詰将棋入門(223) 簡素形で強烈な罠

湯村光造 近代将棋1950.11

一見初心者向きの5手詰のようだが……。

19玉、38金で持駒に角がある。
これは遠くから角を打つ形だ。
ところが46龍が73角を阻害している。

16龍、

49龍、29飛、同龍、同玉、39飛、18玉、19飛……という筋も良くあるが、本作は49香があり縦には龍を捌けない。したがって16龍と横に捌く一手だ。

   同香、73角、

これで角を成れば終了。
……というのが、実は罠なのだ。

(16龍、) 17金、

【失敗図】

この限定間駒で痺れている。
同龍は同香成で守りが堅い。
73角でも29玉で28角成、同金だ。

実は初手から間違っていたのだ。
正解は……。

37角、

平凡な37角!
見事に裏をかかれた。

   18玉、28金、19玉、29金、

   同玉、26龍、38玉、28龍、49玉、
48龍まで11手詰。

【誤解図】

龍切りと見せかけて、実は平凡に龍を活用する順が正解か。これはしてやられたな……と納得してしまったら、まだ作者の罠から抜け出せていない。

   28歩、

28金を拒否して、2手目は28歩の間駒が正解だ。

同角、29玉、39金、18玉、

18玉では19歩から3手詰だから29玉と逃げる。
……26龍を拒否してと書くべきだったか。

38金、

攻方の好手は38金の一手だけだ。

   同玉、37龍、49玉、39龍まで13手詰。

筆者は傑作だと思うが、『Limit7』には収録されなかった。
たぶん理由は攻方の好手が少なかったからだろう。

同じ作者による兄弟作がある。
こちらは中合を作意にした23手詰。
こちらも双方に邪魔駒消去が登場する面白い作品だ。

湯村光造 近代将棋1951.6

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