高木秀次『千早城』に登る(17)


※この連載は風みどりが1題ずつ高木秀次作品集『千早城』(1993)を読んでいくものです。

第17番 詰パラ 1950.11

そろそろ手数も長くなってきたし、筆者の棋力では手に負えなくなりつつある。が、この図には見覚えがある。
ラッキーと手をつけてみたら11手で詰んでしまう。あれまた余詰かと作意を探ったが全然分からない。
あきらめて原書を開いて確認したら、54成銀を攻方54銀にして考えていた。そりゃ11手で詰むよね。

82金、同玉、72歩成、91玉、82と、同玉、
73桂成、同玉、

11手で詰んだといっても、そこまで実は結構考えている。
この局面で63銀が邪魔駒なので73桂成の前に72銀成、91玉、92成銀と消去してみたりしていた。
ところがこれは72銀成、同香、73桂成、同玉、72角成、64玉で攻方だと思っていた54銀まで邪魔駒になっているのだ。でもこの54銀をどうやって消去するんだ……と悩んでいたところ、74銀成という手に気づいたのだった。

74銀成、同玉、63角成、65玉、54馬、64玉、
63銀、73玉、

【失敗図】

さてこれで作者の狙いが明らかになった。この局面で一歩あれば詰む。
問題はどうやって一歩を入手するかということだ。

見覚えがあったのは『この詰将棋がすごい!2019』に「一歩入手方法の研究」というメモ(論考というにはちとおこがましい)を書いたからだと思いだした。

この答は比較的簡単だ。
図を眺めて働いていないのは14角・37飛・43飛の3枚。
37飛が王手をするには82玉に対して32飛成しかないだろう。
43飛も82玉に対して42飛成しかなさそうだ。

ということは序盤で

32飛成、同歩、42飛成、同金、

としておいて 63馬、55玉のときに、

32角成、

これで目的が達成される。

以下は

   同金、54馬、64玉、63銀、73玉、
74歩、同と、72銀成、同今日、63馬まで31手詰

さて、今回はわりとあっさり解決したと思われた方はいますか?
実はここからが一番難しいところでした。

82玉に対して32飛成~42飛成とするのはわかったのですが、82玉は2回あるんですよね。
82金、同玉の2手目と82と、同玉の6手目。
つまり32飛成を決行するのは3手目が正解なのか7手目が正解なのかという問題が解決していないのです。

(これ解答選手権ですと初手から4手毎に途中点がもらえるので、逆にここで間違えると全体の構成は理解しておきながら途中点を1点も貰えないという悲劇的な事態に陥ります。2006年度の第9問上田吉一作で最後に88銀のタイミングはどちらが正解かと悩んだことを思い出します)

はじめは73桂成を担保するために先に73歩を消去しておくのではないかと予想しました。
ところが2手目32飛成に83玉でも詰みます。ということは42飛成も逃げるのはダメ。

おかしい、もう柿木先生に正解を教えてもらおう。

でてきたのが次の解。

82金、同玉、72歩成、91玉、82と、同玉、
73桂成、同玉、74銀成、同玉、63角成、65玉、
54馬、74玉、63馬、65玉、54銀、55玉、
35飛、45歩、44飛成、同玉、53馬、55玉、
47桂、同成桂、45飛まで27手詰

これは余詰順ですね。
そういえば発表図は云々と指摘があったような記憶が……。
幸い本作には詰パラ1950.11とあったので、調べてみると

48とがあります。これなら47桂に同とがあるので余詰はありません。

きっと作品集を編集している際に48との意味を忘れて省いてしまったんでしょうね。
筆者も投稿図を描いている最中に「あれ?この駒いらないじゃないの。しめしめ1枚減らせるぞ」とやって余詰という痛い経験があります。作っているときはちゃんと読んで配置したのに、暫くすると忘れてしまうんですね。

さて、48とを追加して再び柿木先生に作意を調べてもらいました。

正解は3手目に32飛成です。

ということは73歩を消去してしまうとどうなるのでしょうか。

42飛成、62香で不詰

早めに消去したい73歩を消してしまうと、32飛成には同歩ですが、42飛成に1枚だけ残っていた香を62に間駒されて詰まないようです。
確かに以下73桂成、同玉64銀成では62香が63に効いていて詰みません。
では73歩があると、この変化はどうなるのでしょうか。

6手目62香合だと

   同龍、同金、72歩成、同香、同銀成、
同金、同角成、同玉、74香、同と、73桂成、
同玉、63金まで

73歩が必要になる変化ですからこのような精算順になることは予想つきますが、なかなかやりにくい骨太の変化です。

『千早城』には「易しい」としか書いていないのですが、この変化は書いておいて欲しかったです。
解答者も「易しい」としか言っていないけれど、32飛成のタイミングを間違えた誤解者はいなかったのかなぁ。

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