高木秀次『千早城』に登る(13)


※この連載は風みどりが1題ずつ高木秀次作品集『千早城』(1993)を読んでいくものです。

第13番  不明

いきなり飛車を取れという凄い初形。
しかも馬で取っても、龍で取っても同ととは取り返すことはできない。
これはどうやっても詰みそうだが……。

普通は馬で取りに行きたいところだ。
だから作意は龍のような気がするが。
ゴーストの囁くところにしたがって馬で行ってみる。

86馬、74玉、

86同とは75飛までの1手詰。

77龍、83玉、73飛、

アレ?簡単に詰む。

   同金、75桂、74玉、66桂まで9手詰。

おかしいな。あ75桂と跳ねさせないために75に中合か。

77龍、75歩、同馬、83玉、74馬、同角、
同龍、同玉、75飛、83玉、94角まで

いやこれ詰むね。早詰だ。攻方がなにしろ強力すぎる。

冒頭に「不明」と書いてあるのは初出が不明な作品だ。T-Baseで検索しても見つからなかった。
よくみたら179ページに初出がまとめてあるのに先程気づいた。
1番、4番、12番、17番、……などは書いてある。
ということはここに書いていない13番から16番などは未発表作品ということのようだ。
柿木将棋もなく、強力な検討者に恵まれない限り、余詰多発も仕方のないことなのかもしれない。

今日はまだ時間があるので作意を見つける努力をもう少ししてみよう。

ちょっと配置から77龍ではなく75飛と打つ筋が面白そうに感じた。

86馬、74玉、75飛、83玉、94銀、同玉、
96龍、83玉、

86桂と打ちたいのに86馬がいるから、これを捨てる順になるのではないだろうか。

94龍、同玉、95馬、83玉、94馬、同玉、
86桂、83玉、

これで収束が見えてきた。

73飛成、同玉、74歩、83玉、75桂まで

こうなるはずだ。しかし、74歩に同角で不詰。
この形で73飛成が作意でないはずがない。
56角をどうやって処分するかが作者の仕掛けた謎だろう。

初手は予想通り龍から行くのだろうか。

86龍、74玉、

86龍も同とは75飛がある。

75飛、83玉、94銀、同玉、96龍、83玉、
94龍、同玉、86桂、83玉、

なるほど初手は龍から行った方が馬を捨てる必要がないから断然有利だ。
そしてこの余っている馬・働いていない55金・53歩の配置から作意が見えてきたようだ。

思い出したのはが詰将棋解答選手権で解いた上田吉一作品。名局精解4を参照されたい。

55金は今迄の手順で何の役にも立っていない。使うとしたら65金と捨てるしかなかろう。
53歩は65金に同玉のとき、75龍、54玉、44飛までで詰ますためでは?同歩で64玉に55馬までという変化もあるかもしれない。
そして77馬を活用するには94玉のときに76馬と王手する以外になさそうだ。

それでは65金と捨てるチャンスは?……3手目しかない。

86龍、74玉、65金、

同歩では角筋が止まるし同角だろう。

   同角、75飛、83玉、94銀、同玉、
76馬、

83玉と躱されたときに角を質にしておく65金だったわけだ。
76馬のタイミングは94龍、同玉の後にもあるが、龍を消した後では85合駒の場合に96龍と上部脱出を防げないから76馬とするとしたら9手目だ。合駒の変化は省略。(基本は96龍~86桂~65馬だが銀合・金合があるのでちと複雑)
同角とさせて、あとは想定した手順に入れる。

  同角、96龍、83玉、94龍、同玉、
86桂、83玉、73飛成、同玉、74歩、83玉、
75桂まで21手詰。

いや流石は高木秀次という作意手順だ。

修正はできないのかどうか、少し考えてみたがなかなか手強い。

まず最初に見つけた86馬~77龍~73飛の筋がなかなか強力だ。66桂を打てないようにしても96馬から86桂がある。

そして86馬、74玉、96馬という筋もあり、これもなかなか作意・変化とかぶる所なので切り分けが難しい。なにしろ狭い所で攻方の駒が強力なのだ。

初手を省いては駄目ですかねぇ。
《それでは77馬の使い道がそれこそ76馬しかなくなってしまう》

初手を省いても86龍~75飛~84銀という余詰もあるんですけどねぇ。
ちょっと無理な作意なのではないですか。
《無理な手順を成立させるのが創作の面白さなのじゃないのかい》

ウウム。暑いせいかなんだか幻聴が聞こえるような気がする。
どなたか名修正を待つ。

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