長編詰将棋の世界(39) 龍の孤軍奮闘

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

選題の言葉(2011.6)(抄)

菅野哲郎さんから「やさ院」向けに投稿くださった北欧神話シリーズを出題します。
こちらは普通に手順を解答してください。
かわりに手数をヒントに。51手です。

菅野哲郎「ジークフリート」 詰パラ2011.6


13飛、14角、同飛成、26玉、23龍、17玉、
12龍、26玉、23龍、16玉、14龍、26玉、
18桂、35玉、26角、45玉、25龍、35香、
同龍、54玉、34龍、44香、同龍、63玉、
43龍、53歩、同龍、72玉、52龍、62歩、
同龍、81玉、61龍、92玉、93歩、同玉、
91龍、84玉、86香、95玉、94龍、86玉、
95銀、76玉、85龍、67玉、68歩、同玉、
59金、67玉、68香迄51手詰

☆初形盤面に玉方の駒しかない、つまり攻方の駒が1枚もない図を無仕掛図式という。また初形盤面に攻方の駒が1枚しかない図を単騎図式という。持駒はなしだ。

☆本作はこの2つの条件の融合というべき、無仕掛単騎図式。この条件での持駒は飛角桂香のいずれかになるが、そのうちの飛と角の組曲というわけだ。

☆単に条件が同じと言うだけではなく、手順内容もセットになっている。

☆ジークフリートは龍の孤軍奮闘の物語。

☆序盤は角と桂を奪い、ひたすらかわすだけの玉を右辺から追い出す。14角と「やけくそ中合」するのがモチーフの暗示になっている。

☆26角と配置して45玉に25龍としてからが本作の主眼部分だ。結局は逃げるしかないのだが、どうせ手順にとられるのなら手間をかけようというやけくそ捨合が成立する。35香、44香、53歩、62歩と同じ理屈で2手ずつ延命するので、結果として龍の斜め鋸引きが盤上に描かれる。

☆この軌跡、飛車では看寿が実現しているが、龍でこの動きを実現するのは非常に珍しい。53や62の捨合を角で取ってはいけないのは手順を並べて頂ければわかる。59への角の利きを残しておきたいのだ。

作者 この条件では墨江氏作が有名ですが、重厚路線では勝負にならないので(笑)、易しくわかりやすい構成で作ってみました。
なお「ジークフリート」というのは北欧伝説にでてくる人物で、「竜を退治し、その血を浴びてほとんど不死身になるが、体のある一箇所、血がかかっていなかった所を投げ槍で射られて倒される」というストーリーからの連想でつけました。

原雅彦 15手で一度終わっている。
小林徹 43手目95銀の所87歩が成立すると思ったのですが、逃れていますね。
加賀孝志 合駒が限定されているので攻めやすい。一手一手捨て合いしながら逃げる。全駒使用だが一寸苦しい配置。
佐藤司 延命策を講じなければ33手詰。手数表示がなければこの手数にしていました。
小林直義 角のサンダーがモノを言う。
宮本慎一 玉は67で詰む。
凡骨生 玉は合い無い最後へ向かう。
河村謙吾 こちらは序の手数伸ばしに気付いたらあとはスラスラ解けました。
永島勝利 序の逃げ方が少しややこしいので、手数表示は大きなヒントでした。
原田清実 序盤の応手にちょっと悩みましたが、角が打てれば後はスラスラ。途中のヤケクソ捨て合いがいいアクセントです。
中瀬俊昭 筋に入るまでの、出だしの所の変化がかなりややこしい。
加藤清隆 手数伸ばしの為の移動合が何カ所か出てくるが、特に難しくはなく、装飾的な意味合いが強い。
花井秀隆 手数のヒントがないと間違えていました。
中沢照夫 手数表示がなければ2手目で間違える所。巧みな龍追い、易しい収束。
岡橋憲司 手数を頼りに数えてみれば51手。
水谷一 ヒントがあったので手数延ばしの捨て合いに気付きました。
鈴木彊 龍の追い回し26角で形が見えてきました。素晴らしいです。
池田俊哉 わざわざ12桂を取らせるのは不利逃避の感触(ジーク不利ートだけに…)。やけくそ移動合の連続も楽しい
名越健将 英雄ジークフリート。手数がわかっていないと苦労するかもしれない。
須川卓二 延命の手段を講じて逃げる玉がユーモラス。序も逃げ方が間違えやすい感じ。
竹中健一 最初の逃げ方で手数を伸ばすために試行錯誤…ようやく14角を発見…(笑)これなら大学院を遠慮している人でも解けそうですね。ナイス選題!!
長谷川琴 初手13飛に対しての、14角を見落とす所でした。
今川健一 無仕掛けから、いろいろな趣向が飛び出して来る。収束はアッケないが、それもまた良し。この暑さ、難しい作品はお断り。
占魚亭 竜鋸入門にぴったりの、楽しい軽快作。

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