高木秀次『千早城』に登る(33)


※この連載は風みどりが1題ずつ高木秀次作品集『千早城』(1993)を読んでいくものです。

第33番 詰パラ 1955.01改

 本作はなんとか解くことが出来た。それは手が限られているお陰だ。

 初形をみると初手は4つしかない。

 それは21飛成と、

22桂成。11飛成や24桂はまずないだろうとムシ。

 直観で22桂成を選びたくなる。
それは21飛成は初手として余りに平凡だからだ。
(その2手を加えるために13桂を配置するか? いや、しない)

 まずは単純に攻めてみよう。

22桂成、同玉、21飛成、13玉、14歩、同玉、
26桂、15玉、34桂

 この順なら初手に桂を捨てた理由は14歩と打つためということになる。
(でも、初手から21飛成、13玉、22龍なら歩が1枚節約できる……あれ?)

   59桂成、26銀、16玉、17銀、同玉、
18歩、同玉、88龍、68歩、

 これは失敗だ。99龍と79成銀の配置は88龍から79龍と銀を入手するためにあると思えるのに、これでは79龍と王手出来る見込がない。
 59成桂が決定的だ。つまり26桂から34桂と成銀を入手する手段は失敗だということになる。
 局面を戻していこう。次図は1歩節約して26桂と打つ直前の図だ。

 15角がいなければ15香の一発だと判る。
 15角を消去することを考えよう。
とするともう2手戻す必要がある。

 この局面を暫く考えていて(25桂、同成銀、14歩、同玉、94龍といった紛れにはまった後)これは作意の香りがするという順に巡り会った。

24角、同成銀、15香、

 初手に桂を捨てた理由は15香を打つためだったということになる。

   同成銀、14歩、

   同成銀、25桂、

   同成銀、14歩、

 角、香、歩、桂、歩の連続捨駒。
これは作意の手応えありといえるだろう。
 そして15で成銀と59馬を清算する。47桂は動かさないで進められる。

   同玉、15香、同成銀、同馬、

 しかし、持駒を湯水のように使いすぎたようだ。
手駒が寂しくなってしまった。

   同玉、26銀、16玉、17銀、同玉、

 これは攻め駒が足りない。
17銀に15玉と戻るのは16歩、14玉、94龍で詰むが、素直に同玉と取られて以下18歩に同玉でも16玉でもこれは詰まない。

 そこでさらに工夫が必要と判る。
しかし手は限られている。99龍を活用するしかない。
14玉に対して94龍といくしかなかろう。

(15香、同成銀、)94龍、

 一番弱い香合から考えていこう。

   74香、15馬、同玉、85龍、75香打、
26銀、16玉、17銀、同玉、18歩、16玉、

 やはり駒不足だ。
 85龍としたのは18歩、同玉に88龍とやはり79成銀の入手を狙ったのだが、やはり足りない。
もう一工夫。

(14歩、同玉、)94龍、

 そこでもう2手前に94龍としてみた。
最初は24合もあるので避けていたのだけれど、ちょっと考えてみれば24合なら15香、同成銀、24龍まで。
それだったら15歩で成銀を清算できるから手持ちに香が残る。
こちらの方が断然有利だった。

 また香合から考えていこうか。

   74香、15歩、同成銀、同馬、同玉、
85龍、

 先程と大きな違いがある。香を持駒に温存しているので、玉方にもう香が売切れだということだ。
 仮に75桂合としてみよう。

   75桂、同龍、同香、26銀、16玉、
17銀、同玉、19香、18歩、29桂

 香を持駒に残してあるというのは強力だ。桂でなくても角でも銀でも同様に詰む。(金はもっと簡単)
ということは玉方は香を節約するしかない。

(94龍、)34香打、

 つまり1枚の香を2回合駒に使うには32香を利用するしかないということだ。

15歩、同成銀、同馬、同玉、85龍、35香、

 これで香以外の駒を渡せずに受けられた。
しかし、攻方も88龍から79龍の攻めが保障されて満足だ。
 65歩などの中合は考えられないのか?
それは取らずに26銀以下攻めれば同じことなので変同か?

26銀、16玉、17銀、同玉、18歩、同玉、
88龍、

 19香があるから79龍とできることが確実だ。
八段目なので桂合はできない。68歩合ではさらに69に高い駒を合駒しなくてはいけないので68角合だろう。

   68角、19香、同玉、79龍

 以下、同角成に28銀で詰む形。
やれやれと答合わせをしようと『千早城』を開いたら、68角合ではなく78とが作意だった。

(88龍、)78と、19香、同玉、79龍、同と、
28銀、18玉、27龍、29玉、37銀、39玉、
28龍、49玉、48龍まで43手詰。

 今回もなんとか解けて良かったと思ったが……もう少し続く。
 棋譜ファイルを完成させるために、試行錯誤の後が残っている棋譜を削除して、柿木将棋に解かせてみた。
これが解けない。

 おかしいなと調べてみたら、30手目に角合をした後に59桂成という手があった。

 79龍に39銀合は考えた。これは28銀、29玉、39銀と喰えてしまうので問題なかった。しかし角の利きを利用して59桂成とされると以下

28銀、29玉、37銀、38玉、28龍、37玉、

と37から脱出されてしまう。
 68角が36にまで利いているのでこれは逃亡必至だ。

 68角の利きを考えると、先程は問題なしと思っていた65歩合も有効だと分る。

(85龍、65歩、)…………28銀、29玉、37銀、24歩、

 ということで第33番は不詰局という結論だった。

 単純な補正案は次図。もっといい案があったらご教授を。

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