長編詰将棋の世界(42) モジュールまるごと変化伏線

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

選題の言葉(2011.7)

 毎年、全国大会が開催されるなんて昔は考えられなかった。詰将棋は一人で遊ぶものという考え方が主流だったからだろうか。しかし、作家にしても解答者が居てくれるからこそ、解答者にしても作家が居てくれるからこそ、詰将棋で遊ぶ事が出来る。年に一度、互いの存在を確認するだけでも有意義であろう。
 若島正「上田さんと長いあいだ(考えてみたら、45年ほどになります)一緒にお付き合いして、互いに刺激を得ながら、こうして詰将棋やチェス・プロブレムを作り続けてくることができたのは、生きていてよかったと思える最大の理由です。そのささやかな記念として、今回の作品を投稿します。」
今月の作者には会場で会えるはずです。

上田吉一 詰パラ2011.7


56飛、同玉、57歩、55玉、56歩、54玉、
55歩、ロ同玉、58龍、56飛、同龍、同玉、
54飛、55飛、同飛、同玉、A53飛、54飛、
同飛成、同玉、34飛、55玉、35飛、56玉、
36飛、57玉、37飛、56玉、57歩、55玉、
35飛、54玉、34飛、55玉、56歩、同玉、
54飛、55飛、同飛、同玉、58飛、56飛、
同飛、同玉、58飛、57飛、同飛、同銀生、
54飛、55飛、同飛、同玉、53飛、54飛、
66成桂、同銀成、54飛成、同玉、53飛、同玉、
43成桂、62玉、61成香、同玉、62銀、同玉、
95馬、71玉、73香、62玉、72香成、同玉、
83銀左成、61玉、62馬、同玉、73銀成、61玉、72成銀
迄79手詰。

同銀成は66圭、同玉、77馬、56玉、45角迄
同銀生は67圭、同桂成、同龍、55玉、56香迄
53玉は43香成、62玉、61杏、同玉、51圭以下。
A 58飛は57角合で逃れ。
同銀生は同飛、同玉、46銀、56玉、66圭以下。

☆5筋に閉じ込められた玉。合駒の選択も易しい。飛打ち飛合のリズムを楽しみながら自然に作品世界に入り込む事ができる。すんなり解けてしまった方も多いだろうが、解決には二重に掛けられた錠を開かねばならない。

☆メインの錠は59馬を如何に活用するかだ。質駒に見える95香を入手するには68銀と77圭を片付ける必要がある。

途中図A(12手目の局面)

☆その為に56玉に対し、58飛と攻める。57飛、同銀生と銀を移動させようというわけだ。

☆ところがこの錠、二重に掛けられている。58飛には57角合とされて詰まないのだ。

☆そこでこの局面から32手かけて魔法のように35歩を消す。この手順ブロックが変化伏線になっているという仕組みだ。

途中図B(44手目の局面)

☆最後の鍵は77圭を捨てるタイミング。正解は55玉に対し、飛合を予約してから66圭と捨てる。先に捨てたら桂合されるので当然なのだが、巧いものだ。

☆そして53飛や62馬と短編のように鮮やかに大駒を捨て去っての収束。

高坂 研 57角合の変化に備えて35歩を消去し、68銀を動かしてから更に53飛-54飛の形で66成桂と捨てることで、漸く59-95のラインが貫通して収束に至るというストーリーは十分に面白く、全体を通して作品の構造を解明する愉しみに溢れている。纏め方もまさしく長編のお手本のようで、流石は上田さん!
草間準二 角打ちを妨げる35歩の配置が凄い。この歩のお陰で、いやこの歩を置いた事で本作は長篇作となった。この歩を消去し、57に打つ。ロジックや図形感覚が鋭い一方で、解き手にホッとした喜びを与えてくれる。本当のエンターテイメントだと思う。
鈴木 彊 飛による王手24回。その間飛合が8回。飛と龍による攻防は詰将棋の醍醐味十分。正に芸術そのものです。収束も決まっていました。
竹中健一 全て飛合だと思っていると角合をウッカリしそうになります。あの歩をうまく消すものですね、感心します!
水谷一 12手目の局面から57に角合をさせないよう35歩を消去して44手目の局面へ。難しくないが面白い趣向。
小林 徹 57角合に備えた35歩の消去がメインテーマ。難しくはないですが、十分楽しめます。
斎藤博久 馬を世に出す為の飛による趣向は高級手順。
原 雅彦 角合に気付かず51手で詰ましてました。
国兼秀旗 どの変化も易しく、自然に作者の意図した面白い手順へと吸い込まれていくのが実に爽快である。
凡骨生 飛(龍)の王手に飛合8回にエレベーター詰を絡めてあり楽しめました。

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