詰将棋つくってみた(106) 課題22:講評

Judge:借り猫

どう見ても詰んでいるのに、歩を打って詰ませてはダメ、と理不尽な言いがかりを付けるのが打歩禁ルールです。
私が小学生だった頃は、歩の他に香打ち、桂打ちの詰上りも禁じられていました。
田舎は福岡県南部ですが、このルールがどの程度の広がりを以て通用していたのかは不明です。
近所だけの極ローカルルールだったのかも。(笑)

優秀作

第14問 やよい

正解
64銀、66玉、88角、77成桂、75銀、55玉、
56歩、44玉、43成桂、同玉、16馬、同香、
42と引、44玉、A45銀、35玉、B79角、68歩、
同角、同成桂、36歩、24玉、23と引、同銀、
25歩、15玉、16歩、同玉、17香まで29手詰

77歩成は、75銀以下作意45銀のところ、77角、同成桂、36歩で2手早くなります。

初手、56歩と突くとどうなるでしょうか?
56歩、44玉、45銀、35玉、79角、68歩合、
同角、同成桂、36歩、24玉、23と引、同銀
で、25歩が打歩詰。

そこで少し工夫してみます。
43成桂、同玉、16馬、同香、42と引、44玉、
45銀、35玉、79角、57桂合、同角、同成桂、
27桂、24玉、23と引、同銀で25歩が打歩詰。

79角に68歩合なら詰むのですが、57桂合を喫してしまいました。
66歩消去は、成桂を移動させて、57への利きを無くすためだったのですね。
玉方桂先桂歩予防というのでしょうか。
桂合を作意に出した例はあります。

内田昭 詰パラ1997.4

正解
27銀左、同と、14飛、15桂打、同飛、同桂、
28桂、同と、17銀、27玉、28銀引、16玉、
17銀、27玉、28歩、36玉、46金、同香、
37歩、47玉、57龍まで21手詰

15歩合は、17歩、同と、15飛、同桂、17銀、27玉、28歩、36玉、46金、同香、37歩、47玉、57龍まで4手早い。
17歩は、同と、15飛、同桂、17銀、27玉、39桂、36玉、46金、同香で37歩が打歩詰。

やよい作のように紛れに隠した狙いは初めて見ました。
詰将棋において、最高の評価は新しさであることは言うまでもありません。
今回はこの図でしょう。

佳作

第11問 シナトラ

正解
51角不成、32玉、A42飛、23玉、41馬、33玉、
32飛不成、44玉、33角不成、54玉、63馬、同玉、
62飛不成、54玉、45銀、同桂、55歩、53玉、
65桂、同と、54香まで21手詰

62飛は、52歩合で馬の利きが止まり、逃れ。従って限定打です。

飛角2回ずつの不成ですが、類作感はありません。
安定した巧さを感じました。

講評

第1問 松田圭市

正解
43角不成、32歩、同角不成、12玉、13歩、22玉、
33桂成、同玉、43角成まで9手詰

32桂合は、同角成、12玉、24桂打、同歩、同桂まで2手早い。

持駒に歩のないところで角不成。もちろん歩を入手する見込みがあるから不成が成立するのですが、無駄なくできています。
なお、玉方11馬は金などでは初手から43角成、32歩合、同馬、12玉、24桂、同歩、13桂成、同玉、43飛成以下の余詰が生じます。

第2問 ミーナ

正解
17歩、15玉、16歩、26玉、37金左、16玉、
17歩、15玉、27金寄、59飛成、16歩まで11手詰

邪魔駒の18歩を捌いて、突歩詰にする狙いなのでしょうか。
最終手が16金でも良いのが気になります。
また10手目の成不成非限定を避けるため、玉方44飛は龍にしたいところです。

第3問 浦和高校将棋部

正解
11歩成、同玉、32歩不成、22銀、12歩、21玉、
31歩成、同銀、11歩成、32玉、33銀成まで11手詰

3手目、32歩成と成ってしまうと12歩が打歩詰。そこで歩不成ですが、すぐに意味付けが判明しますので、難しいところはありません。また、大駒3枚が不動のまま残るのが残念なところです。
私がこれまで攻方歩不成でもっとも面白いと思った作は、二代宗古図式の第84番です。7手目の歩不成は、歩の後ろに利きがないことを利用した打歩回避で、これは目からウロコでした。

二代大橋宗古『献上図第84番』

52角成、同玉、53成銀、41玉、52成銀、同玉、
53歩不成、41玉、52銀、32玉、41角、21玉、
33桂、22玉、23銀、33玉、25桂、同歩、
22銀不成、24玉、25歩、15玉、16歩、25玉、
28香、35玉、26金、45玉、36金右、54玉、
65銀、53玉、64金まで33手詰

第4問 風みどり

正解
A23桂打、12玉、13金、同玉、24角不成、12玉、
11桂成、同玉、23桂不成、12玉、13歩、23玉、
33馬まで13手詰

A23桂跳、12玉、13金、同玉、24角不成、23玉で逃れ。

初手、桂を跳ねてしまうと23への支えがなくなって詰みません。
狭いところで、分かりやすい手順です。
13x、同玉、24角不成の手順を含む作がどれくらいあるか調べてみましたが、10局以上ありました。

第5問 はせがわ ゆ

正解
22銀成、同玉、34桂、32玉、31飛、43玉、
41飛不成、32玉、22桂成、同香、31飛不成、43玉、
44歩、42玉、41飛成まで15手詰

24玉が金とかだと余詰が生じるので、余詰防止の配置ということでしょう。
22への二度の成り捨てが、ちょっと趣向っぽさを感じさせます。

第6問 武田裕貴

正解
51角成、24歩、同馬、同桂、16歩、同桂、
11飛、13歩、同飛不成、25玉、26歩、24玉、
35角、34玉、43飛成、同玉、53角成まで17手詰

11飛は21香を睨んだ限定打。
大駒を近づける捨合を不成で取るのはよく見かけますが、収束がうまく引き締まりました。

第7問 松θ拓矢

正解
14龍、13角、同龍、12香、33角、同歩、
23桂、21玉、22歩、32玉、31桂成、同玉、
21歩成、同玉、27飛、同角成、22金まで17手詰

1筋に歩合はできず、桂は出払っているので角合しかありません。
33角までは良いのですが、その後が打歩詰から離れてしまうのは残念。
変化に備えた不動の守備駒が多いのも気になるところです。

第8問 negitarou

正解
26金、同銀、同歩、35玉、24銀、26玉、
64角、29馬、27金、25玉、26歩、24玉、
42角成、23玉、32馬、13玉、14飛まで17手詰

飛の横利きを止める64角が主眼と思われます。
それは良かったのですが、前後の手順に一工夫欲しかったと思います。

第9問 芹田修

正解
13歩、同玉、24馬、12玉、13馬、同玉、
24角不成、12玉、13歩、23玉、33角成、13玉、
24と、12玉、23馬、同歩、13歩、22玉、
33飛成まで19手詰

強力な駒を捨てて、弱い駒に換える。
風みどり作にも共通する着手がありましたが、打歩物ではよくある手順です。

第10問 negitarou

正解
13飛成、同玉、24角不成、12玉、13歩、23玉、
33角成、13玉、35馬、12玉、24桂、13玉、
32桂成、12玉、22成桂、同銀、24桂、13玉、
32桂成、14玉、24馬引まで21手詰

打歩物らしさは24角不成だけですが、24桂、13玉、32桂成が二度現れるあたり、好ましく感じられます。

第12問 negitarou

正解 14歩、同玉、32香不成、47と、15馬、13玉、
14歩、22玉、31香成、52飛、32桂成、同飛、
同成香、同玉、42香成、22玉、33馬、同玉、
32飛、24玉、35飛成、14玉、15龍まで23手詰

同じ作者の第8問が角の限定移動で飛の利きをさえぎる狙いだったのに対して、本局は香の限定移動です。
後片付けの部分の手数がかかりすぎていると思います。
20手を超える手数を支えるのに、32香不成だけでは弱いのではないでしょうか。

第13問 ミーナ

正解
12歩、21玉、32桂成、同玉、33歩、21玉、
11歩成、同玉、32歩不成、55桂、12歩、21玉、
31歩成、同玉、42角、32玉、23歩成、同玉、
24角成、32玉、42と、21玉、11歩成、同玉、
33馬、21玉、22馬まで27手詰

2段目の攻方生桂はあり得ません。行き所のない駒は打てないし、移動した結果、次に移動できない場合も同じです。
これを初めて明記したのは二代宗古の献上図式(1617年)の巻末にある、いわゆる「将棋治式三ヶ条」で、原文はこうなっています。

如此サカ馬ニ入
時ユキ所ナキ
馬アイニ打事
ナカレ

サカ馬は入玉のこと。馬アイニの「馬」は角の成駒ではなく「駒」と同義です。
では入玉でなければ、打てるのか、合駒でなければいいのか、打ってはならないということは移動するのはいいのか、などなど疑問なしとはしませんが…。

このルールを利用した作品で思い出すのは次の図です。

山田康平 詰パラ1993.9


32桂成、同玉、33歩、22玉、23金、21玉、
11歩成、同玉、32歩生、21玉、11角成、同玉、
12歩、21玉、33桂まで15手詰

上図は、残念ながら10手目33歩合、同角成、22歩合とする変長があります。
本局は31に取りごたえのある馬を置くことによって、うまく変長を逃れていますが、主眼部の構図が山田作と同じなので既視感がありました。

「詰将棋つくってみた(106) 課題22:講評」への2件のフィードバック

  1. 2番は線駒の効きを遮断するために、空き王手をしない、
    という狙いです。
    5手目に空き王手をすると、16玉で打歩詰になります。
    序の4手は、空き王手を変化にみせるためで、
    二歩回避はただの偶然です。
    54飛は吟味したうえで、生飛車にしています。

  2. 2番の説明です。
    打歩回避の手段として、攻方の線駒の効きを遮断するという方法があります。8番の64角がそれにあたります。
    2番では5手目の37金左がこの手筋で、空き王手をすると16玉で打歩詰になります。
    序の4手は変化に空き王手をみせるためで、二歩回避は副産物です。
    地味すぎて伝わりませんでした。

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