北川明 詰パラ 1958.4
裸玉は飛車や角で手掛かりをつけるのが常識であった。
持駒が小駒だけで広い盤面を逃げ回る玉を捕えることができるわけがない。
北川明はその「常識」を疑い,そして覆した。
入玉型で持駒に桂を持たせて手掛かりをつけることができる。
解答を提出されてみれば,なんと当たり前な答のように見える。
しかし,北川明以前は誰もその簡単なことに気づかなかったのだ。
29桂
さて,どこに逃げるのが最長か。
26,27,28は37金/銀と打たれるので16,18が有力候補だ。
まずは一番広い方へ素直に逃げる26玉を調べていこう。
金は2枚しかないので二段目,三段目に使うと仮定しよう。
それなら最初は銀で追うしかない。
銀の脇からまた上部に戻られてはいけないので,斜めに連打することになる。
途中で変化する可能性もあるが,めいっぱい広い方向に逃げたこの曲面で詳しく調べていく。
53玉と逃げたら,これは簡単。
今度は54銀打と頭からかぶせられる。
あとは金2枚を頭から打って詰みだ。
43玉なら,これも44銀打と頭から打てる。34玉とすり抜けても,35銀上で銀が再活用できるので簡単だ。
それでは銀が使えないように34玉と寄ったら?
今度は35香が使える。
右辺が2筋しかないので金金銀香で捕まることが確認できるはずだ。
33玉と銀から離れるのが有力だ。
これには44銀打,23玉,33金,14玉,15香で次図
同玉なら16香,同玉,26金まで
24玉と躱すのが最長だが,35銀上,15玉,26銀上,16玉,17金まで19手香余り
44銀打に23玉でなく22玉と下がる変化も上の図の14玉が13玉に替わるだけで同様の詰みだ。
結局作意は16玉とわかる。
作意を最初から
29桂、16玉、
ここで唯一の妙手が出る。
27銀、
17銀からでは25玉に26銀打,36玉とすり抜けられてしまう。
27銀に対し,25玉は36銀打以下先に調べた変化より一路狭いのでより易しい。
なお2手目18玉と逃げても27銀となる。
どう逃げても金金銀で詰むので,同玉だ。
つまり2手目は非限定ということになる。
同玉、37金、
逃げ方は3つあるが持駒の金を使い果たさせてしまう28玉が正解。
28玉、38金打、29玉、
28銀と打ちたいので,19玉の形にする方針で攻める。
18銀,同玉,19香と2枚使って19玉にできないか。
18銀、同玉、19香、29玉、18銀、19玉、
結局3枚使うが19玉の形にすることに成功する。
あとは終局迄一直線だ。
28銀、18玉、19香、29玉、39金 まで19手詰
広い方に逃げることにならず,入玉形のまま終わるのも意外だ。
なお本作は発表時は持駒「金2銀4桂歩2」だったため不詰だった。
図は作者により1959.12に発表された修正図である。
さて北川明に興味を持たれた方は…と書きかけて作品集がないことに驚いた。(あったっけ?)
創棋会の重鎮たちは全員個人作品集もあるような印象だったが,そうでもないようだ。
そういえば創棋会作品集に北川明は「私は発表数が少ない」と書いていた記憶がある。
T-Baseで検索すると400作はあるのだけれど……。
自分で満足できる発表作が少ないということだろうか。
そういえば本図も創棋会作品集には収録されていなかったかもしれない。