高木秀次『千早城』に登る(32)


※この連載は風みどりが1題ずつ高木秀次作品集『千早城』(1993)を読んでいくものです。

第32番 

 本作は出典についての記載なし。T-Base で調べてみたがヒットしない。(どなたかから教えてもらえるのを待とう(怠惰な姿勢))

 結論から書いてしまうと、本作は非常に易しい。以下を読む前に自力で解いてみることをお勧めする。(詰将棋解答選手権2024で1点の)私でさえ殆ど渋滞することなく作意には到達した。

 初形を眺めると、初手は歩を打つしかないし、その後も香を喰って香打ちの繰り返しで玉を引き出すしか手がなさそう。

12歩、同玉、13金、同玉、14香、同玉、
15金、同玉、

途中、「34銀は捨てておくのか?」と予感がしたが一応単純に進めてみたら、やはりすぐに行き止まり。16香、24玉、26龍までで終わりやん…とうっすら考えていたのだが(アホ)53馬がいた。
74歩としても合駒がもらえるわけでもなく85とで意味なし。
 やはり43角の利きは通しておかないとね!

初手より
12歩、同玉、23銀成、

 11玉と戻れば21角成の奇麗な決め手がある。

   同香、13金、同玉、14香、同玉、
15金、同玉、74歩、

 角筋を通したので16龍と香を手駒にしたまま追える。さらに74歩も突いておこう。
85飛が完全にアウェイにいるので、ここで歩を突いておかないと出番は永遠に来ない気がするんだよね。

   85と、16龍、24玉、25龍、33玉、
34龍、

 ここで22玉の変化を確認しておく。32角成~12香で簡単。

   42玉、32龍、51玉、52角成、同馬、
61金、同馬、

 ここまで一本道。ここで初めてちょっと考える。すなわち

  • 61銀成として61玉に持駒角香で攻めるべきか。
  • さきに55香と打って52間駒、61銀成、同玉、52龍と間駒をもらって攻めるか。その際に53角打を嫌って53に中合という展開はあるか。

 迷ったときは単純な方から片付けていこう。

61銀成、同玉、82角、81玉、72龍、同玉、
73歩成、

 あれ? 詰んでしまった。

    81玉、71角成、同玉、62香成、81玉、
72成香、91玉、82と迄41手詰

 11手目の☗74歩が33手目に☗73歩成を実現させるための伏線だった……と書けば高木秀次作品という雰囲気がでるが、85飛・75歩の仕掛があからさまで誰でも☗74歩は指すだろう。ちょっと高木秀次作品としては物足りないと断言してしまうのは無責任な鑑賞者の特権である(真似はしないように)。

 で、『千早城』を開いて答合わせをしてみると、高木作品らしい難解性は☗74歩に対する⛉25間駒の変化にあったようだ。下の動かす将棋盤には柿木の解を入れておいたが、たしかにこの変化の方が作意の何倍も難しい。真面目に変化を読む人には手応え充分の作品かもしれない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください