多分人生の半分くらいは珈琲と煙草の助けを借りて生きてきた。
煙草についてはいつか書くことになるだろう。
今夜は珈琲の話。
高校生まではインスタント・コーヒーだった。
喫茶店に入るなんて不良の行為だし、だいたい金がなかった。
大学生になり、1年の時午前中の単位を須く落とし、仕方なく2年生からは大学の北門のすぐ隣、物置を改良したと思われる小さな部屋で一人暮らしを始めた。
一人暮らしは最高だ。
野菜の入ってないカレーライスを作ることも自由だし。(分かる人は同世代)
当然、珈琲の参考書を入手して研究を始めた。
すると「コーヒー豆の輸出国は政情が安定しない国であることが多いので、美味しい珈琲を飲むためには常に国際情勢に気を配っておくことが必要である」なんてことが書いてある。
これは大変な飲み物なんだと思った。
本を読んで勉強して、どうも淹れ方はネルドリップがベストらしいということがわかった。
(京都に行くたびにイノダコーヒーには寄るけど、やはりいいよね!)
しかしネルドリップは毎回手入れが大変そうだ。ちょっとやってられない。
それでペーパーフィルターを使うことにした。
その代わり豆は生豆を買ってくる。ミルも発熱を抑えるためにハンドミルだ。
面倒なのは豆のピッキングだ。
豆を煎るのに大きさが不揃いだと小さいのは焦げてしまったりして雑味が増える。
出来が悪くてまずそうな豆だってある。
それを一つずつ確認して選んでいくのだ。
選んだ豆をこのザル(?)にいれ、電熱器で焙る。
贅沢に飲みたいときは浅煎りで、普通はじっくり煎る。
(昔は喫茶店で珈琲をお湯で薄めた「アメリカンコーヒー」というメニューがあった。教科書によるとそれは偽物だそうだ。豆は煎ればいるほど豆の個性は消えてしまう。そこで豆の個性を味わおうと思ったら浅煎りにして、その代わりに豆の量をたっぷり使用する。これが豊かな国アメリカ流の飲み方だそうだ。)
それを冷ましてから、挽いて、淹れるのだから珈琲一杯飲むのに半日かかる。
(買った豆はしばらく乾燥させる工程も必要だからそれも入れると数日かかる)
だからその珈琲は極上の美味さだ。
豆は銘柄によって味も大きさもさまざまだ。
モカ・マタリは大きくて甘い。
モカ・ハタリは貧相で不味い。
(最近はモカとしか書いていないことが多いんだけれど、どっちなんだろう?)
でも、いずれも学生時代のオイラには高価だった。
当時、一番安かったのはガテマラ。
ガテマラは小粒で酸味が強い。
でも金銭的な理由で選択肢はこれしかなかったので、今でもオイラは酸味の強い珈琲が好みだ。
(概ね人の好みというものは、このように決定されるもののようだ)
もちろん普段はそんなことをしている余裕はないので、既に煎った豆で淹れていた。
学生時代は学生自治会に絵本サークルに詰将棋、そして恋愛にアルバイト(新聞配達・塾講師・家庭教師・工場清掃・訪問販売)とむちゃくちゃ忙しい毎日だった。
しかし、就職してそれはまだまだ甘かったということが分かった。
自治会の活動は厳しかったが「ヒヨル(日和る)」ということが許されていた。
「あいつ最近見ないけど?」
「ああ今、日和って部屋で卒論書いているらしい」
…と、なんとなく輪番制で行方をくらますことが認められていたのだ。
新聞配達も、朝間に合わなくて昼過ぎになって配達しても……多分許された(?)。
苦情がきただろうけど、他に代わりがいなかったから馘にはならなかったのだ。
公立中学校の教員生活は、学生時代の忙しさが2次元的な忙しさだとしたら、3次元的な忙しさだった。
なんというか、つねにいくつもの案件が頭の中に並立している感じ。
そして忙しさを見せてはいけないという制約。(子どもには「先生って暇そうだからちょっと相手してあげようか」と感じさせる必要がある)
一睡もしないで仕事に行くなんて事も年に数回はあった気がする。若い頃は体力があったからできたんだよな。
でも流石にドリップで珈琲を淹れる心の余裕はなくなった。
この間はこの1杯用のドリップパックにひたすらお世話になった。
オイラが住んでいるような地域では、たとえ街の珈琲専門店のメニューにガテマラを見つけても喜んで注文したりしてはいけないのだ。
何度かそういうことをしてしまって酷い目にあった事がある。
新しい喫茶店に入ったときの心得
- まず周りの客層を見定める。
常連しかいない感じでマスターも客としゃべってる。⇒危険。すぐに店を出ること - マスターが使っている道具は?
サイフォン!⇒リスクを取る必要はない。すぐに店を出るべし。ただし、昭和のナポリタンやホットケーキを食べたい場合は別。 - 他の客が何を注文しているか聞き耳を立てる。
- ブレンドとか日替わり珈琲ばっかり
⇒ストレートコーヒーは諦めて皆と同じブレンドにすること。 - 結構皆それぞれ好きなストレート珈琲を注文している。
⇒この店は当たりだ!(しかし我が家の周辺には存在しない)
- ブレンドとか日替わり珈琲ばっかり
ドリップパックも色々なメーカーが出しているが、おいらの経験ではブルックスが安定した美味しさだ。
定番は写真の「モカ」と「グアテマラ」。(「モカ・ブレンド」はお薦めしない)
ドリップパックを美味しく淹れるコツは1つだけ。
がんばって三十秒蒸らす。
これだけだ。あとは運。…だと思う。
そして、定年退職。
時間の余裕はできた。
ドリップパックは割高なので、また紙のドリップ珈琲に戻ろうと思った。
紙フィルターのドリッパーには2種類あった。
1つ穴のメリタと3つ穴のカリタだ。
学生時代は珈琲の味が比べられるぐらい飲んでいたのでカリタ一択だった。(抽出に時間をかけてはいけない)
これ長いこと元祖がカリタで「刈田さん」が創業者なのかと思っていた。
そしてそこから分家したのが「刈」を分解して「メリ田」と社名にしたんだろうと考えていた。
調べていないけど、多分、間違っているだろうな。
閑話休題。
ドリッパーを買いに行って、新しい第3の選択があることを知った。
円錐形!
これ昔はなかったよねぇ。
なんだか、良さそう。(中1の投影図の所で「立面図が正方形、平面図が円、側面図が三角形。これなんだ」という問題を出しづらくなるかもしれないが)
そして、このフィルターにあうドリッパーを探してみつけたのがこれ。
もう嬉しくなって、即購入した。
なにが嬉しいってこのメーカーを見てください。
HARIO!
これビーカーの会社だよね。
もうサーバーがフラスコにしか見えない。
台所が理科室みたいで楽しくなる。
そして、安い豆でも味も良いと感じる。
(いまさらメリ・カリのドリッパーを買う気がないので比較できないけれど)
でもね、やはりとにかくすぐに珈琲飲みたくなることあるんだよね。
で、これに回帰してくる。
いやこれは珈琲とは別の飲み物(ネスカフェ)だとは思うんだけどね。