長編詰将棋の世界(23) 奇兵隊

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

添川公司「奇兵隊」 詰パラ2010.11

棋譜ファイル

82と、同成香、81金、同成香、同と、同玉、71歩成イ91玉、
93香、92歩、同香成、同玉、93歩成、91玉、82と、同玉、
72と寄、同金、同と、同玉、62歩成、81玉、72と、同玉、
73と、同玉、84と、同玉、75と、同玉、76歩ロ同玉、
87と、66玉、78桂、67玉、66金、68玉、69金、同玉、
58歩、29歩成、同龍、68玉、59龍、78玉、79歩、同成香、
77と、同玉、79龍、66玉X 68香ハ67桂、同香、同玉、
85馬、56玉Y 57歩、同桂成、同銀、同玉、59龍、46玉、
47歩、同玉、58龍、46玉、45とニ同玉、67馬、36玉、
26とホ同玉、18桂、17玉、29桂、16玉、28桂、15玉、
55龍ヘ25歩、16金、14玉、25龍、同角、同金ト同玉、
37桂チ14玉、25角、13玉、14歩、22玉、23馬、同玉、
24歩リ同玉、36桂、23玉、34角、同玉、26桂、23玉、
32銀打、22玉、13歩成、同玉、25桂、22玉、33銀成、同桂、
34桂、11玉、12銀成、同玉、24桂、11玉、21銀成、同玉、
33桂生、11玉、23桂迄123手詰

イ同金は同と、同玉、62歩成、81玉、83香、同金、92金以下
ロ66玉は78桂、67玉、66金、68玉、69金以下
X 69香も可
ハ67歩は同香、同玉、78龍、66玉、67歩以下
Y 57銀も可
ニ36玉は26と、同銀生、46と、同玉、47金以下
ホ同銀生は38龍、37飛、48桂、25玉、36金、24玉、57馬以下
ヘ14玉は58馬、25歩、同馬、同角、同龍、同玉、37桂以下
ト13玉は24金、同と、12銀成、14玉、23角、同と、58馬、24玉、25馬、同玉、37桂以下
チ15玉は24角、同玉、57馬以下
リ22玉は32銀成、同玉、43角成、22玉、33銀成以下

☆作者は添川公司。初形全駒配置。となれば解答者は贅沢にも煙詰を予想する。ところが…。

永島勝利 まさか四桂詰とは!右下の折衝で桂をばかに使うのでもしかしたらと思ったが、本当に実現するとは…。
凡骨生 この所、氏の煙詰には完封されているので今月はと意気込み、駒が徐々に消えて煙詰制覇と思いきや、詰上がりは「四桂の宣告」でびっくり仰天。看寿賞は決まりですね。

☆全駒配置から純四桂詰。このテーマでは七條兼三、飯田岳一(ともに近将88-5)に次いで3作目。いずれも高度な創作難度を克服した傑作だ。しかし本作はその点を主張した作品ではない。

武田静山 当然煙ると思い解いていったが、中盤の桂打ちあたりから昔であった「四桂の宣告」が蘇る。
今川健一 作者は添川、全駒、予想は煙。見事に外れた、それでも、この詰め上がり図は嬉しいな。収束、3桂での追撃が楽しい。人呼んで「死刑の宣告」、さすが、流石です。

☆ご覧のように解答者が思い出したのは「死刑の宣告」。つまり初形条件や詰上り条件ではなく、桂馬の王手11回という手順趣向が解答者の心を掴んだのだ。

作者 全駒配置の純四桂詰。桂を八、九段目から打つことにこだわりました。

☆図から桂馬の3連打が始まる。中盤で挫けた方はこの局面から再挑戦を。

竹中健一 途中から超難解…特に桂の利きがごちゃごちゃで頭の中でかなり混乱しました。桂の舞が見事でしたね!!

☆この局面から全駒配置の初形にまで逆算する技量にはいつもながら心服するしかない。が、この作者であるからただ駒を消すだけの順では勿論ない。

☆図は20手目の局面。73とから次々と質駒を喰っていくしかないように見える。ここで63歩を消去しておくのが作意には意味が現れない手順。変化伏線だ。

☆その種は変化ハにある。68香に67歩合されたときに二歩禁に陥らない為の事前工作というわけだ。

☆しかし、この伏線に触れた短評は皆無だった。68香以降増えてくる変化・紛れ、その中に出現する桂馬の乱舞、期待させる詰上図の輝きに皆さん目を奪われたからに違いない。

野口賢治 「夢を見ているのでしょうか」という有名な台詞が昔あったが、現代の添川マジックにかかると「余に不可能無し」の超有名な台詞に格上げしても良さそうだ。
鈴木彊 スタートの時点ではいつもの添川さんの作品で煙詰を予想しての追い手順でしたが、中盤以降合駒が入ったり大駒を取るなど予測が外れたかと思いました。終盤桂を用いての追撃が入り、煙詰とならないような感じを持ちました。クライマックスを迎え、四桂詰の出現したのには驚きかつ感動しました。完全作なら半期賞どころでなく年間最高傑作の作品として添川氏の不滅の名作として輝くものと思われます。
中沢照夫 全駒配置からの四桂詰。煙詰よりも創作が難しいのでは。次から次へと駒が消えていく左辺での手順は当然煙詰を思わせる。それ故、右辺で8段目9段目に桂をベタ打ちする手順は実にやりにくい。そしてその桂を活用していく手順は厚い変化を伴い難解だ。苦労の末ようやく辿り着いた詰上がりに思わず声を上げてしまう感動的な作品だ。
池田俊哉 序から中盤に掛けて細かいさばきはあるものの、失礼ながら氏にしては普通の煙と思っていたら詰め上がりでびっくり、まさかこうなるとは氏以外では「もったいないおばけ」が出るところだが、飽きたのかな、と思ってしまう(笑)。60手前後の細かい綾がちょっと危ないかも?

☆短評を掲載する際に、誌面の関係から短く編集させて頂いている。しかし同時に感動した熱い想いがこぼれ落ちていってしまう。筆者の非力によるもので誠に申し訳ない。

☆またもやオールAを獲得。煙という予想をさせ、それを裏切り、予想を上回る感動を解答者に与えてくれる傑作だ。

「長編詰将棋の世界(23) 奇兵隊」への5件のフィードバック

  1. 同一条件の完全作は他に3作ぐらいしかなかったはず。
    七種合煙、無防備煙より希少性がありますね。

  2. 解く以前から最終の4桂で詰むことは判ってはいたが87手目の25金に対する13王の変化がむしろ本筋より苦労した。25金に対して同王以降は桂で追いかけるのだが、頭の中がもうぐちゃぐちゃだ。とにかく小生には難解な作品だった。知っていたとは言え4桂の締めが出てきてスッキリはした。よくまあ~こんな煙詰めを創るものだと呆れるばかりだし、解く読者も着手した限りは最終の詰めを狙いたいしさぞ大変だったろう。

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