黒川一郎「矢来」『将棋浪曼集』第89番 近代将棋 1970.7
矢来とは竹や丸太で荒く組んだ仮の垣のことだそうだ。
歩を連打していく。
第1趣向。
23香成、同玉、24歩、33玉、34歩、43玉、44歩、53玉、
54歩、63玉、64歩、73玉、74歩、83玉、84歩、93玉、
歩が切れたので龍で王手。
強い合駒だと切って92飛成で早い。
ここからメインの趣向がはじまる
95龍、94歩、
歩が成って玉を動かし、また歩の間駒をさせる。
83歩成、同玉、85龍、84歩、
みるみるうちに歩の矢来が組まれていく。
73歩成、同玉、75龍、74歩、
63歩成、同玉、65龍、64歩、
53歩成、同玉、55龍、54歩、
43歩成、同玉、45龍、44歩、
33歩成、同玉、35龍、34歩、
23歩成、同玉、25龍、24歩、
23歩成に43玉と逃げたら、34龍、53玉、33龍、43合、42飛成、63玉、43龍まで。
それ以前に逃げてもほぼ同様の変化で詰む。
同龍、同玉、22飛成、23飛、
ここからは収束。矢来を組んで玉の逃げ道を塞いだ意味を確認しながら進めよう。
16桂、14玉、25成桂、同飛、同龍、同玉、
23飛、36玉、
つまり攻方は歩合をさせないで手順を進めることも可能だということだ。
もし94歩~34歩に不要なモノが混じっていたら余詰ということになる。
27飛成、46玉、56成桂、同玉、67金、46玉、
57金、55玉、
ここまでで34~54歩が必要なことは確認できた。
56歩、65玉、66金、同玉、67龍、75玉、
76歩、86玉、
ここまでで64~84歩が必要なことが確認できた。
87銀、97玉、98銀、88玉、89香、99玉、
88銀、98玉、87龍、89玉、77銀、79玉、88龍、69玉、
68龍 まで89手詰
87銀に95玉だと94歩がないと詰まないことが確認できた。
これで検討終了。
いわば「壁駒発生」をまとめて趣向にしてしまった作品だ。
そういう理屈は抜きにしても、歩が一列ずらっと出現する鮮やかさは心を躍らせるものがある。
素晴らしい名作というものは、あるものですね。
将棋や麻雀が詰将棋に敵うわけありませんね。