ジャッジ:小林敏樹
課題:1筋に飛車を2連続で捨てる詰将棋を創ってください。
(捨てる飛車は持駒でも置駒でも飛車でも龍でも不問)
5手詰から23手詰まで、全7作の投稿がありました。今回の課題は、できることが限られてしまいそうで、意外と取り組みにくいものだったと思います。
それでも「とにかく作ってみる」ことが何より大切です。実際に作って投稿していただいた皆様には、作ることを楽しんでいただけたでしょうか?
優秀作
【第7問】あとれい
10手目の局面(【途中図】)から、飛2枚と角桂歩を使って、15銀を成銀に変換する手順が鮮やか。飛の連続捨てが、銀→成銀の変換とぴったり呼応しているのが特に良い味です。
ここからの13手で一応できていますが、作者はさらに逆算をして、将来捨てる2枚飛が盤面で意味を持つ局面まで手を延ばしました。
逆算をどこで切り上げるかは常に難しい問題ですが、本作の場合、9手目の33と以外に前半の見せ場がないので、やや流れた感じの仕上がりになってしまったかもしれません。
飛捨てに創意が感じられたのは本作だけで、優秀作。
佳作
該当なし
その他の投稿作への選評を以下に。
【第1問】634634634
前からの飛捨て2回。23歩が41角に縛られて動けない詰上がり(ピンメイト)が狙いでしょうか。
ただ、33馬にすれば、23歩と41角を盤面から省いても、そのまま作意が成立してしまうのが残念。
【参考図】
【第2問】みつかず
前後に飛を捨てるパターン。
初手はひもなしで作りたいところで、実際に15銀→玉方歩、45角→馬にすればできているようです(その場合21桂は不要)。
【参考図】
【第3問】駒井めい
1枚目の飛は開き王手して取らせる。このパターンがあることは、ちょっとうっかりしそうです。
【第4問】松田圭市
打歩詰を打開するために、龍・飛を捨てる。先に遠い方の龍を捨てなくてはならないのがポイント。
【第5問】小沢卓也
24金の駒交換から入るのが意表を突きます。その後は角のラインに挟まった飛2枚を捨てる手順。
駒交換ではなく、24飛と打つ手順にできないかと考えるのが次のステップですが、実際にこの構図のままでできているようです。
【参考図】
【第6問】小沢卓也
大駒3枚捨てを実現しているのですが、ちょっと印象が弱いです。最後が3手収束になってしまうからでしょうか。
選評は以上ですが、せっかくの機会なので、このような課題に取り組む際のポイントをいくつか挙げてみましょう。
1)最も簡潔な形で課題を実現させてみる
→最小限の配置で狙いを実現させるよう、工夫を重ねます。
2)色々なパターンを試してみる
→あれこれと苦心していじっているうちに、別の新たなアイデアを思いつくこともあるので、決して無駄にはなりません。
3)発想を飛躍させて、面白そうな手順を夢想する
→思いついた手順をいかに実現させるかが、次の課題になります。
風みどりさんが過去の既発表作を検索し、今回の課題を満たす作例を約60作抽出してくれました。その中から模範例を何作か紹介します。
藤井国夫 将棋マガジン 1979.3
前からの飛捨て2回を盤面4枚で実現。守りの桂配置がうまい。
近藤善太郎 詰パラ 1957.7
こちらは後ろから捨てるパターン。13同香の変化が入るのが良い味です。
松田圭市『すなどけい』第11番 詰パラ2005.5
アイデアとして面白いなと思ったのが本作。香ではなく飛を捨てるという意味付け(飛先飛香)での表現です。
今回の課題では発想をふくらませる余地はあまりありませんが、それでもいくつかの追加課題を思いつくことはできます。例えば……。
創作課題1+1 2回目の飛捨てで玉を元の位置に戻す(5手)
(例:15玉に対して、14飛、同玉、15飛、同玉、〇〇迄。玉位置は15でなくても可)
創作課題1+2 11玉に対して19飛(龍)捨てを入れる(5手)
創作課題1+3 25玉に対して、14龍、同〇、16龍、同〇、〇〇迄。
(龍捨ての順番、玉位置は変更可)
創作課題1+4 連続で捨てる飛の1枚を序で盤面に打っておく(7手)
今回の投稿作#5の参考図がこのパターンを実現しています。
創作課題1+5 連続で捨てる飛を2枚とも序で盤面に打っておく(9手)
これは少し難度が高いかもしれません。
実際に風みどりさんと私で+1~+5の追加課題に取り組んでみましたが、なかなか楽しめました。
「面白そう」と思った方は、作図の練習としてぜひチャレンジしてみてください。
作品ができたらkazemidori+kadai@gmail.comあてに送ってください。数が集まれば、新しいエントリーとして紹介したいと思います。
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