デザインを駆使して

writer:自在 流

 詰将棋は他のパズルと同様に、たいてい一度解かれるとその役目を終えますが、デザインを駆使して、書やタイポグラフィの作品として、ポスターのように壁面展示するなどして、新たな命が宿る可能性はないか、と考えたことがあります。

 普通、冊子形式の詰将棋の場合は、問題を読者に伝えることが主眼なので、地味で分かりやすい装丁になるのでしょう。
 余計な装飾を前面に出すと、パズルとしては雑音ですし、通常なら避けるところです。ただ、詰将棋が分からない人に対しても、書体やフォントを工夫することで、作品をユーモラスに感じたり、格調高く感じたり、微妙なニュアンスを伝えたいと思案するのは、書籍ではない「1枚物の展示物」なら、考えてもいいかと思います。

 例えば、私の地元、北海道の作家さんの作品を題材にしますが、

①は山田修司さんの「Wプロット」という作品を、デザイン書としてアレンジしたものです。
 個人的な感想ですが、山田作品の持つクラシック音楽やレトロ映画のような美しさを表現するのに、私の解釈では大正ロマンとか昭和モダンの書体が近いかと思って、制作しました。


 ②は柏川悦夫さんの「四香詰」という作品を、先ほどと同じようにアレンジしたものです。入り乱れた戦いの末に武将を打ち取ったイメージだったので、力強いフォントを選んで、制作しました。

 本当は、実際に頭を使って解かないと、作品の神髄に触れることは出来ないでしょうが、興味の入口としては、考察の余地があると思っています。

 詰将棋は伝統あるパズルで、優れた芸術性を持っているのは間違いないですが、それを伝える手段として、壁面展示のアートでの発表を視野に入れるなら、問題の体をなさなくとも、そこを皮切りに、面白い発想なり表現が出てくるのではないか…と。

 もちろん好き嫌いは別ですし、こんなの邪道だと言われればそれまでですが、駒のフォントを、相田みつを風にしたり隷書風にするだけで、攻防の妙や、涼しげな流れや、愚直な筋など、通常の書物で使用される明朝体以上に、表現できる可能性が出てくるのでは? なんて勝手に妄想したところです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください