詰将棋入門(97) 襷詰

伊藤看寿 『将棋図巧』第94番 1755.3

序の6手が難しい。そこまで進めてから考えるのもありかも。

初手が難しい。

平凡に43香は

43香、52玉、42銀成、61玉、

【失敗図】

2枚の龍がまったく働かない形。これは失敗だ。

それでは初手42銀成は

42銀成、同玉、33金、同桂、

【失敗図】

これもまだ手は続くが、作意に入った感触が全然得られない。

正解は

63角、

左辺に勢力を確保する63角が正解だ。
それにしても打ちにくい。
31玉と銀も取られそうだ。

しかし、

63角、31玉、53角成、

【変化途中図】

35の角を捨てる手がある。
37香を働かせる目的だ。

以下、

同金、32香成、同玉、34香、43玉、35桂、42玉、
12龍、51玉、43桂不成、

【変化図】

と綺麗に決まる。
また63角に間駒されても困るような感じだ。

63角、52歩合だと
43香、31玉、53角成、

【変化途中図】

63角があるので、今度は43香に51玉とは逃げられない。
31玉ならやはり53角成が効くのだ。
以下、

同金、32香成、同玉、12龍、22合、同龍、

【変化図】

あとは23金以下押しつぶしていけば良い。

そこで、作意は63角に

51玉

51玉とぎりぎりに躱すのが正解になる。

あらためてみると63角は後々54角成と金の質駒を補充することができそうだ。

しかし、まだ安心するのは早い。安易に攻めると……

42銀成、同玉、43香、51玉、

【失敗図】

43香、同玉、54角成は簡単に詰んでしまう。
おかしいと思ったら、43香に51玉と戻られて詰まない。

正解は43香の前にもう一手かけておくのである。

42銀成、同玉、33金、

26龍を解放してこれで準備万端整ったというわけだ。

同桂、43香、

今度は(33金に対しても)51玉なら21龍までの詰みだ。
もう鍋に入った感じ。

同玉、54角成、同玉、64金、55玉、

もう手も限られている。

44角、同桂、35龍、56玉、

33桂がいるので間駒が可能だが、45に何を間駒しても44龍以下簡単に詰む。
金合すれば44龍はできないが、強すぎるので同龍、同桂、66金以下簡単だ。
そこで56玉と逃げるしかない。

次は18龍を活用する。

67銀、同玉、68龍、56玉、

ここまでくれば簡単な3手詰。
しかしなんとも鮮やかな決め手が用意されていたものだ。

55龍、同玉、66龍まで23手詰。

所謂「あぶり出し曲詰」と呼ばれる趣向だ。
詰上りの駒のシルエットが象形をなしている。

曲詰の難しいとことは配置駒に制限があるので余詰が修正しにくいということもあるが、配置の意味をつけていくことだ。意味のない駒の配置は飾り駒と呼ばれ、「曲詰」という趣向は成立しなくなる。
本局の場合ほとんどの駒は作意に関わっているので、意味はわかりやすい。
唯一73桂の配置だけは作意に関わりないようだ。
しかし、16手目の途中図をもう一度見て欲しい。
もし、73桂がいなければ65龍、46玉、48龍までの早詰だ。
したがって間接的ながら73桂は作意成立に必要な駒なので飾り駒ではない。

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