詰将棋つくってみた(172)
 課題36:講評

Judge:井上徹也

 今回の課題はリピート趣向。 今までの課題の中でも抽象的なので投稿が集まるか心配でしたが、本職の趣向作家に支えられた事もあり十分な数の作品が出題されました。 どれも課題通り趣向の面白さが感じられる作品です。

 『詰将棋つくってみた』の本来の対象である創作駆け出しの方には、1ヶ月という募集期間は短かったかもしれません。 まずは講評や結果発表を読んで趣向という分野を楽しんでもらえると嬉しいです。 こういう分野があると頭の片隅に置いておくと詰将棋活 動の中で「この手順を繰り返したら面白いかも」 「この繰り返しの仕組みは意外性があるかな」 など創作の種に出会えるかもしれ ません。 趣向に限らずどんな思いつきでも形にしてみる事が大切です。 つくってみましょう。

最優秀作

第9問 馬方四季

正解
13龍、23馬、33龍、同馬引、63銀成、同と、
64桂、78馬、同香、77馬、同香、76歩、
同香、同銀、72桂成、同成桂、同成桂、83玉、
63龍、同香、92角、94玉、83角打、93玉、
85桂、同銀、94歩、同銀、同角成、同玉、
83銀、93玉、85桂、同歩、94歩、84玉、
74銀成、94玉、83角成まで39手詰

 ヤマ場は龍の横利きを通して打歩誘致するため、馬が伸びやかに動く中合のリフレイン。その上、印象的な捨駒を含む手順で主役の馬たちを大きく動かす序盤も入り、構想の表現として完全な姿になっています。 収束では溜め込んだ持駒をリピート趣向的な剥がし手順を用いて的確に処理しているのも見事です。

 作者が最近発表した新テーマ (詰パラ2023.8 デパ)の応用で、実験作の雰囲気を纏う前作に比べ本作は詰将棋らしい仕上がり。 着想と構図が素晴らしく、長く楽しめる作品になりそうです。

優秀作

第5問 武田裕貴

正解
14飛、13角、同飛成、同玉、31角、22銀、
同角成、同玉、31銀、13玉、14歩、同玉、
16龍、15金、13金、同玉、15龍、14金、
12金、同玉、14龍、13角、同龍、同玉、
22角、14玉、25金、23玉、33角成、同玉、
34金まで31手詰

 短編かと思える簡潔な配置に驚くほど濃密な手順が組み込まれていました。 2回の逆王手を連続金合で繋ぐ虫の良い手順が良く実現したものです。 技術的には31角、22銀の応酬がポイントで、この手順のヒラメキで完成図までの逆算を一気に手繰り寄せた印象です。 作者の美意識が垣間見える完成品でした。

講評

第1問 negitarou

正解
13金、11玉、21桂成、同玉、33桂不成、11玉、
21桂成、同玉、14桂、31玉、21龍、同玉、
22桂成まで13手詰

 13手という短い手数ですが、 桂の成捨・跳ねで趣向の雰囲気が十分伝わります。 最後に21龍の捨駒が入ってグッと引き締まりましたね。

第2問 松田圭市

正解
33飛成、同龍、43歩、同龍、24馬、33龍、
34桂、同銀、43歩、同銀、51銀不成まで11手詰

 龍と銀の小味な動きが楽しめます。 惜しむらくは散漫な配置で、手順が地味に見えてしまいます。 ここをスッキリした構図で実現できれば全く違った印象の作品になったでしょう。

第3問 keima82

正解
13飛、25玉、23飛成、16玉、13龍、14飛、
17歩、25玉、14龍、同玉、13飛、25玉、
23飛成まで13手詰

 自然に手順を進めるとアラ不思議、17歩が発生しています。 シンプルすぎて物足りないきらいはありますが、これはこれでアリだと思います。

第4問 negitarou

正解
24金、同玉、34金、同玉、44金、24玉、
34金、同玉、33角成、同玉、34金、同玉、
64龍、33玉、44龍、42玉、52香成、同玉、
53龍、41玉、51龍まで21手詰

 捨駒の繰り返しで金4枚を消し去る狙いですね。 持駒金の捨て方が単発で味消しに思えるので、11手目44金~34金とすり寄る表現はあったかもしれません (全然違う作品になりますが)。

第6問 ミーナ

正解
55金、同玉、56馬、54玉、65馬、45玉、
63馬、34玉、56馬、43玉、52馬、54玉、
65馬、45玉、63馬、34玉、56馬、43玉、
55桂、42玉、43桂成、同玉、52馬、54玉、
65馬、45玉、46歩、同玉、56馬、36玉、
25馬まで31手詰

 2枚馬で玉をお手玉する軽趣向です。 収束の鍵が桂を犠牲に42歩の原型消去をするというのがとても良く、謎解き風味で良いスパイスになっています。

第7問 やよい

正解
69歩、同桂成、58金、同玉、67角、68玉、
78馬、57玉、58歩、同桂成、47金、同玉、
56角、57玉、67馬、46玉、47歩、同桂成、
36金、同玉、45角、46玉、56馬、35玉、
36歩、同桂、25金、同玉、34角、35玉、
45馬、24玉、23角成、25玉、34馬上まで35手詰

