今回は夏休みなどの関係で中旬に実施する結果発表ができませんでした。
今月から元のペースに戻ります。
課題32:間駒が動く詰将棋を作ってください。
難しい課題でしたが22作もの出題があり、解答も16名の方が寄せてくださりました。
ありがとうございます。
第1問 久保紀貴
正解
26龍、同香、27角左まで3手詰
★25香が29に居る王さんに王手を掛けています。したがって初手はこの香を取るか、間駒しつつ逆王手を掛けなければいけません。27角左ですと34玉と逃げられますので26龍~27角の二段移動中合が正解です。
RINTARO 発想の転換。
松崎一郎 緊張!王手の応酬。
竹中健一 発想がアイデア賞!
まつきち 「間」にある駒が3つも動く!
ペケ 攻め方の手が全て合駒なのが面白い
占魚亭 変化球からスタートですか(笑)。
高橋美鈴 ひたすら王手を防ぐために頑張った結果。
negitarou 逆王手を連続で遮断!、初手がとても意外でした。
松澤成俊 攻方玉を見落としていたので小考してしまった。(56角とか)
坪倉光誠 課題が「合駒」じゃなくて「間駒」になっているのは、こういうことだったのですね。
★いえ、そういうわけではなくて、筆者は「間駒」が正しいと考えているのです。理由はこちらなどに書いています。
久保紀貴 レトロ解析の利用によって、3手で合駒を動かすのが狙いです。推敲時、26龍捨てを紐なしにした図を採用しかけましたが、それでは26玉に対して15龍、35玉で初形に至った可能性があって課題を満たさないところでした。危ない危ない。
はせがわゆ 香はどこから来たのか。
ぎょうざパン 「龍の王手に25香と合駒をした」という設定ですね。
空貴人 攻め方の15龍の王手に対して、25香と間駒した局面。玉方は間駒せずに、同とで15龍を取っていれば詰まされなかったが、攻め方の15龍が63角成などの1手詰の開き王手を見逃した悪手で、一時は勝ちを逃したものの、香合いで再び勝ちが転がってきたという、将棋の終盤のスリリングさが見事に切り取られた図面。
★課題を満たしていないのではないかと疑問を持った方には作者の解説と空さんらの短評でご理解いただけたでしょうか。この局面に至る1手前は25香合以外に考えられないということです。課題には作意手順内でだした間駒とは書いていないので(普通書かない!)これで課題をクリアしているという主張です。
★この課題を出したとき、双玉図で初形で王手がかかっている形での3手詰(下の原理図のようなもの)は出てくると予想していたのですが、さらに上をいく大胆なアイデアでした。しかし解答者の皆さんもしっかり理解されているようで時代はレトロ解析が普通になってきたのかと感慨深いものがあります。
3手で間駒を動かす原理図
第2問 松田圭市
正解
46龍、45と、55龍、同と、17角まで5手詰
★55にしか逃げ道がない王様。46龍と迫って逃げ道を塞げば45とと移動合して54に新たな逃げ道を作るしかありません。
RINTARO 課題に忠実。
松崎一郎 と金を無力化。
松澤成俊 55龍は良い手だが紛れがない
占魚亭 4手かけてと金を一段上げる。
ペケ 擦るように龍を捨てる感触が絶妙
空貴人 角のライン上の龍の動きが印象的
まつきち 54が純金なら評価が変わるかも。
★「純金」と書くと価値ありそうですね!もちろんこの図で54金では3手目45同馬で余詰。
ぎょうざパン 龍が斜めに動いて手順が良いですね。
はせがわゆ 合駒を直後に動かす第3手段。最終手がいい感じ。
★シムソン(あれ違う? シムソン線といつもこんがらがるんだよね。サムソン??)、ペレだけではないぞと。
negitarou 5五の地点を封鎖!、最終手は澄ました感じで好きです。
