三代伊藤宗看『将棋無双』第42番 1734.8
宗看というと難解という印象があるが、本作など変化は細かくたくさんあるが、落ち着いて取り組めばそれほど難しいことはない。
97龍が攻めの主役に見える。
55香、同玉、47桂、56玉、
47桂に54玉と戻るのは66桂から93龍で簡単。
4枚の桂馬が斜めに綺麗に並んだ。
57龍、45玉、46龍、34玉、
35龍、43玉、44龍、32玉、
右辺に逃げ出されないように正面から押し上げていく。
42龍、23玉、22龍、34玉、
銀を使ってUターン。
24龍、45玉、35龍、56玉、55龍、67玉、
24龍に43玉は55桂で簡単。
往路は35龍の形だったので55桂は54玉と上がられる。
手なりに46龍と追うと65玉で逃げられる。
42歩があるので55龍と破調する。
57龍、76玉、77龍、65玉、
46龍が成立していたらこの局面で66龍で余詰ということになる。
龍おいで1往復してきたが、今度は桂馬が動き出す。
57桂、54玉、46桂、43玉、35桂、32玉、24桂、
4枚の桂が一気に跳ね出すところは圧巻だ。
33玉、73龍、24玉、
23龍、35玉、34龍、46玉、
45龍、57玉、47龍まで43手詰
帰り道、玉に逃げ方によっては桂馬が残るが、これを変同と攻めるのは筋が悪い。
将棋の対局でも綺麗な終局図を二人で阿吽の呼吸で作るように、桂馬がすべて消える順で解答するのがマナーというものだろう。
ただし34手目に33玉ではなく31玉としたり、
41玉と捻って逃げたり、
21玉ともっと捻って逃げると
これは変長になる。
41玉ならば71龍、同馬、32銀、51玉、42銀成、同玉、43桂成、51玉、41銀成、同玉、32桂成、51玉、42成桂まで47手。(なぜか門脇本も谷川本も31玉の45手の変化しか書いていない。)
これは『無双』には他にもいくつもある「妙手説」による作意設定で、要は作者の考えた作意が作意だというもの。(同語反復)
筆者は本質的には妙手説に賛同する立場だが、現代的には本作は通用しない。
しかし桂馬が斜めに跳びだしていくというのはかなり奔放な趣向でなかなか難しそうだ。
右辺はほとんど開けっぱなしになるので龍が暴れ出すのを抑えるのは難しそうだ。
余詰の無い宗看のこの仕上げが、そもそも奇跡的なのかもしれない。(添川さんとか猫田さんなら作りそうだが)
看寿も桂馬を斜めにはしないで縦に並べた。(『図巧』#64)しかもその桂馬は跳ね出しはしない。
図巧#64の技巧にも感心するが、本作のおおらかで雄大な趣向にも心惹かれずにはいられない。