詰将棋入門(1) 「図巧1番」

詰将棋入門と題した連載を始める。
構想や準備はまったくないのだが、まずは書き始めることが大事なのだ。

ルールや面倒な用語は泥縄式で理解して貰うことを期待して、まずは基礎知識として持っておきたい詰将棋の紹介からスタートする。

となると第1回はこれしかない。

伊藤看寿 「図巧1番」1755

江戸時代の詰将棋だ。最も有名なのが伊藤看寿の「将棋図巧」。その巻頭を飾る作品だ。
この作品を知って詰将棋の世界に興味を持ったという人は少なくない。
内藤九段もエッセイで書いていた。
おこがましいが私も図書館でこの作品を知り、詰将棋の世界に入った一人だ。

詳しい解説は書かないが、さすがにこの作品はいくつか図面が必要だ。
素直に攻めると次のようになる。

54銀、75玉、87桂、86玉、66龍、同龍、95角成、76玉、
77歩、同龍、同馬、85玉、84飛、同玉、95馬、83玉、
82金、同歩、84歩、92玉、81銀、91玉、82と、同玉、
72金、91玉(失敗図)

打歩詰は禁手なので、この図は詰まない。失敗だ。
みるとポツンと玉方16角が所在なさそうにしている。
この角がヒントで、「この打歩詰を打開してみろ」と謎が提示される。

正解は13手目に遡る。84飛と上部に誘い込むところで角を質駒にした遠打15飛がとびだす。

54銀、75玉、87桂、86玉、66龍、同龍、95角成、76玉、
77歩、同龍、同馬、85玉、15飛、

対して玉方は25飛と間駒をする。

25飛、

この間駒の変化は簡単ではないが省略する。

同飛、同角、95馬、76玉、26飛、

飛車の遠打に対して飛車合!この繰り返して玉方の角が移動していくのだ。

36飛、同飛、同角、77馬、85玉、
35飛、45飛、同飛、同角、95馬、76玉、46飛、56飛、
同飛、同角、77馬、85玉、84飛、同玉、95馬、83玉、
82金、同歩、75桂、

この桂馬の捨駒の意味はもうおわかりだろう。しかしなんともいい味の桂捨てだ。

同香、84歩、92玉、81銀、91玉、82と、同玉、72金、91玉、92歩、

これで92歩が打てるという構想。以下は短くしかも綺麗に捌いて収束する。

同角、同銀成、同玉、74角、91玉、82金、同玉、83歩成、71玉、62馬、

趣向部分を担っていた桂馬だけでなく馬も自然に消し去る気持ちよさ。

同玉、63銀成、61玉、72と、51玉、52成銀、まで69手詰

終局は玉座で、しかも止めを刺す銀は初手に打った銀というのも味わい深いものがある。

打歩詰を打開する手筋として、守備駒を呼び寄せるという手法はありふれたものだ。

例題(5手詰)

しかし、この筋はここまで発展することができるものかと人知の素晴らしさに嬉しくなってしまう。

仕上がりも素晴らしい。配置を眺めてもこの駒は何のためにあるのだろうという駒はほとんど見当たらない。(83歩は95飛から85歩の余詰を防いでいる。96桂は飛合しなかった場合の質駒)

伊藤看寿は江戸時代の(贈)名人だが、詰将棋作品を100局残した。
この連載でも少なくともあと3局は紹介する予定だが全容を知りたい場合は次の本やサイトにアクセスすると良い。

追記(2020.4.25)
将棋情報局より會場健大「時代を超える天才・伊藤看寿 第2回 内藤國雄少年の人生を変えた一局

「詰将棋入門(1) 「図巧1番」」への2件のフィードバック

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