伊藤看寿 『将棋図巧』第36番 1755.3
現代ルールで割り切れている13手の短篇。
26飛が邪魔駒で、この駒がいなければ26金までの1手詰だ。
しかし25飛では同金と取られて詰まない。
25金、同角、36銀、
そこで、25金、同角、36飛としたいが同とと取られて困る。
先に45銀を消去しないと26飛が消去できない仕組みなのだ。
同角、25金、同角、36飛、
もう一度、角をどかせて、そこに飛車を捨てる。
この「獲れる駒を移動させて、そこに捨てる」のが看寿が多用する演出。
最近はこの演出をウムノフというらしい。
同銀成、47桂、
最後の47桂も47銀が移動した直後なのでウムノフだ。
同成銀、26金、34玉、33角成 まで13手詰
本局は今風の用語を使うと「ウムノフ3連発をコンパクトに表現した」となるのだろう。
ウムノフでは解りにくいから日本語でうまい表現ないものかな。
本局は残念ながら余詰がある。
門脇芳雄『詰むや詰まざるや』には記載されていなかったので完全作だと思っていたが、柿木将棋が教えてくれた。
谷川浩司『将棋図巧』はどうなっているかとみてみたら、「変化」の中に記述されていた。
(変化という用語の使い方が古い!)
3手目より
25同飛、同金、17角、26歩、47桂、同と、36金、同金、26角引、同金、36金、24玉、13銀打、14玉、15歩、同玉、26金、14玉、15金打、23玉、33歩成まで23手詰
修正は17歩でも置けば簡単。だがもっといい案もありそうだ。
(追記:2020.10.21)
おかもとさんから駒場和男の補正案を教えていただいた。
出典は柿木将棋付録の棋譜ファイル!(ということはないでしょうが……)
これ12手目作意は34玉なのだが、44玉になってしまうなと『象棋図式解』を見てみたら、その頁はスキャンし忘れたみたいで抜けていた。
門脇本も谷川本も34玉なのだが……。
柿木将棋の付録では補正図に合わせたわけでもないでしょうが、12手目は44玉になっていました。
(追記:2020.10.23)
>ウムノフでは解りにくいから日本語でうまい表現ないものかな。
と書いたが、若島正氏が「夢想の研究」という論考で次のように書いていた。
詰将棋でもこの手筋を「ウムノフ」と呼ぶことには抵抗があるし、第一おぼえにくい名前なので、いかにも芸の無い直接的な名称で気が引けるが、これからは「取らず手筋」と呼ぶことにする。
そういえば、「用語」のときも取らず手筋のときに「ウムノフと同じ」というtweetがあったっけ。
成らずの駄洒落で取らずだったのか。
実は筆者は18飛合をさせておいて、それをとらない28飛を「取らず手筋」と思っていたのであった。
取らず手筋とウムノフどちらがよく使われているのだろうか。
Tweet
柿木将棋をインストールすると一緒についてくる「将棋図巧」36番のkifファイルには、次のように書かれていました。
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※余詰と補正図
余詰=3手目、2五飛、同金、1七角、2六歩合、4七桂、同と、2六角引、4六玉、3五角、同金、同角、同玉、3六金、2四玉、2五金打、2三玉、1三金まで(この余詰はコンピュータで発見されたもの)
補正図=玉方3七歩を玉方3七桂に変えて、攻方3四歩を玉方3四歩にする。
(駒場和男氏案)
情報ありがとうございます。
柿木将棋の付録……どこかにあるかなぁ。
あとで図面を作って追記しておきます。
柿木将棋9だと、C:\Program Files (x86)\Kakinoki\KShogi9\詰将棋\将棋図巧 にインストールされているはずです。