角、17玉、28角、同桂成、14龍まで11手詰
28角→46角→28角
49角→37角→49角
14龍→34龍→14龍
の3駒のスイッチバックが捨駒および捨駒風味をつけて表現されています。
おそろしい傑作ですね。
攻方手にスイッチバック以外の余分な着手が皆無であることにも注目してください。
例題6 山田康平 詰パラ2011.12
41馬、86玉、88龍、76玉、75馬、67玉、
23馬、同飛、57馬、同玉、58龍まで11手詰
23馬→41馬→23馬
58龍→88龍→58龍
57馬→75馬→57馬
と今度は3枚の成駒のスイッチバックです。
余分な攻方着手もありません。
2枚の馬は捨駒にしてあります。
例題7 山田康平 詰パラ2014.12
54馬、33玉、43龍、24玉、15馬、35玉、
36馬、同玉、37馬、同玉、47龍まで11手詰
36馬→54馬→36馬
47龍→43龍→47龍
37馬→15馬→37馬
とやはり3枚の成駒のスイッチバック。
余分な攻方着手なし。
2枚の馬を捨てただけにとどまらず15馬も捨駒になっています。
余談ですが、例題5・例題6は『短編名作選』に収録されているのに、本作は零れています。これは運の良し悪しとしかいえませんね。
例題8 相馬康幸 詰パラ2001.10
15角、17玉、26銀、27玉、35銀、17玉、
26角、27玉、48角、17玉、26銀、27玉、
15銀、17玉、26角、27玉、44角、37玉、
26角、27玉、48角、17玉、26銀、27玉、
35銀、17玉、26角、27玉、15角、17玉、
26銀、27玉、37銀、17玉、26龍、同龍、
同角、16玉、15飛、27玉、28歩、同と、
17飛まで43手詰
最後に異なる傾向の作品を紹介しましょう。
長編趣向作には攻方の駒がスイッチバックしてほぼ原型に復帰するという作品がいくつもあります。
本作は攻方の角と銀がスイッチバックを繰り返しながら進みます。
2手目の局面と34手目の局面を是非比べてみてください。
※この角銀入替パズルの元祖は柳原作です。以前は「詰将棋カルタ」というコーナーで並べて鑑賞できるようにしていました。その後、田島作と鈴川作が増えたのでそのうち詰将棋雑談あたりでまとめて並べてみたいですね。
さて詰パラのバックナンバーから例題を探したら、ついつい名作・傑作ばかりになってしまいました。
どれも2枚から3枚のスイッチバックですから、これは創作難易度高いです。
もちろんスイッチバックは1枚の駒でOKです。
最後に風みどりのショボい例題を2つ用意しました。
ご笑覧ください。
例題9 風みどり
34角成、14玉、13飛成、同玉、23馬まで5手詰
23角→34角成→23馬のスイッチバックです。
駒種が変わってもOKということでよろしく。
同一手順作あると思いますが、同一図チェックはクリアしたので風みどり名義にしておきます。
例題10 風みどり
41飛成、28玉、39馬、同玉、48龍まで5手詰
48飛→41飛成→48龍のスイッチバックです。
こちらも駒種変わりはOKということで許してください。
同一図なかったのは推敲不足だからかな? これでも最初は10枚あったのをなんとか減らしたんだけど。
「未発表作」とあるけれどtwitterで流した作品はダメですかと質問がありました。
昨今はtwitterも既発表とする風潮ですが、つみき書店はそんなに厳しくしても仕方ないのでインプレッション3桁まではOKとします。(1000を超えていたら既発表扱い)