二流作家のメンタルヘルス(6)

北原義治 独楽のたに 第44番 1978.9.10


74馬、83飛、同馬、同歩、93飛、81玉、83飛不成、82銀、
93桂、91玉、92歩、同玉、84桂、91玉、81桂成、同玉、
73桂、91玉、92桂成、同玉、93銀成、同銀、81飛成まで23手詰

伊藤看寿 将棋図巧 第12番 1755


23飛、32玉、13飛不成、21玉、23飛不成、22銀、13桂、11玉、
12歩、同玉、24桂、11玉、21桂成、同玉、33桂、11玉、
12桂成、同玉、13馬、同銀、21飛成まで21手詰

「独楽のたに」44番の解説にはこうある。

収束は、「図巧」第12番と同じ捌き。それを知ったのはだいぶ後だが、のちに不成で利かす飛は合駒で取れるのが、当時としては自慢のくふうだったのだ。

「収束」と書いてあるが、17手も一致してはアウトでしょう。

一流作家もたまにはやらかす

ところで、「独楽のたに」にはそれぞれの作品の初出が書いていない。
1978.9.10は「たに」の発行日だ。

そこで気持ち悪いので調べてみたが、どうにも見つからない。
T-Baseに収録されないようなメディアに発表された可能性が高い。
ただ、こんな可能性は考えられないだろうか。

看寿の図は繰り返し引用される有名な作品だが、現代の目で見ると大きなキズがある。
15手目の33桂を同香と取られると以下、22飛成、同玉、23銀、21玉、32桂成……以下平凡に詰むのだが27手かかる。
当時は詰将棋は懸賞出題されるわけではないので、なんの問題もない。
同香は33が塞がるので平凡に詰む。12桂成、13馬とたたみ込むこちらが作意だ。
これでよかった。(妙手説というらしい)

北原義治は図巧12番の変長を修正しようとしたのではないだろうか。

修正している内に、「あれっ、これ飛車合だせるじゃん」とツイツイ創作モードに入ってしまった。
出来上がった作品は看寿のパクリと言われるから発表はできなかったけど、作品集にそっと潜り込ませてみたくなったのではなかろうか。
「これ図巧#12より、いいねぇ」と言って貰いたくて。

実際、オイラの「独楽のたに」にはこう書き込みがある。
看寿図よりやさしいがこの方が良い

「二流作家のメンタルヘルス(6)」への3件のフィードバック

  1. 北原さんとは連盟で一緒だったときに、少しお話を聞きました。
    基本的に北原さんは「豚児でもかわいい」とわが子(作品)を溺愛するタイプで、全て発表したいと思っていたようでした。
    玉石混交なのはそのせいです。

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