伊藤看寿 「裸王」 図巧 第98番 1755
1番が謎の提出とその鮮やかな解決という詰将棋の王道を行く作品だったのに対し、本作は初形で驚かせることが主眼の作品。
「えっ、これで詰将棋なの!?」と驚いてもらえれば、もう半ば作品の勝ちということだ。
13飛、12飛、22金、同玉、33銀、31玉、32金、同飛、
同銀成、同玉、34飛、42玉、44飛、52玉、54飛、62玉、
64飛、72玉、74飛、62玉、73飛上成、51玉、53飛成、41玉、
71龍、32玉、62龍引、21玉、23龍、11玉、12龍寄 まで31手詰
手順は見た目ほど難しくなく、13飛と自然に手をつければ良い。
飛合以外は易しいことを確認することは難しくないはず。
作意は飛車を精算して手駒にし、2枚飛車で追っていく一往復の軽い趣向手順になっている。駒がベタベタ残らないところが好印象だ。
ただし、本作には大きな問題がある。
それは3手目と5手目の金銀の打順だ。
2手目角金銀の間駒の場合は23に打てないので22金~33銀で詰む。
2手目桂合の場合は24に打てないので22銀~23金で詰む。
ここまでは問題ないのだが、作意の飛車合の場合はどちらでも詰んでしまう。
「飛車とカナ駒2枚を交換する」という意味は同じだから、当時は「細かいことは気にするなよ、粋じゃねぇなぁ」で済んだのかもしれない。
東洋文庫「詰むや詰まざるや」の門脇芳雄も「キズ(着手非限定)」としている。
他にも本局を「裸玉」第1号局としている文献も多い。が、現代的にはこれは余詰だろうと筆者は考える。
(7手目の42金や11手目35飛は迂回手順として良いと思うが、打順前後はアウトだと思うのだ。)
タイトルの「裸王(はだかおう)」は前述の門脇芳雄から。タイトルは看寿がつけたわけではなく、後世の人が紹介する際に命名したもの。初出は不明。
盤面玉1枚という初形趣向は労多くして益少ない、創作と言うよりも捜索作業になりそうだが、何人もの方が研究している。その場合「裸玉(らぎょく)図式」というのが一般的だ。
最も有名なのは 岡村孝雄「驚愕の曠野」(改良図)2004.4詰パラ(via.おもちゃ箱) である。
もっと裸玉図式について詳しく調べたい方は次の情報にアクセスすると良いだろう。
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