詰将棋入門(230) 実戦型から間駒6回

若島正『盤上のファンタジア』第93番 近将1980.2

発表時には「蛇」とタイトルが付いていた。『恋唄』第90番所載時にも付いているが『ファンタジア』では「わざわざ命名するほどの作品でもない」とはずされた。
ジュール・ルナールの『博物誌』が一般常識でなくなってきたというのが真の理由だろう。


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長めの中編なので、どんどん作意を並べていこう。

32歩、同玉、22飛とできれば詰みそうだ。

32歩、41玉、42飛、同玉、31角、

32歩に同玉は22飛、33玉、42角、34玉、24角成以下簡単。
41玉の躱しに31飛でなく、42飛と捨てるのが軽い攻め。31飛では次の31角が打てない。

   32玉、22歩成、43玉、44飛、33玉、

33玉なら22角成、42玉、44飛、43銀、同飛成、同玉、44馬以下手数はかかるが難しくはない。
32玉にと金を作り、飛車を置く。
ここで自然に42角成、22玉、24飛と攻めると23歩合で詰まない。

32と、同玉、42飛成、23玉、22龍、34玉、
24龍、43玉、44龍、32玉、

小さく一回転して44飛を44龍にすり替えてしまうのが楽しいところ。
これでいよいよ角が成れる。

42角成、22玉、24龍、23金、

最初の間駒は金。
歩合だと44角、33歩、同角成、同桂、同龍、13玉、31馬以下。

【変化図】

33同龍とされないために、横利きが必要なのだ。
かといって飛車合だと強すぎて23同龍、同玉、24飛、13玉、21飛成まで。
金合でも龍をばっさり切り落とす。

(23)同龍、同玉、24金、22玉、44角、33桂打、

二つ目の間駒は桂。
これは明らかに揮発性。
強い駒なら同角成と切って23から打てる。
歩合でも同角成、同桂、23歩、21玉、11香成、

【変化図】

頭に利く駒はダメなのだ。角は品切れなので桂馬に決定。

(33)同金、13玉、35角、24飛、

桂合は同金と角を残す。
同桂ならば同角成と2枚馬で攻めて持駒桂2だから簡単。
33桂打はいわば捨合で同金に13玉と戻る。金は24に戻れない。

三つ目の間駒は飛車。
これは有名な形。他合なら31馬から22馬で詰む。

23金、同玉、24馬、12玉、42飛、22飛、

24馬と飛車を入手でもう終わりかと思いきや、まだまだ簡単ではない。
22玉には44角、33桂打、同角成、同桂、23飛、31玉、33飛成、32金、23桂、41玉、32龍以下とこの変化にも間駒が2回登場する。

12玉と角に逃げ、42飛にまた間駒。
四つ目の間駒はまた飛車。

32飛ではなく42飛なのがポイント。
歩合ならば13馬、同桂、24桂、23玉、32飛成

【変化図】

32への利きが必要。では金合ならば……
(22)同飛成、同玉、23金、31玉、53角成、

【変化図】

以下、(53)同銀、43桂、41玉、51馬までだ。
かくして22飛合に決まるのだが、この飛合がなかなかしぶとい。

13馬、同桂、24桂、23玉、22飛成、

これを同玉ととってくれれば再度の42飛でピッタリなのだが

   34玉、

【失敗図】

34から26へ脱出される。

さりとて金合と同様に攻めると

(22)同飛成、同玉、23飛、31玉、

【失敗図】

32に利きがないので角を切っても見込みはない。

正解は……

34馬、23銀、

13ではなく34に捨てる。逃げ道を塞いでしまう狙いだ。
代わりに13が開いているが心配ご無用。

同銀なら24桂、13玉、22飛成、同玉、42飛、23玉、32飛成、13玉、12桂成まで

【変化図】

13玉には必殺の両王手という手段が残っているのだ。

かくして五つ目の間駒は銀。
これはわかりやすい。作意を追えばすぐに解る。

24桂、13玉、22飛成、同玉、42飛、31玉、

銀以外の間駒ならばあと1手で詰んでしまう。角は品切れだ。

さてここから最後のクライマックス。

32飛成、同銀、53角成、

飛車を捨てて角を切る。同銀ならば……32桂成、同玉、24桂、

【変化図】

まだ手持ちに銀があるので何処に逃げても簡単な詰み。
そこで最後の間駒が登場する。

   42飛、

六つ目の間駒は飛車。
上の【変化図】から22玉に23銀、13玉、12桂成、同香、同銀成を同飛と取ろうという企てだ。

そうだ金合の変化も述べておこう。

   42金、32桂成、同玉、24桂、41玉、
23馬、

【変化図】

以下、32間駒に同桂成、同金、42銀まで。
この変化『恋唄』では正しく記述されているのに、『ファンタジア』では同桂成が同馬に誤植されている。(第2版も)
お持ちの方は訂正を。

さて作意は次のように終わる。

32桂成、同玉、24桂、22玉、23銀、13玉、
12桂成、同香、35馬左まで61手詰

手数を数えてみれば61手。
飽きさせない展開なのでこんなに手数がかかったとは感じなかったのではなかろうか。
詰上がりがちょっと重いが、2枚の馬とも一度は捨てた駒なので嫌みは無い。

「詰将棋入門(230) 実戦型から間駒6回」への4件のフィードバック

  1. マジスカ。昨日、医者から帰って眠い眠いと思いながら書いて、うPしたらすぐ寝ましたが……。
    今から見直します。ごめんなさい。


    直しました。
    最初の方が駄目駄目でしたね。

  2. まだお疲れのようで、、、
    「(23)同龍、同玉、24金、22玉、44角、23桂打、」ですが、「23桂打」は「33桂打」では。
    「以下、43桂、41玉、51馬までだ。」は、「以下、」の次に「(53)同銀、」が必要では。

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