プロ棋士の(引退されても過去形にしなくてよいんだよね)伊藤果八段の詰将棋作品集。
プロ棋士の本だったらamazonで買えるのではないかと考えられるかも知れない。
でも、伊藤八段にはamazonでは買えない詰将棋の著作が2冊ある。
1冊は野口文庫の「残影」1976.3.10。
そしてもう1冊がこの「詰のオルゴール」将棋天国社 1996.7.1だ。
自序より引用する。
ぼくの作品が初めて”本”という形になったのは、25歳になって半年後の『残影』でした。
あのときの感動と悦びは今でも忘れていません。
あれからちょうど20年の歳月が流れ、ぼくの頭髪も黒から白への転換期が訪れている45歳になりました。
そんな折り、遅ればせながら七段へ……。実は、2年前から心に秘めていた想いが一つありました。
もし、昇段ができたら、将棋天国社(中戸俊洋社長)から作品集を出したいと。
そして作品の選題・解説と編集は森田銀杏さんにと。
そう、この本はプロ棋士の本としてはかなり特異な本と言える。
作品を提供しているのは伊藤果だが、解説は森田正司さんなのだ。
既に森田さんについては知らない方もいるかもしれない。
いずれ「詰将棋入門」に登場してくるのは必至だからそれまで待つべし。
アマチュア(ここでは指将棋のという意味)の作品集にプロ棋士の監修とか推薦とか名前をつけて本を作る例は最近よく見るが、プロ(ここでは指将棋のという意味)の作品にアマチュアが解説をつけているわけだ。
森田さんが作っただけあって、とても丁寧ないい本になっている。
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「詰のオルゴール」100局
「残影」より10局
他に読み物として
「詰将棋コーヒータイム」でいろいろな作家の傑作を16局紹介
「ぼくの好きな短編作品」で28局紹介
昇段祝賀曲詰4局(有名な若島正の「イ」はこの中の1局)
さて、1局だけ紹介しよう。
伊藤果 詰のオルゴール第96番 近代将棋1995.10
2手目33歩合は
同飛成、21玉、23龍、31玉、33龍、32金、13角成、同香、23桂、21玉、22歩、同金、31桂成、11玉、23桂、同金、21成桂以下。
初級問題から上級問題までそろっていて、森田さんの解説も丁寧(懐かしくなって泣けますよ)なので、どなたにもお薦めです。
読み物も楽しい。
つみき書店で購入できます。
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