坪倉光誠 55玉の形で67竜迄が第一感だったので、数秒悩みました。
竹中健一 55玉とさせて67龍まで、みたいな詰め上がりかと思いましたが全然違いました。。
★35馬、55玉、67龍は43飛が利いてきて46に間駒されます。
高橋美鈴 55の退路封鎖、馬筋通し、角を自由にする。5手詰奥深いです。
久保紀貴 縦型はちょっと珍しい気もしますが、欲張れば捨合が可能な構図ですしせめて打合にはしたかった気がします。
★移動捨合で表現したのが柳田明作。松田さんはすっきりとした配置で表現したかったのだと思います。
柳田明 詰パラ1974.11
第3問 久保紀貴
正解
11飛成、12飛、22銀、24玉、16桂、同飛、
33銀不成まで7手詰
★当然の初手11飛成に逃げれば14龍まで。間駒しても14銀、24玉、25馬まで。しかし42王がいますので12飛と逆王手をかければ14銀とはできません。そこで22銀と間駒且つ王手(要は逆王手)とします。戦力不足になりますが16桂と捨てて間駒の飛を動かせば、やはり間駒だった22銀がアンピンされて動けるようになりますので詰みという仕組みです。
松崎一郎 竜の利きを通す。
占魚亭 桂で釣ってピンを解除。
negitarou 最終手の不成が渋いですね。
空貴人 双玉形の面白さを感じました
竹中健一 うっかり香合の人とかいるかな?
ぎょうざパン 飛を移動せる16桂が感触良いです。
ペケ 逆王手のための飛車が動く。効率的な配置
松澤成俊 あっけないのでもう一回飛車動かしてほしいなあ(笑)
坪倉光誠 限定合の意味付けが、逆王手と桂を取ることの2つでダブっていると思います。
RINTARO 双方間駒動かし。
はせがわゆ 22銀も合駒だった。
まつきち 攻防で2種類の合駒動かし。
久保紀貴 双方合駒動かしが狙いです。いい構図を選べたつもりです。
★久保さんが単純な間駒動かしだけで満足するわけがないので、双方でダブルで実現しようという狙い、見破った方が多かったですね。狙いがチャンと解答者に伝わるには、それまでの発表作の積み重ね(つまり作者の信用?)も重要な要素だといえそうです。
★さて「双方で間駒動かし」の実現という目で本作の作意と構図を眺めてみると、無駄手が皆無で実に効率的な配置だとわかります。みごとですね。
第4問 springs
正解
36角、45飛打、55桂、53玉、43歩成、同飛、
63桂成まで7手詰
★59香の利きを58角が阻害していますので、初手36角は見つけやすかったと思います。同飛なら55桂、53玉、43歩成まで。そこで逆王手で45飛打と間駒します。同角は同飛でまた逆王手。いまさら55桂合でも同飛で対処できません。そこで3手目は55桂と間駒しつつ王手(だから略して逆王手という言葉があるんですケド)。53玉に43歩成で間駒の飛車を動かし、続いて攻方の間駒だった桂馬を動かして鮮やかな詰み。
松崎一郎 飛を邪魔駒化。
竹中健一 きれいな両王手ですね。
ぎょうざパン 両王手の詰上がり、気持ち良いですね。
RINTARO 最短手順でまとめたところがいいです。
松澤成俊 これだと絶連なのでもうひとひねりしたいところ
占魚亭 予想通りだが両王手のフィニッシュが気持ちいい。
空貴人 紛れがたくさんあり、罠にかかっている感じがします
negitarou 4三の地点を封鎖!、両王手での詰上がりが爽快です。
坪倉光誠 46飛、75香が残る終形がスッキリしませんが、手順素晴らしいと思います。
ペケ 何としてでも43への効きを残す玉方の工夫。双玉でなくても実現できそうに思えた。
