2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。
選題の言葉(2010.12)
一年て実に早いものですね。忙しい師走はやさ院で和んでください。
前回のやさ院は300手近い大作を出題してしまったが、今回は正真正銘の「やさしい」大学院。多数の解答を待っています。非手数順です。ご不審なきよう。
広瀬作はまさにコロンブスの卵。桂合がないことは初形を見れば明らかですね。
中出作は前半はちと考えさせられますが、後半は爽快なドライブが楽しめます。
佐藤作は歩図式で手数も一番短いが、合駒の綾もあり、ちと手応えあり。しかし作意は明確なので慣れた人には簡単なはず。
☆大失敗をしてしまった。やさ院にあるまじき大量誤解者(22名)を発生させてしまったのである。
☆広瀬作を67手で解答した皆さん。誤解です。以下を読む前に、もう一度考えてみてください。きっと正解に気付くはずです。
☆失敗した原因は、やさ院のコンセプトを明確にしていなかった事。私の責任だ。67手の順ではやさ院であろうと採用される事はない。
☆大反省をして次回のやさ院は大改革をいたします。誤解者の皆様、これに懲りずに引き続きやさ院を応援してくださいますようお願いいたします。
広瀬稔 詰パラ2010.12
99角、77歩成、同角、66歩、同角、55歩、
同角、44歩、同角、33歩、同角上成、同桂、
同角成、21玉、43馬、11玉、44馬、21玉、
54馬、11玉、55馬、21玉、65馬、11玉、
66馬、21玉、76馬、11玉、77馬、21玉、
87馬、11玉、77馬、21玉、76馬、11玉、
66馬、21玉、65馬、11玉、55馬、21玉、
54馬、11玉、44馬、21玉、33桂、31玉、
32歩、42玉、43歩、51玉、52歩、61玉、
62歩、71玉、72歩、81玉、82歩、91玉、
92歩、同玉、93歩、同玉、66馬、92玉、
65馬、91玉、81歩成、同玉、82桂成、同玉、
83桂成、91玉、92成桂、まで75手詰
☆初手33角では1歩不足に陥る。そこで合駒がない事を見越して99角。対してどのように応じるのが最善かというのが本作の総てだ。
☆誤解者は殆ど全員、33歩合と応じた67手詰。
☆実はどうせ後で馬鋸で取られるのならば、突き捨てておけ2手伸びる、と捨合が成立する。所謂「ヤケクソ中合」。もちろん全部突き捨ててしまったら馬鋸が不要になって手数は短くなる。正解は一番遠い87歩だけを残しておくのである。
作者 ヤケクソ中合と馬ノコを組合わせました。
☆この構想、駒台に歩が大量に積上がる。詰将棋にするにはこの歩を消費しなければならない。銀歩送りなどと繋げるのが普通の発想だが、作者は簡潔・最短を選んだ。そこでひたすらに歩を打ち付けていく収束になった。しゃれた一発芸の仕上がりだ。
須川卓二 いや~まさしくコロンブスの卵。87歩だけが残れば途中の歩を捨てたほうが手数が伸びるんですね。
小林 理 なるほど、歩を先につき捨てても、馬鋸の必要性は変わらないわけですね。慥かにコロンブスの卵だ。
原田清実 ヤケクソ中合4連発とは笑えます。まさにコロンブスの卵!
☆以上のような短評がたくさん集まると予想しての出題だった。ところが、22名もの大量誤解者。作者としても決して喜んではいない結果だろう。もし誤解狙いの意図があったのなら、それはそれで凄い新人だ。手品師に鮮やかに騙されるのは楽しい。詐欺師に騙されるのは腹が立つ。どう育つか。
永島勝利 なんか、やさしい顔した詐欺師という感じですが…。
今川健一 綺麗に詰んだぞ、67手。綺麗な花には棘がある。調子よく88歩成と指したの、だーれ?
鈴木 彊 初手99角に77歩成以下歩を突きだして取らせて手数を伸ばし玉方の87歩を残し、馬鋸で手数を稼ぐなど細かな応手には骨が折れました。終盤は2段目に歩を並べて追うなど十分に楽しめる作品でした。
☆そう「初入選おめでとう。次作に期待する」という評もたくさん集まった。このアイデア、筆者は見た記憶がない。次作はさらに新鮮なアイデアを基礎にした本格的な作品を期待したくなる。楽しみだ。
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