詰将棋入門(89) 玉方馬のぶん回し

伊藤看寿 『将棋図巧』第75番 1755.3

11手詰。
ただし妙手説の時代の作品であるので、4手進めた7手詰を解くのが良いかもしれない。

48金(や37金)も見えるが、57金と香を取るのが正解。

57金、同玉、59香、同馬、

2手目49玉の変化も4手目68玉の変化も長い。
この局面からだったら現代でも通用する7手詰だ。

77飛、同馬、

77飛に67合は58飛、同馬、35馬以下。
56玉なら、54飛、同銀、66金までだ。
同馬にさらにたたみ込む。

55飛、同馬、

58の守りを解除したが、すぐに58金では56玉できわどく詰まない。
58飛では77玉で76への逃走路がある。
馬の効きにさらに55飛と打つ所がなんとも気持ちよい。
56合ならもちろん58金まで。
77玉なら58馬まで。

58金、56玉、47馬 まで11手詰

序奏は2手のみ。
3手目から一気に玉方の馬を\(\displaystyle\frac34\)回転させる。
守備駒の軌跡シリーズの作品である。
第55番のスケールアップであり、第80番の対になる作品だ。

ただ残念なことに、先に書いたように変化が割り切れていない。

2手目49玉と逃げ出す順が、長く、難しい。
19飛の妙手が必要だ。

【変化図】

以下
29金、58馬、38玉、39香、同金、18飛打、28銀、同飛、同馬、47馬、27玉、16銀、26玉、27金、同馬、15銀 まで19手詰
というのが柿木将棋が教えてくれた順だ。

また4手目68玉と左辺に逃げ出す変化も大変だ。
58馬、77玉に86銀以下だ。

【変化図】

さらに3手目58金の余詰もある。

【余詰】

58金、56玉、57香、同桂成、同金、同玉、69桂、同と、77飛、68玉、67飛打、79玉、69馬、89玉、78馬、99玉、69飛、98玉、89馬まで21手詰

この余詰については松井雪山氏の補正図がある。
玉方89銀・99とを追加するというものだ。

門脇芳雄は本局についてこう書いている。

この種玉方駒の軌跡をテーマにした趣向作品は、創作至難である。本局も難行苦行の成果であろう。

理屈は難しくない。

  • 55飛と打つと77玉と逃げられる。
  • 77飛と打つと59玉と逃げられる。
  • そこで59香⇒77飛⇒55飛と打たなければいけない。

そういう構図を作れば良いのだ。
しかし、それが難しい。
同馬2回すなわち半回転なら後世に沢山創られたが、3回で\(3/4\)回転の作品といえば、つい最近見た記憶があるだけだ。(雑談で紹介しよう)

【再掲4手目の局面】

この局面を調べてみると、殆どの駒はすでに必要になっている。(51香と53桂は不要のようだ。55飛~65飛の筋への対応かと予想したが)

ここから55飛と打てる局面で59香、(37→)同馬の2手を入れるのが難しいのだろう。
58金~57香の余詰筋も強力だ。

冒頭の2手を入れたのはどのような理由だろうか。
予想してみると……

  • 初形58にどうしてもしたかった。配置趣向の関係で。
  • 易しいので、難しい変化をつけ加えたかった。
  • 狙いの前に適当な序が欲しかったがこれしかなかった。

いや、この話題は入門からは逸脱しているのでやめておこう。

「詰将棋入門(89) 玉方馬のぶん回し」への1件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください