高木秀次『千早城』に登る(31)


※この連載は風みどりが1題ずつ高木秀次作品集『千早城』(1993)を読んでいくものです。

第31番 詰将棋パラダイス 1950.8

 この連載は非力な筆者が苦労しながら『千早城』に挑戦するという趣旨。解答初心者でものたうちまわりながら中編作品にも挑戦してみようという気持ちを喚起したいという狙いがある。
 もちろん歯が立たない場合はちょっとカンニングしながら進めていく—のだが、本作は「知っている」。
『この詰将棋がすごい!2019』に「1歩入手方法の研究」という小論を発表したのだが、その中で取り上げている作品だ。困ったなぁ。そういえば4~5作は髙木秀次作品を取り上げた記憶がある。

でも、まぁ、そもそも『千早城』を買ったときに一度は並べた作品ばかりなのであるから、そして自慢ではないがこの脳味噌はとても忘れる機能が優れているのであるから、いつも通り行こう。

25とでは17玉で後続手がないから、序盤は次のようにいくしかないだろう。

16と、同玉、15と、17玉、16と、18玉、
17と、29玉、

ううむ、この局面。
どうしてもナニカを感じてしまうが、まぁ一度は紛れに進まないことには話は進まない。

39金、同玉、48銀、同玉、57馬、同玉、
58金、66玉、77角、76玉、

自然な流れだ。
次は当然見えている質駒をいただく。

33角成、78と、43馬、86玉、87金、95玉、
95銀、84玉、83と、同桂、

打歩詰で行き止まりとなる。
本当ならここからこの作者が提出した謎の解明が始まるのだが……今回はダメだ。
いまさら忘れることはできない。
サクッと正解を解説することにしてしまおう。

12龍と42飛が活躍していない。
ではどう活用するのか。

まずは9手目に23龍と捨てる。

同成銀でのちのち33角成と入手できなくなってしまう。
その代わりに13手目に32飛成と捨てておく。

同歩と取らせることによって歩を質駒にしておく。
この4手の伏線が、作者の狙いだ。

すると33角成、78と、32馬と歩を持駒にすることができる。

さてここから考えてみたが、もう収束なのでさほど難しくはなかった。

32馬、86玉、87金、95玉、96歩、84玉、
83と、同桂、85歩、

96に打った駒が銀ではなく歩になったので、85歩が打てた。

   同玉、41馬、84玉、74と、同香、
51馬、85玉、97桂まで41手詰

不利交換という手筋は持駒をダウングレードするものだが、本作はそれを伏線の形で表現している。持駒になる前にダウングレードするわけだ。不利取駒というべきか。いや伏線というポイントが大事だな。

本作の発想は図巧第17番であろう。
看寿は桂2枚を捨てて入手する駒を香から歩に変更した訳だが、本作は飛車2枚を捨てて入手する駒を銀から歩に変更する。
捨駒もスケールアップし、入手する駒のダウングレードも大きくしたことになる。

完全ならば傑作に間違いはない。
(ただし、作者は本作を第1編に選んでいる)

完全ならばと言うのは本作には2つの穴が開いているのだ。

一つ目、9手目28金以下早詰。

同玉に46馬に37金合しかなく、27と、同玉、37馬、同玉、17龍で簡単に詰む。

二つ目、26手目65歩合で不詰。

同馬と近付けることにより63方面から覗くことができなくなり詰まない。

ちょっと修正案を考えてみたが、簡単そうに見えて難しい。
いい案があったら教えてください。

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