高木秀次『千早城』に登る(19)


※この連載は風みどりが1題ずつ高木秀次作品集『千早城』(1993)を読んでいくものです。

第19番 詰パラ 1964.11改

本作、けっこう考えたのだけれど、筆者には解けなかった。
すると内容が「詰将棋入門」と変わらなくなってしまいそうだ。
困ったな……。

どう攻めてもすぐに打歩詰になってしまう。
まずは48飛を活用するために47銀を捌いてしまいたいと思った。

36銀上、44玉、45銀、同玉、

角をどこに動かすかだが、案外選択肢は少ない。37角しかなさそうだ。

57桂、44玉、37角、48桂成、45歩、33玉、

これでまたもや打歩詰の局面。
妄想したのは

23歩成、同桂、46角、35角不成、

しかし35同香で簡単に詰む。23歩成には同玉のようだ。
そのうちにこの順が致命的に間違っていることに気が付いた。

7手目37角に対して46銀という応手があった。

これはどうみても逃れだ。
図面に玉方の持駒も表示しているのでお解りのように、最初玉方の持駒には銀はなかった。
最初に銀を捨ててはいけなかったのだ。

もう少し粘ったのだが、この辺で時間切れとなった。
似たような局面が続き、さらにもう一つの罠があり攻略できなかった。

正解は3手目に銀を捨てずに、45歩と打つ。

45歩、

後から考えてみれば、45銀だったならば35銀、45玉、34銀直、44玉、45銀といった迂回手順も成立する。作意のわけはなかったのだ。(迂回順だから、そうでもないか)

   33玉、23歩成、同玉、14銀、

ここにも罠が潜んでいる。
持駒に歩がたくさんあるので、手なりで次のように進めてしまわないだろうか。

   33玉、34歩、同玉、25銀上、45玉、

【失敗図】

もう既に失敗図である。
実は8手目33玉には34歩ではなく、25銀上と攻める。

25銀上、

   39角成、24角、同香、34歩、22玉、23銀成……

あとは同玉に、35桂、22玉、12香成まで。角・銀を捌く鮮やかな変化だ。
これに気づかないと収束で1歩不足に悩むことになる。

したがって持駒歩4枚で次の局面になる。

57桂、44玉、37角、

45歩~25銀上までの手順はここで46銀合をさせないためのものだった。
おわかりのように玉の手駒には強い駒しか間駒に使える駒が残っていない。

   46飛、

金合は簡単なので飛合を確認すると

同飛、55玉、65飛、54玉、56飛、……

まだ手数はかかるが簡単に詰む。
そこで37角には48桂成の一手となる。

   48桂成、45歩、33玉、

まだまだ解決は遠い。
この局面で14銀が邪魔駒になっている。
この銀がいなければ34歩、23玉、13香成、同玉、14歩、23玉、15桂までの詰み。
しかしこの銀、簡単には消えてくれない。

正解を進めよう。

23銀成、同玉、13香成、同玉、14歩、23玉、
24歩、33玉、

14銀、15香を14歩、24歩に打ち換えた。
このことにどんな意味があるのか?

15角、

はじめは48飛のフロントピースだった46角。
次に37角と39香のフロントピースになる。
そして今度は15角と24歩のリアピースとなった。

   39成桂、23歩成、同玉、33角成、

14銀を消去するためには33に玉を引き戻す手段が必要。
それを実現したのが33角成だ。

   同玉、34歩、23玉、15桂まで33手詰。

46角を37→15→33と捨てる構想—お見事と言うしかない。

上の解説では「14銀が邪魔駒」と書いたが、次の局面を基点と考えることもできる。
4手目の局面だ。

すると邪魔駒は「24歩」となる。
なければ34歩、23玉、13香成、同歩、15桂までだ。

この歩を消去するために、まずは14銀に繰り替え、さらに24歩に戻し、その間に46角を15角に配置変更するというナラティブになる。

『千早城』には初出の記載がなかったが、前回だかの教訓で調べてみたら詰パラに発表されていた。発表時には51歩の配置が無く、9手目35銀と11手目36銀の余詰がある。

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