詰将棋入門(150) 森田手筋二重ピン

若島正『盤上のファンタジア』第51番 詰パラ1973.9改

森田手筋を復習してから是非取り組んでみていただきたい。

まずは紛れに跳び込んでいく。

59歩、同玉、48銀、58玉、

打歩詰だ。森田手筋はここから始まるのだった。
54馬を活用するには76桂が邪魔なのでこの桂馬を動かさなければいけない。
94馬がいるので開き王手で動かせる。
といっても、64桂と欲張ると…

64桂、94と、76馬、67歩、

【失敗図】

歩合されてこれはどうにもならない。
欲しいのは歩以外の駒なのだ。

84桂、94と、76馬、67桂、

【失敗図】

そこで64桂ではなく84桂と開く。
これなら76馬に対する間駒は、二歩禁なので歩以外の駒となる。
桂以外なら取ってその駒を打てば詰む。

しかし、ここから進まない。
森田手筋には76馬を消す必要があるが、それをする余裕がないのだ。

元祖森田手筋は打歩詰の状況になってから始まったいわば打開手筋だが、実は本作は打歩詰の状況になる前に工作する回避手筋として表現しているのだ。

【再掲図】

正解は初手にまで戻る必要がある。

84桂、

48銀を決めずに先に間駒を準備する。

   (94)同と、76馬、67桂、

飛合など変化は多少増えるが、桂合しかないのはすぐにわかる。
他合は59歩以下48銀の形にしてから取れば良い。

59歩、同玉、86馬、

これで76馬を捨てることができ、67桂をアンピンすることができたわけだ。

   (86)同龍、48銀、58玉、59歩、

67桂という取歩駒が発生したおかげで59歩が打てて目出度し目出度し。

   (59)同桂成、47銀、57玉、48金まで15手詰

【変化図】

…と、これで解決したと思ったら甘い。
作者名を見ていなかったのだろうか。
森田手筋を打開から回避に変えただけで若島正が発表するわけがない。
これは変化手順なのだ。
この手順を解答したら誤解となる。
どこかで応手を間違えているのだ。

【再掲図】

間違えているのは実は2手目の応手。
正解は…

   85と、

なんと94馬を取れるのに取らずに移動合。
その意味は見えただろうか?

76馬、67桂、

76馬を同とと取るためかと思ったら大間違い。
同馬で同じ事になる上に持駒の歩が増える。
76馬にはやはり67桂合となる。

59歩、同玉、86馬、

実は85と移動合の狙いはここにある。このアンピンを図った86馬を取ろうというのだ。

   (86)同と、48銀、58玉、

【失敗図】

59歩が打てないではないか。
相変らず67桂はピンされている状態だ。
これが2手目85との狙いだった。

そこで正解は86馬の前にもう一手。

95馬、

遠くの馬を先に捨てるのだ。

   (95)同と、86馬、

85との妙防手のお陰で馬の捨駒が増えるというのが素晴らしい。

   (86)同と、48銀、58玉、59歩、

今度こそ59歩が打てて収束だ。

   (59)同桂成、47銀、57玉、48金まで17手詰

【変化図】

で安心すると……実はまだ誤解。
やはり応手が間違っている。

正解は10手目同とではなく…

   77飛合、

実は10手目は同とではなく、77飛合が成立するのだ。
先程まで歩以外の駒は獲って詰んだのでうっかりしやすい所だ。
67桂が発生したので飛車を取っても打てないのだ。そして取ると同龍で47銀ができなくなってしまう。

48銀、58玉、59歩、同桂成、76馬、

玉方の妙防手によってまたもや馬捨てが増えるという理想的な展開だ。

   (76)同飛成、47銀、57玉、48金まで19手詰。

85とと77飛の妙防を見落として、詰パラで出題された際には解答者30人中18名が誤解となった。
(短大手数にならないから変だと思うだろうに)

作者としては77飛合はオマケのサービスで、あくまで狙いは85とという移動合の妙手で攻方により発生させられた桂馬を二重にピンさせるという所にあると見る。

森田作に触発されて多くの「森田手筋」作品が発表されたが、もっとも印象に残っているのはこの作品だ。辛口に言えば森田手筋を発展させたといえるのは本作を含め数作しかないのではないか。

以前は「広義の森田手筋」という言葉も使用したが、久保さんの学説に則り、このブログでは「森田手筋」といえば「取歩駒発生+アンピン」を意味することにします。

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