高木秀次『千早城』に登る(12)


※この連載は風みどりが1題ずつ高木秀次作品集『千早城』(1993)を読んでいくものです。

第12番  詰パラ1952.1改

20手台に突入。そろそろ柿木将棋にお世話になるかなと思っていたが、本作は一直線に解けた。

みるからに82銀が邪魔駒だ。なければ82飛成まで1手詰。
取れないからといって、いきなり93銀成は73玉以下逃げられるのだろう。
持駒に桂馬がたくさんあるから75桂か。
そう見せておいて、いきなり94銀というのもありそうだ。
同玉に75角成と2枚角で攻めることができる。
が、同桂、同角、95玉で銀と桂では粘り気がないから捕まえるのは無理そうだ。

で、普通に75桂から攻めてみよう。66歩、86歩の2枚の配置は作意や変化で74玉まで来ることをほのめかしている。

75桂、同銀、

そしたらすることは決まっている。

65角成、同銀、

ちなみに原図は65歩の配置が無く、65角成に74金合で変長だった。74金合の変化が難解だった。易しい作意にそぐわない難しい変化として削ったのか。

これで67角の利きが94まで届いたので、今度こそ95銀が実行できる。
なにしろ桂馬の打ち場所は75と95しか見えていないのだから95銀は94に捨てられる運命にあるのだ。

94銀、同歩、95桂、同歩、94角、同玉、93銀成、同玉、

初手からここまで捨駒6連発。83銀という邪魔駒ネタ1つでよく展開できるものだ。
この局面になって最後の桂馬の使い場所が見えてきた。

85桂、同歩、82飛成、94玉、85龍、93玉、94歩、92玉、82龍まで21手詰

以前、94角、同玉、93銀成のような複合捨駒を賄賂手筋と書いたら、そんな言葉初めて聞きましたと言われた。

出典が見つかったのでこの場を借りて紹介しておこう。

北原義治 将棋春秋1957.8

98銀、79玉、88馬、同玉、86龍、78玉、
79銀、同玉、88龍、同玉、89金まで11手詰

野口益雄氏の解説を一部引用。

 官庁への贈賄も、いざその任に当るとなかなか進呈するまでに大骨折りらしいが、この88龍捨てもその通りで、ただ差し出しただけでは受けとってくれない。
 一応、79銀、同玉と待合へさそってお膳立てしてから88龍としなけりゃ、いかんのである。

子どもの頃、この解説を読んで、「大人になって役人に賄賂を渡すときには気をつけよう」と思った次第である。高木作では94角が待合に誘う手。

「高木秀次『千早城』に登る(12)」への2件のフィードバック

  1. 第11番ではなく第12番ですね。
    発表図は66歩がなく4手目金合の変化がややこしくなりますが、柿木先生は一応21手駒余りで詰ましますね。

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