★偶然ですが3番と並んで良かったと思っていました。が、不思議に4番は「ダブル間駒移動」という狙いに気づいて貰えなかったような気配です。初手の捨駒、両王手の詰め上がりなど、手順が3番より詰将棋らしかったのが原因かもしれません。3番では「作者の信用」と書きましたが、springsさんの信用が久保さんより劣るとは考えられないので、3番の平凡な手順は久保さんの狙いを伝えるための深謀遠慮だったのかもしれません。
はせがわゆ こちらも双方合駒移動。
まつきち 構成は3番と同じだが、こちらの方が派手な演出。
久保紀貴 こちらも双方合駒動かしですね。作り方がだいぶ違っていて面白いです。
★初手85角を考える人はいないと思うので、筆者だったら左に3筋動かしてしまうと思います。どうせ風船にはなりませんし。好みでしょうけれど。
第5問 松θ拓矢 土星からUターン
正解
83桂成、98龍、92歩、81玉、18馬、同龍、
91歩成まで7手詰
★83桂成として応手を考えてくださいという問題です。何をどこに間駒しても92歩、81玉、18馬までで詰みそうです。この最終手18馬を同☖と取れる間駒を考えてみると、持駒には飛車が残っていないので98龍の移動中合という離れ技しかないことに気づきます。
★これで作意と狙いは判明しました。盤の端に発生した間駒がもう一方の端まで移動するという狙いです。間駒動かしなら最長距離を動かしましょうという短編作家向きの発想です。
★次になぜ98龍と同香と取れないかを調べましょう。2手目98同香なら96角という逆王手が発生するという仕組みです。最後は紛れを確認して配置の意味を探りましょう。初手28馬は……46とで逃れですね。これで34桂の配置も理解できました。
ぎょうざパン 98龍にビックリ
RINTARO 移動中合最長動かし。
占魚亭 両王手しないのがポイント。
竹中健一 双玉にしてまでやりたい手順なのかはわかりません…
空貴人 玉の鼻先を龍が通り過ぎる、スピード感を感じました
まつきち 98龍が派手な一手。18まで動くのはダイナミック。
ペケ 移動中合のの最遠移動。取ると自玉が詰むのが面白いと思った
久保紀貴 合駒の最長移動! 移動中合でやっているのがド派手ですね。7手での実現もGOOD。
negitarou 懐に潜り込む「9八龍」が妙防の一手。玉方・6九の角は地味ながら良い仕事をしています。
坪倉光誠 ダイナミックな中合動かしですね。この距離で理論上最短である7手の実現は見事だと思います。
★最後に残る謎はタイトルの解釈。
松崎一郎 タイトルの意味?
松澤成俊 何が土星で何がUターンするのか考え込んでしまった(笑)龍が端から端に移動するのは面白いがUターンじゃないよね?
★作意は作者に説明していただきましょう。
松θ拓矢 龍合を盤の左端(さたん→サターン→土星)から右端(うたん→うたーん→Uターン)まで動かします。
★タイトルが難問だったようです。「悪魔からうーたんに」ぐらいの方が伝わったかもしれませんね。うーたんを知らないといわれそうなのでリンク張っておきました。
第6問 マンダリンピエロ
正解
65角成、76金、97金、77玉、66銀、同金、
87金まで7手詰
★76に出られると逃げ道が豊富なのでまずはこちらから65角成と攻めるのは自然な手段です。間駒は作意を進めると分かるように横に利く金合。この金を捨駒でちゃんと動かして課題をきっちりクリアしています。
松崎一郎 強面だが優しい。
松澤成俊 76銀成として王をス抜かれた(笑)
空貴人 初手で成った角で詰上げるストーリー
negitarou 玉にじわりとにじり寄る金。最終手は限定だと良かったですね。
占魚亭 重く感じる。
まつきち 配置がやや重く感じる。
ペケ もう少しコンパクトにしたい
竹中健一 もう少し形と手順を何とかしたい気がしました。
RINTARO 基本はできていますので、配置の整理ですね。95銀は不要?