 玉角馬の3人グループで階段を登っていく趣向です。 3回の金打が紐なしの焦点捨てなのが良く、手順が活きていると感じました。 6手目47玉の変化で角がスイスイ進む含みもあり、ちょっとしたものです。

第8問 やよい

正解
87銀、75玉、86銀打、74玉、85馬、65玉、
76馬、56玉、67馬、65玉、76馬、74玉、
85馬、65玉、66歩、同玉、77金、56玉、
67馬、65玉、76馬、74玉、85馬、65玉、
66金、同玉、67馬、65玉、76馬、74玉、
85馬、65玉、77桂、56玉、67馬、47玉、
37金まで37手詰

 65玉型の時に66歩や77桂で局面を進行させたいのですが、67馬、65玉の直後にすると54玉と逃げられるため85馬の形にしておく必要があります。 この理屈でモドカシイ馬の動きが面白く表現されています。

第10問 川蝉

正解
11桂成、同玉、21桂成、同玉、32桂成、同玉、
43香成、21玉、32成香、同玉、43香成、21玉、
32成香、同玉、43香成、21玉、32成香、同玉、
43香成、21玉、32成香、同玉、43飛成、21玉、
22歩、11玉、13龍、同龍、21歩成、同玉、
22金、同龍、同桂成、同玉、23飛、11玉、
12歩、同玉、13金、11玉、22金まで41手詰

 例題に手を加えて桂香8枚を全て捨て去る趣向に改造した作品。無から有は生み出せないので先行作を参考に色々と遊んでみるのは良い事です。香を消すサイクルに他の手順を組み込めないか等、想像の翼を広げてみてください。

第11問 川蝉

正解
94飛成、75玉、85龍、66玉、76龍、57玉、
67龍、48玉、58龍、37玉、38龍、46玉、
47龍、55玉、56龍、64玉、65龍、73玉、
74龍、82玉、92香成、71玉、72龍、同玉、
82飛、73玉、62飛成、84玉、82龍、75玉、
85龍、66玉、76龍、57玉、67龍、48玉、
58龍、37玉、38龍、46玉、47龍、55玉、
56龍、64玉、65龍、73玉、74龍まで47手詰

 成駒が無い初形が美しいです。 古来からある龍追いの構図ですが、感じの良い捨駒での折り返しや四桂が消える変化もあり好感が持てますね。

第12問 本間晨一

正解
66金、同玉、77金、同玉、99馬、88香、
66銀、同玉、88馬、77香、55銀、同玉、
77馬、66香、44銀、同玉、66馬、55香、
33銀、同玉、55馬、44角、34香、23玉、
24香、12玉、22香成、同角、同馬、同玉、
24香、23歩、33角、12玉、23香成、同玉、
15桂、12玉、22角成、同玉、24香、11玉、
12歩、同玉、23桂成、11玉、22成桂まで47手詰

 都玉で安定した初形から、疑似オーロラとも言うべき四香合が現れます。趣向は類型がある形で目新しさはありませんが、四香を持っての収束は力が入っており大駒を捨てて綺麗に捌けます。

第13問 やよい

正解
95歩、83玉、84歩、74玉、75銀、同玉、
86金、74玉、85金、同玉、77と左、74玉、
75歩、同玉、86と、74玉、85と、63玉、
64歩、54玉、55銀、同玉、66金、54玉、
65金、同玉、57と左、54玉、55歩、同玉、
66と、54玉、65と、43玉、44歩、34玉、
35銀、同玉、46金、34玉、45金、同玉、
37と左、34玉、35歩、同玉、46と、34玉、
45と、23玉、24歩、14玉、15歩、同玉、
26金、14玉、25金、同玉、17と、14玉、
15歩、同玉、26と、14玉、25とまで65手詰

 玉が4本の川を渡る送り趣向のバリエーション。 並べて楽しめ る作品ではあるのですが、32飛や39となど不動の配置が目につき、実力ある作者の趣向詰としては少し物足りません。

第14問 本間晨一

正解
84金、同桂、93飛成、74玉、75金、同桂、
84龍、65玉、66金、同桂、75龍、56玉、
57金、同桂成、66龍、47玉、57龍、38玉、
48龍、27玉、18龍、37玉、57飛、47歩、
同飛、同玉、48龍、56玉、57龍、65玉、
66龍、74玉、75龍、83玉、93歩成、同玉、
84龍、92玉、93歩、91玉、83桂、82玉、
74桂、72玉、62桂成、同と、74龍、73角、
84桂、82玉、92歩成、同と、94桂、93玉、
92桂成、同玉、93歩、同玉、82銀、同角、
84龍、92玉、82桂成、同玉、93角、92玉、
91桂成、同玉、82角成まで69手詰

 定番の龍追い一往復に桂跳ねを絡めた趣向作。持駒が強いため追加配置が何枚も必要になったようで作者の苦労が窺えます。 最後は狭い所で持駒を使い切り力を示した恰好でしょうか。

「詰将棋つくってみた(172)
 課題36:講評」への2件のフィードバック

  1. 講評、勉強になりました。初手をいれないほうが良かったのかもしれません。

  2. 第8番のやよい作が好み。単純だけどややこしい、そんな感じがとてもいい。

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