長編詰将棋の世界(6) 龍鋸の目的や如何

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

菅野哲郎&若島正「もぐらたたきⅡ」詰パラ2010.3


棋譜ファイル

26歩、15玉、24角、26玉、46龍、25玉、45龍、
{35歩、26歩、同玉、35角、15玉、24角、26玉}=甲
56龍、25玉、65龍、
{35歩、26歩、同玉、35角、25玉、26歩、15玉、24角、26玉}=乙
76龍、66と、同龍、25玉、65龍、乙、76龍、25玉、85龍、乙、86龍、25玉、85龍、乙、76龍、25玉、65龍、乙、56龍、25玉、45龍、甲、27金、同玉、18銀、38玉、39飛、同玉、48銀、同玉、55桂、ハ59玉、49金、68玉、67金、同玉、56龍、77玉、86龍、67玉、68歩、同馬、56龍、77玉、68角、同玉、57角、77玉、86龍、67玉、66龍迄115手詰

 36銀合は同龍、同香、27銀、25玉、36銀、34玉、45銀、23玉、35桂、22玉、23香、31玉、43桂不成、41玉、51角成、
 25玉だと作意に短絡して101手歩余
 46金合は同龍、59玉、49金、68玉、67金、79玉、96龍、68銀、89金、同玉、98龍、79玉、88龍迄

☆持駒は歩だけ、王手は限られている。導入は誰でも入ってこられるはず。5手目46龍に対する変化が最初の関門だ。歩合は27歩25玉45龍に今度は金か銀しかないので簡単。金合は同龍で簡単。銀合はちと長いが13香や44桂が効いてくる。変化イを参照のこと。かくして作意は25玉。これで6段目の龍の王手はすべて解決だ。

☆続いて45龍と5段目の王手だ。35歩合に26歩と捨てれば35角15玉24角26玉で結局歩の消費もなく玉を26に移動できる(甲)。ここの所の機構は上田吉一の大桂馬からの龍そっぽを思い出す。

☆これで龍鋸の条件は整った。ただし、無制限に龍を移動できるわけではない。45龍の場合は35角に25玉の逃げだと36龍で簡単なので15玉となるが、45以外に龍が居る場合は一旦25玉とごねる。そこで26歩と打つ必要があり、結局1歩を消費することになる(乙)。この点に注意すれば龍鋸が動き出す。

小林 巧 王様と角のダンスは中々面白いと思う。決してチークダンスなんぞではなくって、多分、オクラホマ・ミキサーかなんかだとは思いますが。
永島勝利 45龍の時に25玉とできない点がアクセントになっていて良い。

☆その目的はみるからに86歩の消去だ。45龍まで戻った所で収束。飛車を切るのに一抹の不安を感じるが他に手がないので難しくはない。そして101手歩余り…。いったいどこで間違ったのか。

杉山哲也 歩が余らなければ66と引には気がつかなかったはず。これは作者の親心か。

☆収束で取られるだけの67とを龍鋸の最中に66とと捨てるのが正解だ。いわゆる「やけくそ中合」の変種である。最初の76龍に66ととすれば同龍以外無く、元の位置に戻すのに1歩消費するから、手数が伸びる。14手伸びて115手詰で解決となる。

☆だがまだ一つ大きな謎が残っている。「なんのために86歩を消去したのか」ということだ。歩を消費して龍鋸をするのだから、持駒補充が目的ではない。この謎が解決しなければこの作品を本当に「解いた」という気がしない。

☆正解は変化ハにある。46金と中合されたときに、96龍と振る必要があるという仕掛けだ。中合の妙手の奥にさらに飛車の最遠移動という妙手が隠れている。これらは作意表面に現れない。文字通りの隠し味だ。

☆隠しすぎて通り過ぎられないかとも心配したが、さすがは院生諸君。それは杞憂だった。

天津包子 86歩除去の意味がわかって解決。
増田智彬 龍鋸をして86歩を取るのは持歩の数は減るので当初は理由が分からなかった。96龍を出来るようにするためと分かった時は嬉しかった。
野口賢治 単なる入手ものと違って「何故なのか」という謎解きの要素が加わるとグンと楽しさも倍増するというもの。

☆軽快な趣向手順だけでは物足りなさを覚えたのも事実。採用の決め手は目的が変化伏線という点だった。

武田静山 と金捨ての手数のばしが63桂の配置と相まって見事。
篠田正人 63桂の配置で竜の軌跡がちゃんと限定されているのでA評価です。

☆異色の合作と評判だった。

作者 本作は、菅野が作った原図を若島先生が改良してくださったもので、龍鋸の目的と龍鋸に対して銀合をしても詰むという部分が若島先生による改良です。

☆さて本作のタイトルは作者からの要望で発表時は伏せていた。にもかかわらず見事当てられた方が一人。

岡村孝雄 6番を見てデパートの出題作(2008年3月号)を思い出した。易しく楽しい趣向で、86歩消去の意味もきれいに作られている。題名は「もぐらたたき2」?手数と6筋の移動中合、出題月まで揃えてあるとは(笑)。

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