詰将棋つくってみた(10) 創作課題2 選評 by 有吉弘敏

ジャッジ:有吉弘敏

課題2:玉方歩の頭に大駒を捨てる詰将棋を創ってください。
(捨てる駒は飛車でも角でも龍でも馬でも、持駒でも置駒でも不問)

全12作の投稿ありがとうございました。狙いが明確な作品が多く、課題の表現は、こんなにバリエーションの広がりがあるのかと、感心しました。短編は、まだまだ可能性を秘めています。これからもこのようなテーマから、新しさを求めてチャレンジをお願いします。

優秀作

【第5問】ぬ

正解 14飛、同歩、15飛、同歩、25銀、同馬、27銀まで7手詰。

盤面8枚の簡潔な構図。初手14飛はすぐに見えるが、3手目の15飛はよく成立させたもの。同玉は26銀以下。そのため同歩だが、25銀で退路を封鎖し、27銀まで。課題を2回実現し、且つ3回の攻手が全て捨駒であり、7手詰としても申し分ない。馬二枚の守備駒は目につくが、攻方の持駒に飛車が2枚あり、他に良い配置はなさそうだ。優秀作。

佳作(2作)

【第2問】シナトラ

正解 a) 23角成、同歩、13角成、同玉、25桂まで5手詰。
   b) 13角成、同歩、23角成、同玉、35桂まで5手詰。

玉方の駒の1枚だけの配置の差によって、作意が変わり大駒を捨てる場所が変わる。
a)の場合は、22歩の前に角を捨て次に12歩の前に角を捨て、b)の場合は12歩の前に角を捨て次に22歩の前に角を捨てる。論理性の担保と実現は簡単ではない。
 4手目に25玉と逃げたときの変化の微妙な差が出る構図を見つけるまでのプロセスが創作の大半を占めると思う。

【第7問】すしぼーい

正解 24銀、同玉、33銀不成、同角、23角成、同歩、34龍、同玉、35金まで9手詰

初手は23銀成や23角成が見えるので、24銀は意外だった。また味の良い3手目が俊逸で、最後の龍捨てもきっちり。
課題の実現に加えて、それ以外の部分も含めて総体が非常に上手くできている。


【第1問】亜那梅男

初手が無く、いきなり15飛は、同玉で詰まない。そのため25角で事前に歩の前の捨駒という論理が明快で、課題に忠実な作品。
15飛は攻方の効きがない捨駒で感触が良く、初手を入れて課題を2つ満たしていて、上手くできている。

【第3問】あとれい

左右の角を対称で配置し、両方ともに大きく動かして捨てるという大駒の特性を生かした作品。意志を明確に表現しているところが良いです。三手収束は残念ですが、角の距離感がよく出ている作品です。

【第4問】松田圭市

7手詰で、課題を3回満たす事ができるか。その問いに挑戦していて実現している作品。おそらく盤面駒数は最小限ではないでしょうか。前の手を行わないと次の手が行えないため、変化・紛れはないが、十分な価値のある作品。

【第6問】奥鳥羽生

角の転回は、好きなテーマです。作者も同じだと思っていて、鋭い短編が多いです。本作も76から94の転回が上手く表現されています。
初手は歩の前に角を打ちますが、作意は逃げますので、捨てていない点が、厳密にいうと課題を満たしているかどうか。

【第8問】springs

第4問と同様課題を3回実現しているが、本作は同一歩の前の捨駒(大駒)を3回連続行っており、こちらも難度が高い。
シンプルな論理で実現していて好感がもてます。

【第9問】すしぼーい

3手目に課題を満たす龍捨てがありますが、主眼はどちらかと言えば角の動き。64→55→44→33→44と動きます。
初形のバランス(玉を構図全体の中心に置く)の考え方は、私も同じ感覚です。

【第10問】nono_y

89→79→69への3連続捨てが鮮やか。初手も上手く入っています。
本作も第6問と同じで、5手目に歩の前に馬を捨てますが、作意は玉で取ります。

【第11問】駒井めい

全般的に捨駒主体の短編で解後感が良いです。最後に歩の前の大駒捨てで締めます。
下図の様な配置すれば初手も歩の上での飛打ちにできるようですが、駒数が増えますので、良いという事ではありません。

【第12問】あとれい

他の作品とは、歩を動かす事の意味が異なり、本作は将来歩合をさせないための伏線手。
伏線は深みのある難度の高いテーマです。
大きな舞台装置は意識的なものだと思います。

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