坪倉光誠 あっているのか不安になる手順です。同じ手順でもっと駒数の少ない作品がありそうですね。
久保紀貴 配置は推敲の余地ありですが、自力で成立させたことが伝わってきます。難しい課題のクリアに拍手。
はせがわゆ 効率が悪いと感じた駒の働きを考え、それを置き換えようとすることで(盤端を用いたりも)、かなり駒数が減ると思う。本作の場合では香、歩、金:玉を8段目より向こうに行かせない配置、57飛:67銀を動けなくするための配置だが、目的に対し過剰な配置であるため余詰筋が生じ、それらを防ぐためさらに配置(45角、58龍、79銀)が増えている。
★初形に推敲の余地ありという意見が多く寄せられました。Judgeのkisy先生と筆者も同じ意見で、金合の限定に苦労をされたのだと思います。具体的には飛車合との区別をどうつけるか。作者は飛車を売切れにする方法を選び、そのために飛車を盤面に配置する意味付けを苦心されたのでしょう。その結果非効率な配置になったと見ます。
★解消する方法は一つは非限定を気にしないことです(^^;;。次の図は筆者が過去に発表した作品。4手目金合でも飛合でも同じ13手詰ですが気にせずに堂々と発表しました。
風みどり 隊友1982.6.15
★そんな恥知らずなことはできないという場合は、飛合を割り切る方法を考えることです。持駒を置き駒にしたり、3手目も欲張って捨駒にしたりと色々試行錯誤をしてください。来年の『詰将棋つくってみた2023』発行までに改良図ができましたら送ってください。(試しに筆者がやってみましたらまったく同じ作意ではありませんが、間駒制限ありで盤面8枚。飛合の余地を残すと盤面9枚になりました。現役バリバリの作家でしたらもっと推敲するでしょう。参考までに図面を見たくなったらご連絡ください。)
第7問 小林敏樹
正解
42銀成、81香、32金、12玉、89角、同香成、
11龍、同玉、22金打まで9手詰
★当然の初手42銀成に91馬では32金、12玉、89角、13玉、23角成まで7手詰。この89角を阻止するために2手目81香合とします。飛合では同龍、同馬、31飛、12玉、23金まで7手詰。それでも初志貫徹で89角とすれば同香成で狙いの「最上段で発生した間駒が最下段まで動く」が実現。91龍の利きが通ったので11龍と切って簡単な詰みです。
RINTARO 間駒香最長動かし。
空貴人 気持ちの良い手の連続
占魚亭 鮮やかな香の最遠動かし。
negitarou 二手目が飛合だと早詰め!
松崎一郎 迫力ある恐竜(香竜)の大移動。
松澤成俊 驚異の受けが出るのかと思いました
竹中健一 テーマがあるからうっかりする人はいないでしょうね。
まつきち 81香合から89香成はすっかりおなじみになった受け。
はせがわゆ 香合動かしが狙いなら7手でまとめたい。
★飛合の変化を残したかったのでしょうね。あと……
ペケ 王手した駒と合駒が共に最遠移動、ダイナミック
坪倉光誠 竜、香ともに最長距離移動する一方で、角は1マス移動というユーモラスな作品ですね。
★攻方の龍は91→11。玉方の香は81→89。11銀としなかったのはこの狙いが理由でしょう。
久保紀貴 第5問と同じく合駒の最長移動。手数は2手伸びてしまっていますが、打合になったのは大きく悩ましい比較です。また第5問を解いた時に第5回裏短編コンクールの竹野龍騎「ICBM」(くぼの詰将棋 2019.11)を想起したのですが、本作はより近い印象で、関連性も気になります。
竹野龍騎「ICBM」
くぼの詰将棋 2019.11.04
91龍、81香、31角成、12玉、24桂、同銀、89角、同香成、21馬まで9手詰
★おお、これは似ていますね。しかし香合を最長移動させようと考えたら81香→89香成はほぼ必然なので(玉を1回しか移動させないとしたら)偶然の一致でしょう。
※本日はここまで!
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