2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。
井上徹也 詰パラ2011.3
{89龍、97玉、99龍、86玉、88龍、96玉、
98龍、86玉、87龍、95玉、97龍、84玉、
86龍、94玉、96龍、84玉、85龍、93玉、
95龍、82玉、84龍}=甲、
71玉、72歩、62玉、73龍、
{52玉、53龍、41玉、51龍、32玉、
31龍、23玉、21龍、13玉、11龍、23玉、
24歩、同玉、22龍、35玉、33龍、46玉、
36龍、57玉}=乙、
56龍、68玉、67龍、79玉、69龍、88玉、
甲、72玉、73龍、61玉、62歩、乙、
56龍、68玉、67龍、79玉、69龍、88玉、
甲、71玉、72歩、62玉、73龍、乙、
47龍、68玉、67龍、79玉、69龍、88玉、
甲、72玉、73龍、61玉、62歩、乙、
56龍、68玉、67龍、79玉、69龍、88玉、
甲、71玉、72歩、62玉、73龍、乙、
37龍、68玉、67龍、79玉、69龍、88玉、
甲、72玉、73龍、61玉、62歩、52玉、
53龍、41玉、51龍、32玉、31龍、23玉、
21龍、13玉、11龍、23玉、24歩、同玉、
22龍 X23歩、25歩、35玉、33龍、46玉、
36龍、57玉、27龍イ68玉、67龍、79玉、
69龍、88玉、89龍、97玉、98香まで305手
イ66玉は67香、55玉、54金、46玉、47龍、35玉、44龍まで銀余
X 35玉は33龍、46玉、36龍、57玉、27龍、46玉、36龍、57玉、47龍、68玉、67龍、79玉、69龍、88玉、89龍、97玉、98香迄307手歩余り
☆先月号で基本的な馬鋸の構図から新鮮な手順を見せてくれた井上さん。今月の作品の狙いをこう語る。
作者 龍追いは長手数のための手段として使われる事が多いように思います。この作品は龍追いの趣向手順自体で新味を出そうという試みです。
☆いきなり始まる左辺の追い落としが初めて見る手順で新鮮だ。龍鋸+玉鋸といった動きがユーモラス。
☆手順に上辺を右に追い、23玉でちょっと考える。1筋に歩が利かないので21龍と追うしかない。22歩合だと結局24歩同玉22龍で歩を消費せずに追うことができる。したがって合駒せずに13玉とよろけるのが正解だ。
☆11龍23玉に24歩と1歩消費して右辺を追い上げる。歩がもっと大量にあればこの順も繰り返したいところだが、18枚という制約の下ではやりくりが難しい。かくして1周50手の長大なコースが明らかになった。
☆龍追いのルートを確保するのは角という先入観に囚われていた筆者をはじめとする頑迷固陋な人間にはここまででも十分衝撃だ。
昭和三十六才 フェイント付高速ドリブルのようなスタートからスタミナの固まりのような龍が6周を走り抜く。
小山大貴 龍追いの途中2カ所で龍鋸とはびっくり。1サイクルごとに62歩と72歩が入れ替わる事でこの長手数を実現しているのですね。
鈴木彊 龍による追い回しは非常に面白いです。
☆さらに本作には、回転させるエンジンにも秘術が込められている。エンジンを回す燃料は47歩~27香であることは明らかだ。とすると3回転で150手程度の手数が予想できる。ところが作者は6回転300手を実現しているのだ。その秘密を解明しよう。
☆図で47龍と剥がしたいが、66玉、67龍、55玉、54金、45玉、47龍、34玉でなんと詰まない。66玉の変化には67歩と攻めれば簡単なのだ。しかし、67には既に玉方の駒が居る。56龍からこの歩を先に消去する為、もう1周するしかないのだ。
☆今度は62歩の為67歩が二歩。
中沢照夫 回転型龍追いと連取り。合駒きかずを利用した巧みな龍追いで1周50手の長サイクル。2歩禁を利用し、2周に1回の駒取りとした所が素晴らしい。序も収束もなく趣向を純粋に楽しめる。
