柏川悦夫 『駒と人生』第59番 詰棋界 1955.6
桂香図式よりも本当に実戦に現れるのではないかと思わせる初形。後手が43角と打ったばかりの局面に見える。(54角と打てば良かったのに……?)
63に金・銀どちらを打ちますかと訊いている。
常識的には金を残して63銀だろう。
63銀、51玉、
21龍で41金はピンされているので、52金までの詰み……とはいかない。43角が睨んでいる。
この局面、意外に詰まない。
62銀打としても62金としても42玉でしぶといのだ。
それでは初手は金だったのか?
(初手より)
63金、71玉、
止めの金を手放しているのだから、これも逃げられる。
72銀、82玉、83銀打、93玉……銀では最後の最後が頼りないのだ。
しかし、63銀でも63金でも駄目?
二択ならばやはり銀が有望だろう。
【再掲図】
先程、62銀打も62金も駄目と書いたが、実はここで妙手がある。
62銀不成、
打ったばかりの銀を不成で捨てる。
42玉なら51銀打、同金、同銀不成と取るためだ。
同玉、63金、71玉、
同玉に今度は63金と打つ以外に手はない。
63金に51玉ともどれば、62銀、42玉、53金までとウソのように簡単に詰む。
そこで71玉だが
先程の図と比べてみて、冒頭の4手の意味が分かる。
51とが邪魔駒だったというわけだ。
41龍、82玉、81龍、同玉、
さてここからは暗記してもOK、11手1組の収束手順。
72銀、91玉、92歩、同玉、83金、91玉、81銀成、同玉、72金右、91玉、82金まで21手詰。
初手に打った銀を直後に不成で捨てて金に打替える。
こんな不思議な手順を自然な配置でさらっと表現するこのセンスに痺れる。
「詰将棋半世紀」で感心した作のひとつです。
こういう作品、今も中々見ることができませんが、
柏川さんの名人芸だったのでしょうね。