長編詰将棋の世界(11) 

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

選題の言葉 (2010.06)

 やさしい大学院を復活させます。手数はもちろん大学院ですが、ご安心あれ。どの作品も解答者フレンドリーな作品ばかりです。
 「三洋堂」は軽いオープニング。
 「龍馬がゆくIV」と「V」はいずれも280手台の大作ですが、1サイクルが解明できればいずれも簡単。ぜひ盤に並べて、玉方の持駒を確認してみてください。
 手数が長いので、大胆な略記解答もOKです。作品側に手順前後の瑕もありますので好意的に採点します。ただし略記した場合は、手数は正確にお願いします。
 それとABC評価をお忘れなく。

志駒屋十政「三洋堂」詰パラ2010.6


棋譜ファイル

23桂成、11玉、33馬、21玉、
43馬11玉、44馬、21玉、
54馬、11玉、55馬、21玉、
65馬、11玉、66馬、21玉、
76馬、11玉、77馬、21玉、
87馬、11玉、88馬、21玉、
98馬、32歩、同馬、11玉、
33馬、21玉、43馬、11玉、
44馬、21玉、54馬、11玉、
55馬、21玉、65馬、11玉、
66馬、21玉、76馬、11玉、
77馬、21玉、87馬、11玉、
88馬、同角成、12歩、21玉、
33桂打、31玉、32歩、42玉、
52香成、43玉、53桂成、まで59手詰

32銀合は同馬、同歩、12銀、31玉、43桂、42玉、52香成、
43玉、53桂成まで

☆22を銀が守る馬鋸の基本形。しかし、桂香を使いきっている初形が目に付く。合駒に飛金銀しか使えなくしたことで、どのようなドラマが生まれるのか。

☆当然の23桂成に11玉とさがるともう既に32馬が邪魔駒になっていることに気づく。33馬に同角成は12歩21玉33桂生で簡単だ。

☆21玉に対して短編だったら11馬と捨てるのだが、この場合は99におわす角が同角成と取るので、以下33桂打同馬同桂生11玉で打ち歩詰。これは打開不能だ。

☆そこで43馬とよろける。31歩がいるので合駒されそうだが、ここで先の玉方の偏った持駒が利いてくる。金銀合は同馬同歩12金(銀)31玉43桂以下。飛合は33桂打11玉と戻してみると打歩が解消されている。12歩同飛21馬までだ。

☆さてこれで馬鋸が動き出すかというとさにあらず。もう一つ手がある。32歩の移動合だ。同馬の一手だ。玉方にしてみれば1歩を渡す代わりに31への退路を開けたわけだ。勘定は合っている。

☆再び33馬21玉43馬11玉44馬に対して同角成と取ってみよう。12歩21玉33桂打31玉で効果が現れる。しかし歩を渡しているので32歩と打たれ42玉52香成43玉53桂成まで。この23手詰が本局の骨格である。

☆ここに「玉方最長」という作意順選定ルールが絡んでくる。すると32歩移動合のタイミングと馬を同角成と取るタイミングが決定される。すなわち一番馬が離れた98馬の時と88馬の時だ。

☆以上、本作はルール上まったく問題はない。立派な完全作だ。それにも関わらずスッキリしない思いを抱いた解答者が数名おられた。実は筆者もその一人だ。

☆その訳は32歩合だ。2回目以降はなぜ成立しないのか。「16回可能なはず」との声もあった。

☆作意に現れる32歩合は移動捨合。2回目以降は玉方の持駒を打つ通常の合駒だ。これは同馬で持駒が余るだけ。したがって無駄合という扱いだ。

☆でも無駄合は2手伸びて駒が1枚余ることをいうのではなかったか。しかし本作では20手以上伸びる。これも無駄合なのか。

☆実は馬鋸に限って認められている無駄合なのだ。不文律である。

☆近年に発表されている作品はこの「無駄合」を拒否した作り方になっているものが多い。また32歩を作意手順上に出現させ、同銀生11玉12歩同玉23銀生とその1歩を消費する伊藤正作「メタ奔馬」タイプも何作も出現している。

☆本作は規約上問題ないにも関わらず、32歩移動合が馬鋸特有「無駄合」の釈然としない感覚を呼び覚ますことになってしまった。

須川卓二 「むやみに遠回りさせやがって!っと怒りの馬の声が聞こえそう 
永島勝利 32歩のところ、32飛同馬同歩41飛が角合限定になるので一瞬はまりかかったが、考えすぎで、実は片道の馬鋸2回でした。
坂東仁市 32歩合が16回可能なのでスッキリしませんが。32歩合同銀生の馬鋸大作発表されているので今更の感有り
林八江子 案外素直に解けました。
今川健一 王方の角の利き筋を平気の平左で、馬が行く。二度の馬鋸、簡単に解けて気分良し。6月末には宝塚記念のレ-スあり。この勢いで馬券を買おう。
加賀孝志 解いて楽しい作、馬鋸も角の効き筋に捨てるのはめづらしい。詰上がりもスッキリ小駒のみ。難易だけではありません。
中沢照夫 軽いオープニングのはずですが解けません。一回馬鋸をしたあと33馬から11馬捨てで収束にはいると思われますが盲点があるのか解けません。遠ざかる馬鋸なので歩合がなくなるまで馬鋸を繰り返せば詰めることは出来ますがルール上はこれはダメなのでしょう。
宮本慎一 最後は桂香の両王手でチェックメイト。馬鋸2回!
竹中健一 作意がこれで良いのかちょっと自信ありません…
鈴木 彊 守備側の角で馬を取らずに泳がせるところは実に面白い趣向でした。楽しめました。
武田静山 歩が無くなると詰むがムダ合。収束をあれこれ探してしまいました。
弘光弘 歩の移動合で2度目の馬鋸が現れる。

「長編詰将棋の世界(11) 」への2件のフィードバック

  1. 真面目な話、このレベルの解答者で“復元型無駄合”についてご存知ない人なんているのでしょうか。
    戸惑いを示されている短評について、《復元型無駄合反対派》による“お芝居”なのでは? と私は疑ってしまいます。

  2. 本来「無駄」な合駒なんてものは存在しないのですが、作者が「これは無駄合」と主張したものは馬鋸に限らず龍鋸でも「古時計」でも発表は認めるべきと考えます。
    ただ個別の作品についてスッキリ感じたりモヤモヤ感じたりすることになり、それは評価にも反映するでしょう。
    本作に関しては「ちょっと都合がいい」感があったので「やさ院」での登場になりました。

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