☆この局面に至ってやっと47龍とすることができる。66玉なら67歩55玉54金まで。
同様の原理で次の37歩を剥がすのにも2周する必要があるのだ。最後は香なのですぐ取る事ができる。
神谷薫 剥がす駒は僅かですが62歩の有無で回転数を稼ぐ仕組みが巧みで驚きの300手越えを実現。
深和敬斗 72歩が残るサイクルでは駒を剥がせるが62歩が残るサイクルでは二歩禁のため剥がせないという簡易ながら巧妙なロジックに感動しました。「1/2置き駒消去」とも言える新趣向を解く事ができて幸運でした。
☆局面の僅かな差異で回転数を増やす技術は勿論看寿の「寿」という金字塔があるが、近年添川公司、田島秀男らが持駒でなく盤面の差異で実現する新鮮な作品を開発。いわば最先端の技術を利用した作品といえる。
躑躅 290手目、35玉で変長ではないでしょうか。(作意手順と違い27龍に46玉が成立して4手稼げるため)それを差し引いても素晴らしい作品ですが。
☆46玉を見落とした。気付いていれば出題時に断ったのですが。申し訳ありません。
名越健将 1ループ50手の構想
斎藤博久 2歩禁を利用した龍追いは新鮮。
須川卓二 62歩の有無で回転数が増えるとはなかなか見慣れない感じ。収束への仕掛けは単純でも300手越なんだからちょっと凝ったら千手越えも可能な気もします。
永島勝利 67歩が打てるかどうかで2種類の龍追いを使い分けるとは芸が細かいですね。なかなか面白かったです。
国兼秀旗 6筋の歩が切れている瞬間には67歩が打てることを見越して、2周に1度だけ7段目の歩を除去する機会が巡ってくるところに面白さを感じる。単なる龍追いに止まらず、龍鋸まで加えたところにも作者の充実振りが伺える。
鈴木章夫 面白い右上の攻防を経て、見事な周回が成立した。
加賀孝志 こういう作は1回転+収束の手数解答でOKにしてください。収束の乱れが気になる。
小川千佳夫 様々な龍鋸の中では1回転の手数が長いのが特徴。構想そのものは単純なので、もう少し手数が伸びる可能性もありそう。
竹中健一 ちょっとした違いでこんなに手数が伸びるとは不思議!
野口賢治 二歩禁解消の原理は至って簡単明瞭。手続きに時間がかかるのは世の常世の習。
小林徹 普通なら4サイクルの所、二歩禁を利用して6サイクルに伸ばす。手順がしっかりと限定されているので解後感がよろしい。
宮本慎一 龍鋸で追い回す。
和田登 最終手の駒27香を取るための壮大な竜の旅
鈴木孝太郎 最初は歩が余って困った。66王に67歩が2歩に気づき消化も、結局最後の1歩の使い道で悩む。竜と歩だけでこんなに追えるとは面白い。
池田俊哉 正しく「1/2回転龍追いはがし」と言う事になるだろうか66玉変化のときの二歩禁防止というシンプルな意味づけでの6回転は素晴らしい。ただ、この収束は仕方ないとは言え評価が難しいところ、作者はあまり収束にこだわらないタイプかと。
今川健一 竜追い+竜鋸の趣向で駒を剥がしてゆく。創るのは大変だろうが、解くのは意外と簡単。でも、長手順、解答書きでは苦労します。作者の願いは、最後は23歩合して下さい、ですね。でも、「最長に逃げる」がルールなら、35王も正解でしょうか?
鈴木彊 8筋9筋の追い方はユニークです。21龍に対して22歩合いとするのは攻方に歩が入るので余詰となる。21龍22歩合い24歩13玉11龍24玉22龍さらにここで23歩合いとするのは25歩35玉33龍となり早詰めとなる。それでも最後に23歩合いをいれたのはうまいです。これをうっかりしていて1歩余るのでずいぶん悩みました。調子に乗り歩合いはないものと思っていたもので先入観とは恐ろしいものです。また72歩と62歩の存在も攻め方が47歩37歩を龍でとれるかどうかとなっているのでした。62歩があると37龍の時は66玉と逃げられ67歩と打てないので詰まなくなります。こうしたワナをかいくぐっての追い回しでかなり神経を使いました。