詰将棋入門(214) もう1マス遠くの歩の頭に角を

小西逸生『青玉』第38番 詰パラ1965.10

9手詰なので考えてみてください。

34は14飛がデンと守っているので41銀に働きかける感じか。
52角と捨てて同銀に42飛か、逆に42飛と捨てて同銀に52角の二択。
これは9手詰とヒントを出している以上42飛と捨てるとわかる。

42飛、

なぜなら先に角を捨てる場合は61角と間駒を請求する手がある。同角成、同銀で残り5手なのに持駒が4枚では数が合わない。

   同銀、

これは易しい5手詰だ。
34銀、同飛と質駒を呼んでおいて52角でよい。
ということは初手42飛には

   33玉、

【失敗図】

あっさり躱されて、もう24から25への脱出が阻めないことが明らかだ。
14飛の守りが固い。
この形は15角と線駒のラインを交叉させて34への14飛の利きを消すのが常套手段なのだが、15角と打つためには15歩が邪魔だ。

と、いうことで初手が閃いたのではないだろうか。

16角、

これは「作意だ!」とゴーストが囁く。

   同歩、42飛、33玉、15角、

歩を退けておいて15角。これが作意でなくてどんな作意があるというのか。

   同飛、43飛成、

そして仕上げは捨駒で打った42飛をもう一度捨てる。

34銀まで9手詰

さて今回は解くのはあっさり解決したが、もう少し変化・紛れを調べて、作者の苦心に思いを馳せよう。

初手16角を成立させるためには25角では詰まないようにする必要がある。

   25角、

これは間駒でも詰まないが、33玉と逃走を図るのが簡明だ。

   33玉、43飛、24玉、

次に角を喰われるのが避けられない。
これが16角だったら……

44飛成、

44飛成で1手詰だ。
つまり16角は25に利きを作るという点で25角とは差別化されているわけだ。

つぎに間駒の変化を考えよう。
25角は34桂合でも実は詰まない。
16角だとなぜ詰むのか。

(16角に)34桂、

実はこの変化で46との配置の意味が分る。

42飛、33玉、22角、24玉、25銀、35玉、
44角成まで

【変化図】

42飛に同銀は52角、33玉、22銀打、24玉、34角成までだ。

この詰上図、34の間駒が金だったら同金とされそうだ。

(2手目)34金、

この場合は

42飛、33玉、34歩、同飛、22角、24玉、
25金まで

【変化図】

作家は当然ながら玉方がどう変化しても詰むようにつくらなければいけない。
そして9手詰だったら9手以内に!(これが大変)

最後に中合の変化を確認しよう。
25角が詰まないのなら、25に中間をして近付ける受け手が存在する。

(2手目)25桂、

この変化はちと考える。
いままで通用してきた42飛ではないからだ。

52銀、同銀、42飛、33玉、22角、24玉、
44飛成まで

【変化図】

ぴったり9手駒余り。
25の中合が銀だったどうだろう。
52銀、33玉、22角、24玉、34飛に同銀で詰まないのではないか。

……銀合は品切れでできないのでした。

作家がいつも苦労する変化と紛れの切り分けについて少しは理解いただけただろうか。

ところで、この図をヒントに銀の中合を作意に作る人はいないかな?

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