詰将棋入門(163) 無仕掛長篇

三代伊藤宗看『将棋無双』第12番 1734.8


初形の盤面に攻方の駒が一つもない。
このような作品を無仕掛図式という。

飛車・角・桂などの跳び道具で手掛かりをつけるのが定跡だが。

12歩、同玉、34角、

32馬の守備力が強力。角で手掛かりをつけるのは順当な所。
間駒は14飛~24桂で押し潰せる。
23歩と移動合で逃げ道を作ろうとしても、先に24桂で簡単だ。

   13玉、14金、

そこで13玉だが、ここで14金の妙手が飛び出す。
宗看の作品は序盤に力がこもっているものが多い。

32馬をどこかで清算する必要があるのは見えているが、14でとってしまおうという手だ。
12飛では24玉、25銀、33玉と逃げられる。
貴重な金をここで放出させてしまうにはしっかりした読みが必要だ。
同玉なら…

   同玉、25銀、15玉、13飛、14歩、
16銀、24玉、36桂、34玉、44金まで15手詰

【変化図】

13飛で3段目への逃走路を塞ぐのが胆。
そこで作意は…

   同馬、12飛、24玉、14飛成、33玉、
25桂、44玉、56角、

馬を取りながら龍で追いかけ回す。
56角と好点に角を引いておき…

   53玉、64角、62玉、73銀、63玉、
74角、

その角を惜しげもなく、捌き捨てるのが無仕掛図式らしからぬダイナミックな進行だ。
途中、53玉では43玉もあるが、33桂成で早い。
73銀に同龍や71玉という変化もあるが、省略する。

   同玉、55角、65玉、64龍、76玉、
66龍、87玉、77龍、98玉、

2枚目の角は55の要所に据えられることになる。
この角を軸に盤の端から端まで追いかけるというわけだ。

99歩、89玉、98銀、99玉、

左下の袋小路をうまく持駒を消費しながら両王手を利用して折り返す。
ここの仕組みは伊藤看寿が「寿」で利用しているように思える。

79龍、98玉、99龍、87玉、88龍、76玉、
77龍、65玉、66龍、54玉、64銀成、

64銀成で左辺は封鎖完了。

   45玉、46龍、34玉、44龍、25玉、
34銀、14玉、33銀不成、25玉、24銀成、

24銀成で右上辺も閉じられた。
あとは右下で収束だ。

   36玉、46龍、27玉、37龍、18玉、
19歩、同玉、17龍まで61手詰

門脇芳雄『詰むや詰まざるや』によると、本作は史上5作目の無仕掛作品とのこと。
看寿は同様の趣向(無仕掛+長編)で競うことはせず、98番の「裸玉」と別方向の無仕掛図式を残した。

「詰将棋入門(163) 無仕掛長篇」への2件のフィードバック

  1. 近日中に「雑談」カテゴリーで「ヒマラヤ」は登場する予感がします…(^^)

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