このブログを読みに来てくださる方は恐らく将棋というゲームを遊んだことがあるに違いないだろう。将棋を指すということは二人でその時間を共有して楽しむところに本質がある。その記録として棋譜というものを残すことができるが、それは遊びの残骸に過ぎない。そこから二人が何を考え何が起こったのかを読取ることは至難である。
遊んだことはないが茶という遊びもある。主人がどんな趣向を凝らしたか、客はそれを読み取ることができたか。主人と客が共有した時間と空間がその遊びの本質である。記録に残すとしたら「お茶を飲んだ」というだけ。「王手の連続で相手の玉を詰ました」となる詰将棋とどことなく似ている。
歌仙という遊びをご存知だろうか。筆者は一度だけ参加したことがあるのだが、文学的才能がないので四苦八苦だった。発句の五七五に対して次の人が七七をつける。また次の人が五七五をつなげるという連歌の一種で、松尾芭蕉が完成させ流行させた遊びだ。これも完成品は記録に残る。しかし実際にはリーダーが直しを要求したり自ら直したりという作業をするし、参加者が頭を捻り苦心惨憺するその時間と空間が遊びの本質なのだ。巻かれて完成した歌仙は将棋の棋譜と同じ、遊びの熱や興奮を伝えるものではあっても、遊びの目的ではない。
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『雨滴 小川悦勇詰将棋作品集』出来しました!
232ページの読み応え充分の1冊です。ぜひお求めください。
原著を市島さんの所や安武利太さんの所からダウンロードできるのに、なぜ買うべきなのか?
それは色々理由があります。
- 印刷して製本するって結構面倒。タブレットで読むのに慣れている若者はいいかもしれませんけどね。
- 読みやすくリライトしてある。もちろん小川さんの了承を得ています。最終確認はしていただけませんでしたが……。
- 代表作が何作か改良図に差し替わっている。マニアならこれは見落とせないはずです。
- さらに原著発行以降の発表作20作を補遺として収録してある。
- 最新版「私のベスト10」など豊富な参考資料がついている。
- 原著にはない作品解説がついている。作意だけあれば全部分かるという方には不要ですが。
でも若い方には「小川悦勇」って誰? という方もいらっしゃるかもしれません。
それは次のエントリーで。

