長編詰将棋の世界(30) 馬鋸で銀剥がし

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

井上徹也 詰パラ2011.2

棋譜ファイル

41角、21玉、22歩、11玉、12歩、同玉、
23金、11玉、21歩成、同玉、32角成、11玉、
33馬、21玉、
{43馬、11玉、44馬、21玉、54馬、11玉、
55馬、21玉}=
{22歩、11玉、12金、同玉、56馬、22玉、
23銀、31玉、32歩、21玉、A12銀不成、32玉、
23馬、43玉、34馬、32玉}=
X23銀成、21玉、
{65馬、11玉、66馬、21玉、76馬、11玉、
77馬、21玉、87馬、11玉、88馬、21玉}=
、23銀不成、21玉、
98馬、11玉、88馬、21玉、87馬、11玉、
77馬、21玉、76馬、11玉、66馬、21玉、
65馬、11玉、55馬、21玉、54馬、11玉、
44馬、21玉、43馬、11玉、33馬、21玉、
32銀不成、12玉、34馬、22玉、23銀不成、21玉、
12銀不成、31玉、32歩、同玉、23馬、43玉、
93龍、52玉、34馬、62玉、54桂、72玉、
61馬、81玉、71馬、同玉、73龍、81玉、
82歩、91玉、92歩、同玉、93歩、91玉、
71龍まで153手詰

23香は同馬、同玉、34銀、22玉、23銀打以下
23角は同馬、同玉、34銀で
・22玉は33銀打、11玉、12歩、21玉、32角以下
・12玉は23角、22玉、33銀打以下
桂合は品切れ
A 22歩は同銀、同銀成、同玉、23銀、13玉で不詰
X 生でも可。非限定。
31玉は32歩、21玉、22歩、同銀、同成銀、同玉、23銀、13玉、24馬迄この為に馬を34まで戻すことが必要。
同香は44馬で
・72玉は54馬、61玉、63香、51玉、91龍、42玉、43歩、33玉、34歩、22玉、21龍迄
・51玉は52歩、41玉、42歩、31玉、32歩以下

☆初形を見るに、如何にも基本的な馬鋸の構図。手順を進めても、これは無住遷逸の作品か。作者名が間違っているのではないかと疑ってしまう。

☆ところが55馬まで進めてはたと困る。56銀が邪魔で、65馬と進めない。

☆そこで22歩から12金と捨て強引に56銀を喰ってみると、あら不思議、また最初と殆ど同じ形にもどるではないか。

☆見慣れた風景からこんなファンタスティックなストーリーが紡がれるのかという驚きが本作品の生命。それを支える理論が変化イとロおよび紛れAだ。決して複雑なものではない。むしろ単純明快。そこにこの作者の才能の煌きを感じるのは私だけではないはずだ。

神谷薫 56銀89銀は素晴らしいアイデア。基本馬鋸でこんな付加価値がまだ残っているんですね。
須川卓二 馬鋸の行く手を阻む銀2つをいつの間にか見方に引き込み道を開く。私自身見た事のない手順でまだまだ新手筋は眠っているんですね。A
鈴木章夫 遠方に離れた馬を2度に渡って呼び戻すとは…。素晴らしいアイデアだ。
中沢照夫 途中道草付きの馬鋸。こんなバリエーションが可能とは驚き。左辺での収束も余分な配置がなく実にスマート。

☆趣向成立の仕掛けである46桂を捌き、主役の馬を消し去る収束を51香1枚で成立させている。このセンスの良さが解答者を痺れさす。

作者 新鮮味はありませんが、結構好きなタイプの作品です。もう一枚銀を剥がす構成にもできますが初形と手順のバランスを考えた結果この図が最適と判断しました。

加賀孝志 馬鋸も色々なバリエーションが有る。収束決まればすべてよし、となるが、歩の中合が無駄合になるのはどうも納得いかず。

☆このような声が他に出なかったのも仕上げの巧さといえよう。

池田俊哉 馬鋸による銀剥がしと言えそうか。

☆そう。銀は邪魔駒に見えるが実はそうではない。試みに56と89の銀を両方共消すと不詰だ。

鈴木孝太郎 馬の通り道の邪魔駒が双六で云う振り出しに戻れ的で面白いし、簡素な配置も良い。
武田静山 銀の配置が高山登山の山小屋のようであるが、その都度下山しなければならないのが辛い。
今川健一 なかなか98歩が取れない。いささか、いらいら感がつのる。収束に主役の馬が消える、これは好印象。これまた、良く出来た馬鋸、詰棋の奥深さを知る、です。

☆歩の数が合わなくて苦労という声があった。

佐藤次衛 趣向は分かっているのに苦労して解きました。歩が余るのではと途中何回もやり直し、やっとその意味が分かり、解後感はスッキリした気分です。

小川千佳夫 最後で歩が余ってしまい数回やり直した。作意は馬鋸が数回入り、とても楽しめたので、作者に感謝です。
名越健将 歩7枚しか要らないなあと思っていたら、31玉で馬鋸が2回引き戻される所が斬新だと思いました。

☆危険なポイントはイの変化。角合は34銀で早いのだが、41角と打つと12玉となり作意につながり歩が余る。また32歩合の無駄合をした方もいらっしゃった。(こちらは正解扱い)
☆大勢の手垢がついた基本の構図。そこからでもまだまだ新鮮な作品を掘り出せるぞという作品。頼もしい限りだ。

永島勝利 23の地点での折衝が多少厄介だが、後は平易。どちらもそうだが、歩の連打の収束は気持ち良い。
和田登 56銀、89銀の配置が馬鋸をおもしろくしている
鈴木彊 馬鋸で98歩を消去する過程で56馬89馬と銀を入手して馬鋸を2度も中断させ、巧みに馬鋸に回帰するなどの趣向があり味わい深いものがあった。収束も99龍に出番が回り46桂の活用と馬捨が入るなど見事に決まっていた素晴らしい作品であった。
池田俊哉 馬鋸による銀剥がしと言えそうか。銀を剥がした後いったん右上の局面がリセットされる構成が良い。収束で歩の数が合わなくなりそうで少し悩んだ。
斎藤博久 馬鋸による龍の脱出作戦。
野口賢治 金→銀→銀のつなぎ部分では23地点まで走らねばならぬ馬鋸が泣かせる。
宮本慎一 結構手こずったなもう。ややこしい。歩が多すぎる馬鋸。
竹中健一 これは分かりやすく、楽しめる作品。リズム良く詰み上がりました!
賀登屋 収束の馬の押し売りなど面白い点はあるが、平凡にも思えた。
昭和三十六才 途中2回銀を取るために迂回するところがいいアクセントになっている。
中沢照夫 途中道草付きの馬鋸。こんなバリエーションが可能とは驚き。左辺での収束も余分な配置がなく実にスマート。平易な収束ではないが。
落合達哉 左下の駒をすべて取るまでの馬の動きを支える手がすごい。
国兼秀旗 隅の牢獄に幽閉された龍を解放するために、馬が千里を走る活躍を見せる本作はまさにドラゴンクエストといった趣である。行く手を阻む2枚の銀を馬自らが退治し、最後は盤上の露と消える様は儚くも美しい。新しさを追求するのが困難な馬鋸ではあるが、作品に描かれる世界如何でまだまだ可能性があると感じる。

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